表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/88

過労死

労働基準法ってなに?36協定ってなに?裁量労働制ってなに?働き方改革ってなに?ブラック企業ってうちのこと?

副業解禁?外国人労働者を受け入れる?そんなのうちの会社では全く関係ない。


少ない人数でただひたすら残業という名の強制労働で会社を回している。


俺は、もはや正常に考える事すら出来ない状況、精神状態まで追い詰められていた。


辛い。疲れた。怠い。頭痛い。首痛い。肩痛い。・・・・・・全身痛い。うんこも黒くなってきた。

休みたい。寝たい。消えたい。逃げたい。死にたい。異世界に転成したい。スライムになりたい。温泉になりたい。


ストレス性神経症害性障害・・・・・・。


鬱病からなんとか復帰したものの、また、残業三昧の日々に俺の体も心も限界になり悲鳴を上げていた。


もう会社に何日居るんだろうか?俺は会社に住んでいるのか?ここが、会社が家か?


いや、家に帰れば妻と子がいる、うん、今日は帰ろう。帰るんだ。


パソコンのモニターを見ながら涙を流していると、後ろから脂ギッシュに髪がぺったりとなり、同じくヨレヨレスーツになっていた部長が肩を叩いてきた。


「政宗係長、今日は帰って良いから」


部長も俺と同じくらい帰ってないはずなのに、俺を優しい目で見ながらそう言ってくれた。


お互い中間管理職辛い立場だ。


俺はその言葉で更に涙を流していると、周りからの視線が気になる。


椅子に根をおろしていた尻を持上げると体がバキバキと悲鳴を上げる。


目の前が一瞬真っ暗になる。


フラフラとよろけると隣の同期の氏郷が受け止めてくれた。


「大丈夫か?」


「あぁ問題ない、少し立ち眩みがしただけだ、少々貧血気味なんだろう。部長、お先に上がらせていただきます」


そう言って私はフラフラしながらも会社を出て駅のホームに向かった。


会社から外に出たのは三日ぶりだった。


夕暮れの日差しがまぶしく目に刺さってきた。


そして、会社の近くの駅のホームに向かったはずの俺は真っ暗な世界に陥った。


駅のホームまでは記憶はある。


電車に乗る直前までは。


しかし、電車に乗った記憶がない。


そして、俺は今、真っ暗な世界を浮遊している。


ここはどこだ?何故に俺は飛んでいる?


はぁ~考えるのめんどくさい・・・・・・考えることからすら解放されたい。


やっぱり死んだのか?


駅のホームから記憶がないって事はやっぱり電車に?


帰宅時間だったから皆様に迷惑かけちゃったかな?


流石にそれはやだなあ、死んでも悩むのか俺は。


賠償金とか家族が払うのかな?


俺はそんな死に方は望んでいない。


俺には自覚がないがやっぱりそう言うこと?


じゃあ俺が向かうのは地獄か、生きても地獄、死んでも地獄、ぬわーーーー!


俺は叫ぶ事しか出来なかった。


俺が叫ぶのを止めると、辺りは一面花が咲き乱れる世界に切り替わった。


映画の場面展開のように一気に変わる風景。


暗闇から花が咲き乱れる草原の世界、茨城県ひたちなか市にある国営ひたちなか海浜公園のネモフィラが咲き誇る世界にどことなく似ていた。


地面に大の字になって寝転ぶ俺は深呼吸をすると、


「少しは落ち着きましたか?」


突如、声が頭の上の方から聞こえた。


起きあがりそちらを見ると、美少女が一人立っている。


腰まであるロングの黒髪、服は鮮やかな曼珠沙華が描かれた着物に金襴の陣羽織みたいなのを羽織っている。


20歳になったかな?くらいの美少女、身長は低め幼くも見える。


しかし、頭には閻魔と書かれた王冠みたいなのを被り手には聖徳太子が持っているような木の板、笏を持っている。


まるで美少女コスプレイヤーだ。


地獄ではなくコスプレイベント会場か?


「ようこそ、天界閻魔の世界へ、生涯を終えた事、御苦労さまでした。」


ニコニコしながら明るい表情でこちらを見る美少女の謎の言葉に頭には疑問符が浮かんだ。


「天界閻魔の世界?」


疑問符は口に自然と出た。


「はい、私は貴方の魂を導く閻魔大王です」


はぁあ!?閻魔大王?こんな美少女が?天使かいや天女って言って良いような娘っ子なのに?


俺の高校生の娘、彩華とそう変わらない背格好に見える娘っ子が?


「閻魔大王?」


やはり疑問符が声に出た。


「はい、閻魔ちゃんと呼んでください」


優しい笑顔でそう言って、座ってる俺の目線に合わせるようにしゃがんでくれた。


美しい、その美しい笑顔で俺は死んだ事の不安は不思議に消えていた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ