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悪殺し -悪に殺される話-  作者: 皆口 光成
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悪ー壱ー


午前五時。起床。




目覚ましを掛けてもいないというのに毎朝この時間ピッタリに起きてしまうのはもはやこの習慣が身に染み付いたと言ってもいいくらいに繰り返したからだろう。




便利ではあるし、別に問題も特にない。眠いが。




しかし早起きは三文の得とも言うし、せっかく早く起きたのでその三文を有効に使わせていただこう。




まずは洗面所に向かう。




この家はなんとも不思議なことに、一階に一つ。二回にもう一つと計二つの洗面所がある。

しかも洗面所と浴場がセットの構造なので当然、風呂も二つある。

おそらくは来客用のためにあるのだろうが、若干二つもいらない。




それでも二階に洗面所があるのはなかなか便利で、色々文句は言ってはいるが、ちゃっかり使わせてもらっている。




顔を洗い、まだ眠っていた頭を無理矢理起こす。

次に歯を磨く。しかしまだ歯磨き粉はつけない。まずは歯についた歯垢を取ることから始める。

右に左に磨いた後は裏もやる。全部やり終えた後にようやく歯磨き粉をつけて磨く。




結局歯磨き粉をつけるなら最初からつけとけばいいのでは?と思うかもしれないがそれではちゃんと磨けないのだ。




最初から歯磨き粉を付けたままだといくつかの歯に歯垢が残ったままで少し気持ちが悪い気分になる。なのでまず歯垢を全部とってからの歯磨きなのだ。こっちの方が確実に綺麗になるし。




歯磨きを終え、また洗顔。顔を拭けば終了──。




「おっと、忘れるところでした」




最後に肝心のことをし忘れていた。




そう思い、洗面所に設置された棚に手を伸ばす。

取り出したものはコンタクトレンズのケース。




いや、別に視力が悪いわけではない。むしろ両目とも視力は良すぎるくらいだ。

ならばなぜするのかと言われると、そうしなくては(・・・・・・・)ならない(・・・・)事情・・があるからとしか言えない。申し訳ないが、そうとしか言えない。




まぁ、そのうち言うかもしれないし、言わないかもしれないからそんなに気にしなくても良いだろう。

それにそんなに大した理由でもないし。




……言っときますけどオシャレ目的ではないですからね?




さて、洗顔も終わったので一旦部屋に戻る。

そこで壁のフックに掛けておいた学校の制服に着替える。

若干着替えるには早すぎる感もあるが、今後のことを考えると今着ておくのがベストだろう。

着替え終え、すぐさま一階のリビングに向かう。




午前五時とはいえ、まだ日の出が始まったばかりだろうから一階に続く階段の下は完全なる暗黒世界だった。




そこでふと、階段の向こう側、つまりは僕の部屋の向かいの部屋の扉に目を向ける。




一応、この家は僕以外にももう一人住人がいる。しかし、その住人はどうも朝が苦手のようで一向に起きる気配を見せない。なので前は毎朝起こしに行ったのだが、毎回半殺しにされて追い出され、失敗している。




故に、僕はその住人が起きないように静かに、静かに階段を降りる必要があった。

意外と神経質なのだ。




しかし、階段が軋む音を鳴らすことはない。

僕の場合はそういうこと(・・・・・・)は起きない。




一階のリビングに着く。




リビングに着くや否やすぐさま洗面所に向かう。先ほど述べたもう一つの洗面所だ。

もちろんここでもう一度歯を磨いたりはしない。ここでは洗濯のために寄ったのだ。




これもさっき言ったが、家は洗面所と浴場がセットなのだ。そして洗濯の際、風呂の残り湯を使っている。

早い話、一階の洗面所に洗濯機がある。それだけだ。

ちなみに二階にはない。代わりになぜか冷蔵庫がある。




洗濯機から伸びたホースを風呂に入れ、洗濯物を入れ、電源を入れる。

あとは勝手に洗濯機がやってくれるから、技術の進歩というものは素晴らしいものだ。




再びリビングに戻る。そのままキッチンへ。

冷蔵庫の中を確認し、一瞬で今日の献立を考える。なお、この際不足している食材は今日のうちに調達しておくよう頭の中でメモをしておく。

ご飯は予め準備してあるので電源を入れるだけだった。




朝食を作る。もちろん二人分。

栄養が偏らないように一応バランス良くしてはいるが、同居人はそれが嫌らしく毎日料理に愚痴を言ってくる。

それでも残さず食べてくれるので、別に口に合わないわけではなさそうなので遠慮なしにバランス良く作ってはいるが。




朝食の準備が整うと同時に洗濯機が洗い終了の音を出す。若干音量が大きいのでこの音で同居人が起きてしまうのではと危惧しているがそういうことは今のところない。

安堵に胸を撫で下ろしつつ、出来た朝食を盛り付ける。

食器もちゃんと二人分並べれば朝食の準備は完了だ。




出来れば一緒に食べたいところだが、それは叶わぬ願望であることはこの身に嫌というほど(文字通り)刻み込まれているので、仕方なく一人で朝食をとることにする。

同居人の分は後でラップでもして冷蔵庫にしまっておこう。




朝食を終え、自分が使った食器や調理器具やらを洗えば次は洗濯物に取り掛かることとなる。




洗濯物は決まっていつも一階のベランダで干している。ちょうどこちらが南の方に向いていて乾きやすいのだ。




洗濯物をベランダに、の前に今日の天気を確認する。雨などが降ってしまえば当然服が濡れてしまうからだ。




どうやら今日一日雨は降らないようだ。そう確認した後、洗濯物を持ってベランダに出る。




気がつけばもう午前六時三十分を回っていた。

洗濯物を干し終えた後は洗濯機のホースを片付け、風呂の栓を抜く。

洗濯に使ったからなのか風呂の残り湯はすぐになくなった。




そのまますぐに風呂の掃除を行う。この時、「やっぱり制服着るの早かったかなー?」と思ったことは内に秘めておく。




風呂掃除を終え、時間を見るともう七時十分を回っていた。

今すぐ出ないと電車に間に合わないので急いで身仕度をする。

最後に同居人に向けてのメモを書いてからリビングを出る。




家を出る前に忘れたこと、忘れたものが無いかを瞬時に確認し、無いことを確認してから玄関のドアノブに手を掛ける。

同居人はまだ起きていない。おそらく今日も昼ぐらいに起きるのだろう。

そう思った僕は声をやや大きめにして言った。




「いってきます」




返事は無いが多分起きただろう。

しかしこの場合は言ったもん勝ちだろう。

そのまま僕は逃げるように家を出た。


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