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メシマズ異世界の食糧改革  作者: 空亡
第二章 魔王の晩餐会

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第22話  「いち、に、さん、し、ご、ろく・・・・・・」

「まただ」


「今度は鎧……ですね」



 崖上を目指しながら迂回を続ける二人。

 そこでまた見つける人工物。今度はひしゃげた鎧である。やはりそれも最近の物である事が窺い知れる。恐らく数ヶ月も経っていない。


 森の入口から足を踏み入れ、ミアキスと逸れた場所までに人工物は見つけられなかった。何故崖下の裏にだけ鎧や盾が落ちているのか? しかしその鎧の謎はそれだけではない。何より気になるのはその鎧に刻まれた巨大な爪痕。恐らくあの竜によるものだろう。そしてそれが意味する事とは……。



「――――そういう事なのか?」



 いよいよ稲豊の仮説が真実味を帯びてくる。

 この人工物達を見つけられた事は、僥倖となって稲豊に降り掛かった。



「急ごう」


「はい!」


 二人は手を繋ぎ、崖上を目指す。



:::::::::::::::::::::::::::



 大きく迂回し、ようやく辿り着いたソコは見るも無残な姿に変わり果てていた。落ちる前に稲豊が立っていた地面は炭の如く黒に染まり、あれからかなりの時間が経過しているにも関わらず、その中心部は未だ赤黒い光を放っている。


 その熱を浴びていたらと思うと、震えが縦に体を走った。しかもこれから、それをまた受ける可能性のある所に向かうのだからタチが悪い。



「ここからそう遠くない所にある場所だ、警戒を強めて行こう」



 緊張した面持ちで頷くナナ。

 竜の聖域テリトリーにより近づくのだ、危険度はグンと跳ね上がる。


 

「あいつ岩に擬態するから要注意な」


「はい!」



 二人はそこから会話を一切止めて、稲豊の駆けた道を逆に辿る。

 

 姿を全く見せない森の番人。その静けさが反対に恐怖心を煽る。


 稲豊が道に関する自分の記憶に疑問を持ったその頃。二人は強臭に襲われる。

 間違いなく一度鼻腔を襲ったあの臭いである。



「ナナ、分かるか?」


「はい! イナホ様を追いかけた時は必死だったので分かりませんでしたけど。確かに臭いますね」



 惑乱の森に漂う甘い香りを、何倍も強くしたようなその臭いは森の奥深くより漂ってくる。その先を睨みつける稲豊の隣で、ナナが人差し指を前後に小刻みに動かしている。その様子に気付いた稲豊はその行動の意味を質問する。するとナナが鼻息を荒くしこう答えた。



「ミアキス様がかなり近くまで来てます! 四半刻も掛からない位置です!」


「えっと、良く分かんないけど結構近いんだな?」



 糸の感覚でミアキスが近くにいる事を察知するナナ。

 そこで稲豊はある提案を持ちかける。



「だったらナナはミアキスさんをここに連れて来てくれないか? 二人で動くと見つかる可能性も高くなるし、ナナの方が歩く時に音も出ない。危険だけど出来そうか?」


「分かりました!! イナホ様はこちらで待ってて下さい。ミアキス様を連れてすぐに戻ります!」



 何の迷いもなく稲豊の提案を飲むナナに「頼む」と返す稲豊。

 近くの木に目印となる糸をくっつけ、「行ってきます!」と少女は勢い良くミアキスの元へ急ぐ。



「四半刻。一刻が一時間だから……十五分か」



 少女を見届けた後で、稲豊は周囲を警戒しながら木の幹に腰を下ろし。かなりの小声で何かを断続的に呟く。それは何かを唱えているようにも聞こえた。



:::::::::::::::::::::::::::



「ミアキス様!」


「――――ナナか?」



 場面は代わり。

 ナナとミアキスの合流シーンに移動する。

 

 少女が見つけたのは樹上で身を潜めるミアキスの姿。

 消えた右腕には手拭いが巻かれ、痛々しい傷口はナリを潜めている。ナナの姿を確認した人狼は颯爽と木から飛び降り、少女に声を掛ける。



「ナナだけか? 少年はどうした?」



 勿論ミアキスはナナの能力を把握している。そして竜に追われた稲豊の後を、ナナが追っていたのも確認している。にもかかわらず稲豊の姿が見えない事に不安を覚えるミアキス。それを察したナナは、現状を説明する。



「安心して下さい。イナホ様は無事です。今は身を潜めてナナ達が戻るのを待ってます! ミアキス様の方こそ大丈夫ですか?」


「問題ない」



 治癒魔法を掛けているとは言え、その腕は切れたままだ。

 激痛が絶えず押し寄せているというのに、その美しい顔は凛々しさを崩さない。ナナはそんなミアキスの強さに、密かに憧れを持っていた。ここでミアキスの体を労り、のんびり向かうなど彼女自身が良しとしないだろう。


「案内します! 付いて来て下さい!」


「ああ」



 全力で稲豊の元に駆け戻ろうとしたナナだったが、伝わってくる糸の感覚に強烈な違和感を覚え足を止める。



「どうした?」



 不思議に思ったミアキスの言葉にも反応を示さず、ただジッと小指の糸の動きを感じる事に集中する。そして伝わるその先の動き。それを理解した瞬間ナナは戦慄を覚えた。少女は伝わる感覚から来る呆然とした気持ちを言葉に変える。



「い、イナホ様につけてた糸が…………」



 顔面蒼白でそう語る少女の声は、消え入りそうな程小さい。

 しかし人狼族の優れた聴覚を持つミアキスの耳は、その声を一言一句残さず聞き届ける。緊張が走る空間で、ナナは決定的な言葉を発する。





「激しい動きと共に…………う、動かなくなりました」

かなり短めなので今日は二話投稿にします。

夜八時ぐらいにもう一話行っときますね。二章も終盤。一番書きたかった三章はもうすぐ! 頑張ります。

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