これはきっと、最初から決まっていた。
「あんたっ自分が何をしてるか分かってるの!?」
「生憎と、わかっているつもりだ!」
会話はなんと、爆音の中で繰り広げられている。ファイヤボールとウォーターボールで地面が抉られ、その衝撃が数十メートルほど離れた私に降りかかる。おかげで全身砂だらけだ。
けれどそんな状況から逃げ出せる筈もなく、私は必死に這い寄る手を切り裂いた。
私を囲むように粒子を撒き散らしている魔方陣は、あと少しで完成間近と言った所まで進んでいる。範囲は直径10メートルほど。つまりそれだけ大きな術式を組まれているということで___。
「ったく、私も運が悪いわね」
自分でも珍しく弱ねを吐いた。いくら切っても斬っても無くならないそれに、いい加減嫌気が差して来たからだ。
「諸刃!あんた、潰れんじゃないわよ!」
「あー・・・それはちょっと難しい、か、なっ!」
剣を握ってから30分は経っている。そろそろ手の感覚が無くなってきて、まともに柄を握れやしない。魔力なんてない私は、当然身体強化なんて大層な物を掛けられるはずもないから限界が近い。
それでもこの状況をどう乗り切ろうかと、震える腕に力を込めたときだった。
「あ、」
ガキンッと。
唯一の私を守る術が、真ん中から割れた。
呆気にとられて一瞬だけ動きを止めた私を、敵が見逃すはずがなく。
「___ごめん、ディーナ。もう無理っぽい」
拘束されると同時に、完成したらしい魔方陣は、目が眩むような輝きを放ち____私を暗闇へ引き込んだ。
最後に呟いた言葉は、彼女に聞こえているだろうか。引き込まれる間際、彼女が私に向かって手を伸ばした光景が、頭に浮かぶ。今思えば、彼女もよくこんなひねくれた性格の私に懐いてくれた物だ。最初はあんなに警戒していたのに。
無意識につり上がった口元に手を当てながら、私はこの国___いや、この世界に来たときのことを思い描く。
振り返ってみれば、この短期間によくもまぁ、これだけの経験をしたものだと我ながら呆れてしまう。
最初は___そう、何が遭ったのだったか・・・?