天の川
七夕は、2日も前だ!と聞こえるきがする(笑)
俺は結局、どうすれば良かったのだろう。俺は結局……どうしたかったのだろう……。
過ぎてしまった事を、ベランダに出て夜風に当たりながら考える。
あの時君に伝えた"おめでとう"の言葉。あの言葉に関しては、今でも分かる。心から出た素直な言葉だと。
その一方で、苦しんでる自分も確かにいた。泣きたくてワガママを言いたくて、みっともない自分が確かにそこにいた。
君に祝福を送る自分と、泣きたい自分。相容れぬ感情。なのに、確かにそこに二つの感情があった。
「考えても……意味ねーよな」
答えが出ないと分かってての自問自答。もし答えが出たとしても……何もかもが遅すぎる。
何度も考える。どこで、何を間違えてしまったのか、と。
夜空を見上げれば、見た事のある二つの星が。
「あぁ……今日は七夕か」
幼少の頃にやった七夕。
七夕の話を聞いて、子供の俺は"凄い"と思ったのを今でも覚えてる。1年に1度しか逢えぬ相手。それでもお互いに、永遠に相手を想う。なんて、凄いんだろう。
恋について何も知らなかった頃の自分。そんな自分でさえ、恥ずかしながらも母親に"僕もいつかそんな相手が"と言った。
あぁ、今なら心から思う。
織姫と彦星が羨ましい、と。
あぁ、今なら心から言える。
織姫と彦星が凄い、と。
君は今、笑顔でいるだろうか。きっと俺は、君の笑顔を見るために頑張っていたんだと思う。
君の笑顔を1番近くで見るのが俺じゃなくなっただけ。
君の笑顔を作るのが俺じゃなくなっただけ。
そう考えると……気休め程度には、心が落ち着く。
もう会えぬ存在。それでもなくならないこの気持ち。俺は君が好きだった……いや、好きだ。
「遅いっての」
遅いのか。そもそも、早い遅いすらなかったのでは。今では何もかもが分からない。
空に広がる、綺麗な天の川。織姫と彦星は今年も逢えただろうか。2人は笑えているだろうか。
届きもしない天の川に向けて、手を伸ばす。目の錯覚で、今にも届きそうな所にある天の川。
会えない時間の方が長いけれど、織姫と彦星は今年も愛を誓うのだろう。なんて素晴らしいんだろう。
そんなロマンチックな事を考えている自分がおかしくて、1人で笑う。
「あぁ、大丈夫。俺は笑えてる」
だから、君も。君が愛する人と笑っていて欲しい。
それが……今の俺に対する、唯一の救いになるはずだから。
「おやすみ、お二人さん」
誰に向けた言葉か、自分でもよく分からないが、自然に出た言葉。
家の中に戻る瞬間、二つの星が一際輝いていた気がした。
「頑張るさ」
不意に出たそんな言葉。
今年の夜空は、いつも以上に綺麗だった。きっとそれは、俺の気のせいではないだろう?
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