絵本 「ゆうしゃたち と しょくざいのまじょ」 文章部分
むかしむかしの そのまたむかし
ある日 とおい国のおうさまが いいました
『このままでは みなが飢えてしまう しんてんちをさがすのだ』
とおい国のひとたちは いつもおなかをすかせていました
なので もっとたべもののあるところへ ひっこさなくてはなりません
『さあさあ しんてんちをみつけるぼうけんに 名乗りをあげるものは?』
おうさまがそういったものだから へいしたちはこまりがお
だれもきけんなぼうけんの旅に いきたくなんてありません
『ゆうかんなものは この国にはおらんのか!』
おうさまがおこったかおで どなります
すると ひとりのゆうかんなへいしが手をあげました
『ぼくがいきます』
ゆうかんなへいしが手をあげたので
国のきしも負けないように手をあげました
『わたしもいきましょう』
でも ふたりだけではふあんです
『では せっそうもまいりましょう』
さいごにけんじゃが手をあげて おうさまもおおよろこび
ゆうしゃと きしと けんじゃは
しんてんちをめざして旅だちます
『しんてんちは どこにあるのだろう?』
がけをのぼり たにをくだり おかをこえました
それでも しんてんちは みつかりません
『しんてんちは どこにあるのかな?』
へいげんを歩き ぬまをとおって すなのうみをこえました
それでも しんてんちは みつかりません
『しんてんちは あっちかな?』
どろみちと ゆきみちと かざんのみちをいきました
さんにんはもう へとへとです
『あ!』
でも ついに しんてんちをはっけんします
もりに うみに たくさんのどうぶつたち
『やったあ! ここならたべものが いっぱいある!』
さんにんはおおよろこび
しかし ひとつこまったことがありました
しんてんちには おそろしいマモノが すんでいたのです
マモノは おおきな木のまわりをねぐらにし
たべものをひとりじめにしていました
このままでは おそろしくてひっこしができません
『やっつけよう!』
ゆうしゃがいいました
でも あいてはおそろしいマモノなので ふあんです
マモノは にんげんのしょうじょを おりにいれ
たべようとしていました
『ぼくがいく!』
だけど ゆうしゃはゆうかんです マモノの目をぬすみ
しょうじょをたすけだします
『ありがとうございました おれいにひみつをおしえます』
しょうじょのひみつは おおきな木がふしぎな力をあたえてくれる
というものでした さんにんは かくごをきめて ふしぎな実を食べます
するとどうでしょう
みるみるうちに ふしぎな力が わいてきました
もう マモノもこわくありません
『やあ!』
ゆうしゃはかぜのように 剣をふります
『えい!』
きしはすがたをけして マモノをおどかします
『あそこだ』
けんじゃはよくきく鼻で マモノのばしょをおしえます
そしてさんにんは あっというまに マモノたちをやっつけました
もうあんしん
とおい国のおうさまたちは おおよろこびで おひっこし
いっぱいのたべもので みんなが えがおになりました
みんなおなかがすいていたので
おなかいっぱい食べました
むしゃむしゃ がつがつ
むしゃむしゃ がつがつ
するといっぱいあったたべものが みるみるうちに減っていきます
『こまったぞ このままでは たべものがなくなってしまう』
おうさまたちは またしんてんちをさがそうとかんがえました
でもこのままでは おなじことのくりかえし
『こんどは わたしがみなさんを おたすけします』
たすけたしょうじょがいいました
しょうじょは ふしぎな力をつかいます
しょうじょがこえをかけるだけで
どこからともなく みたこともない いきものがあらわれます
『つぎは やさいをだしましょう』
しょうじょがこえをかけるだけで
どこからともなく みたこともない やさいがでてきます
しょうじょは つぎからつぎへと ふしぎなしょくざいをだしました
『おお! なんというきせき! まるで天使のようだ!』
おうさまも こくみんたちも おおよろこび
しょうじょのだすしょくざいは どれもおいしいものばかり
しかもそれだけでは ありません
『つぎは ちしきをさずけましょう』
天使とよばれたしょうじょは
みなにさまざまな ちしきをあたえました
おうさまは そのこうせきをたたえ しんてんちは天使のすむばしょ
【エデン】と名をかえ ますます大きくなっていきました
しかし そんなある日のこと
ぼくじょうが おそろしいケモノに おそわれました
ぼくふのおじさんは ケモノに食べられてしまいます
つぎの日には
りょうばが おそろしいケモノに おそわれます
りょうしのおじさんは ケモノに食べられてしまいます
つぎの日には
おそろしいマモノが へいしたちを おそいました
へいしたちは みんなやられてしまいます
『なぜマモノがあらわれたのだ? しらべよう』
けんじゃがいいました
そしてついに はんにんがわかりました
それは 天使とよばれたしょうじょだったのです!
しょうじょは天使ではなく マモノのてさきのまじょだったのです!
『わるいまじょめ! せいばいしてやる』
『ひぃぃ ごめんなさい ごめんなさい』
ゆうしゃがけんをかかげると まじょはないて いのちごいしました
やさしいゆうしゃは おうさまにそうだんします
『いままでのこうせきをかんがえ まじょはついほうとする』
こうしてまじょはエデンをおいだされ
西のマモノのまちで いまもあやまりつづけるのでした
それが かのじょの“しょくざい”だったのです




