拉致被害者奪還統合任務部隊編成
―日本国政府―
西条美香の拉致を受け、日本国政府は速やかに初動対応にあたった。
どこぞの怪獣映画が嘘のようだ。もう今までの政治とは違う。国連軍関連法は、政治のしがらみを取り去ったのだ。
【拉致直後:官邸連絡室を設置】
【数時間後:官邸対策室に改組】
【同日:内閣危機管理監の進言につき対策本部に昇格】
【同日深夜:対策本部長たる内閣総理大臣が国連軍関連法につき陸上総隊司令官を統合任務部隊司令官とする国連日本軍および自衛隊の統合任務部隊編成を指示】
【翌日未明:統合任務部隊派遣を閣議決定(日本国天皇認証済)】
【同早朝:防衛大臣が統合幕僚監部を通じ統合任務部隊に邦人武力奪還を指示】
ー陸上自衛隊陸上総隊司令部(朝霞)ー
陸上総隊は、陸上自衛隊の実働部隊を統括的に運用する司令部である。その司令官たる陸上総隊司令官は、方面隊総監経験者が務める。
国連日本陸軍は創設から日が浅く経験不足であるため、今回は陸上総隊司令部が統合任務部隊司令部を務めるのだ。
統合任務部隊は、陸自特殊作戦群、海軍戦艦大和、海自第5護衛隊群を隷下部隊とした。
【拉致翌日:西条美香奪還統合任務部隊作戦会議】
本作戦の最高指揮官たる統合任務部隊司令官(陸上総隊司令官)が入室する。
「「陸上総隊司令官、入られます!!」」
号令とともに、全員が起立し、ビシッと頭を下げる。
司令官が「座ってくれ」と言い、皆が着席した。
ここには各部隊指揮官が参集されている。以下に列挙する。
・海軍戦艦大和艦長
・陸自特殊作戦群群長
・海自第5護衛隊群群司令
・空自第n航空団団司令(空母あかぎ艦上機隊)
・戸村洋介 (オブザーバー)
……その他各部隊主要幹部クラス等
全員を見渡し、統合任務部隊司令官が口を開く。
「最高指揮官たる内閣総理大臣の命令により、軍と自衛隊の共同作戦が発動された。西条美香さんの奪還を最優先として作戦を遂行する!!
全員が力強く頷き、返答する。
「「はッ!!」」
洋介の父が挙手する。
「私から説明します」
「頼みます」
彼こそが戦艦大和艦長にして洋介の父、戸村幸一大佐だ。ヤマト作戦の立役者でもある。
50代だが、まだまだ若々しい。
幸一は資料を取り出す。そこには……
『アメノハバキリ作戦~北朝鮮に対する邦人奪還作戦計画~』
……とあった。
「洋介、これ配ってくれ」
「了解」
資料を息子に配らせると、幸一は話し始める。
「……まずはわが戦艦大和が先行しレールガン攻撃で北朝鮮主要軍事施設を叩きます。その後、第5護衛隊群の艦上機部隊およびイージス艦で、制空権と制海権を確保。そして特殊作戦群を投入する計画です。なお、戦艦大和は日本海を遊弋し必要とあらば逐次、艦砲射撃を行います」
会議出席者は真剣な眼差しで手元の資料を見つめる。自分の部隊の担当任務について確認しているのだろう。
(待っていろよ美香……!!)
洋介は決意を新たに会議に臨んだ。