悪ー参ー
生徒たちの声でひしめき合う校門。
そことは対照的に不気味なほど静かな体育館。
広大な空間でありながら音一つしないというのはなんとも妙な疎外感を感じさせる。誰もいないから当たり前だが。
いや、正確には一人いる。
場所は体育館の倉庫。
そこに男性がいた。
ここの体育館の倉庫は多種多様な競技が出来るよう様々な道具が揃っており、そのため倉庫もなかなかに広い。
必然ひと一人隠れることが出来るのもわけがないのだ。
ゴソゴソと動き出す。
生徒たちが体育館を使用している間、常に音をたてないように動かずにいたので体が固まってしまったのだろう。どこか動きが鈍い。
ようやく立てるようになった男性はすぐさま次の行動に移る。
なにやらボロボロの袋から何かを取り出そうとしている。
見ると男性の服装は所々汚れており、さらには穴も随所開いていた。
格好からとてもココの生徒とは思えない。そしておそらくは教職員ですらないだろう。
「もうすぐだ…。見てろよ…」
ふと、男性から何かが呟かれる。しかし、声はかすれており、とても音らしい音は出てこなかった。
「絶対に…、復讐してやる…」
だが、その感情だけは確固たるとしてハッキリしていた。
男性が袋から出した物、それは何の変哲も無い“黒い箱”。