勧誘
ライトワール王国近衛府大臣バルーサス・レクターはミラに案内され、席に座った。
身長は170センチくらいの細方、髪は白髪混ざりの黒色、疲れているかのように見える。
俺は、失礼ながら対面に座らず暖炉を背にして座った。
ミラが、お茶を差し出すと俺のお茶とは違ってどす黒い液が入ったものがバルーサス大臣に出された。
一口飲むと目をしばしばさせ渋い顔をしていた。
毒いれてないよね?
「ライトワール王国近衛府大臣バルーサス・レクターと申します、クジマサムネ殿の噂は予々聞き及んでおります。ドラゴンを一人で倒されたとか、派遣したギバルツからも天叢雲剣のことも報告されております、率直に申そう、近衛府に入ってくださらぬか?」
やはり勧誘だったか。
「見ての通り病気療養の身、お断りしたいのですが」
「魔術師団に入る予定ですか?」
「いやいやいやいや、なぜにそんなことに?」
「エターナル・バージン・クイーンの宮廷魔術上席兼魔術師士官学校校長プルートー・カース・ドラキューラ二世殿と婚約をされていると聞きましたので」
ゴフッ
お茶を吹き出してしまった。
エターナル・バージン・クイーンって凄く失礼な気が。
「誰がそんなことを?」
「本人が」
先生なに口走ってるの?
周りからジワジワ攻めていく作戦でもしてるの?
「プルートー氏に認められた人物なら、戦闘部隊ではなく、王室側近の近衛府に是非とも欲しいのです」
「婚約はしていませんから」
強く否定した。
「すみません、トイレは?」
ハイトンがバルーサス大臣を案内している間、ミラがニヤリと、笑っていた。
毒入れてないよね?
戻ってくると、話は続けられ、
「今、国は存亡に関わる危機に陥っております。どうか力を貸しては貰えないでしょうか?」
そんな危機の状況の中、プルートー先生は家に遊びに来るって大丈夫なのか?
存亡の危機、はぁ~、話聞かないと駄目な状態にしましたね、困ったな。
「存亡の危機とは?」
テーブルの目線を落としていたバルーサスは、食いついたってのごとく俺に鋭い視線を向けてきた。
やっぱりね。
「この国の王の事は御存じか?」
俺は首を横に振るが逆にミラは真剣な表情に変わっていた。
「ライトワール王国は今はシュルリー王女陛下が納めていますが、先代の王バッサル殿下は御健在、病気で臥せっており王位を娘のシュルリー王女に託して、隠居なさいました。しかし、シュルリー王女陛下は父を慕っており日に日に弱るバッサル殿下に付きっ切りで、国政が荒れ始めました、そんな中、魔王と結託した隣国オソロッシアー帝国が不可侵条約を一方的に破棄して侵攻を開始したのです。同盟国の神龍ドラゴン族のリュウリュウ国の御助力でなんとか退けましたがまたいつ攻めてくるかわからず、国内にも内通しているものが現れ始め、すみません、トイレ」
うん、ミラ、なにか入れたね?
と、聞こうとミラの顔を見ると先ほどの不気味な微笑みは消え暗く考え込んだ表情になっていた。
「ミラ?」
「大丈夫?」
「えっ、はい、御主人様」
バルーサス・レクターが戻ってくると少し顔がやつれていた。
「氏素性のわからぬ私など雇ってよろしいのですか?」
「プルートー氏の婚約者なら問題ないかと思ったのですが、それに邪龍族を殺しているので、あちら側ではないかと思いました、さらには神龍ドラゴン族のリュウリュウ国スバラッヒー王の推薦もありますので」
「えっ、おじい様が推薦?」
「えっと、こちらは?」
知らなかったのね。
「神龍ドラゴン族のリュウリュウ国スバラッヒー王の孫でハイトン・アルベルトです。家臣です」
「な、な、な、なんとそれはそれは失礼いたしました。ますます近衛府に来ていただきたい、お願いします、う、トイレ」
立ち上がりトイレにダッシュするバルーサス・レクター。
「ミラ、お茶に何入れたの?」
「あ、はい、下剤と利尿剤を少々」
「次からはそういうのはしなくていいから」
嫌がらせなんだろうけど逆に話が長くなって困るから。
フラフラになりながら戻ってきたバルーサス大臣がかわいそうになり、俺の長椅子に横になってもらった。
「お腹ぐわい悪いようですね、ちょっと失礼しますね」
俺は回復魔術と解毒をしてあげた。
「おおおおおお、素晴らしい、あれほど水となって出てしまって痛かったのに治るとは」
ミラの非礼は黙っておこう。
借りが出来てしまったな逆に。
「では、どうでしょう、私はその先代国王を治療する、そうすれば現王女も政治に専念できますよね?」
「はい、バッサル殿下も聡明なお方な上に勇猛果敢なお方、病が治れば必ずや国力回復になると思います、ですが、治るかどうか」
「プルートー先生は回復呪文は?」
「彼女もお手上げだから困っているのですよ」
プルートー先生、そっちが大変な時に何やってるのかな全く。
「私は政治ごとになど巻き込まれたくないので、治療だけのお約束で王都に行きましょう」
「ありがとうございます」
ミラが無礼を働いたから行かなくてはならなくなってしまった。
仕方がない、従者の責任は主がとらねば。
今日は馬車が小さいということで後日、迎えの馬車をよこすということが決まった。




