悪ー七ー
昼休みの時間が終わり、早くも十分経過した。
しかしすぐに動くわけにはいかない。今はまだ動ける状況ではない。
今は見つかってはいないが、うっかり教師などに出くわすなんてことがあっては計画が台無しになりかねない。
ここは慎重に、冷静になるんだ…。
男はただひたすらにトイレに籠っていた。
ジッと、まるで獲物を狙う捕食者のように気配を殺し、時期を待っていた。
静寂に包まれたなか無限にあるかのような時間は男に焦燥と覚悟の揺らぎを見せ始める。
もし、もしもこの計画が上手くいったとした場合、必ず怪我人は出る。
怪我人どころか死人も出るであろう。
自分が復讐したいのはこの学校であってなにも生徒や教師にまで危害を加えるつもりは無い。
男の中に生じた揺らぎは、しかしすぐに正常に戻ってしまう。
いや、もうどうでもいい。
何もかもこの学校が悪いのだ。ならばそこに通う生徒や勤めている教師なども同罪だ。
裁く対象だ。罪人でもある。
自分はそれを裁く者。俺は悪くない。悪いのは奴らだ。
奴らのせいで全部失ったのだ。ならば、その償いをすべきなのだ。
悪くない。俺はなにも悪くない。悪いのは──。
抑えていた感情が漏れ出したのを必死に堰きとめるように男は自分の口を抑えた。
危うく心にしまいこんでいたものが口から出そうな感覚だったのか、とっさの動きであった。
…そろそろだな。
男は自ら静寂を破り、トイレの個室から出た。
一応誰もいないかを確認して。
外に誰もいないことを確認し終えた後、男はなるべく自分の音を出さないように動く。
その向かう場所は──。