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悪殺し -悪に殺される話-  作者: 皆口 光成
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悪ー拾七ー


「あ〜、美味しかったー♪ごちそうさまサッキー♪」


「いえ…どういたしまして」




幸せそうにケーキを食べ終えたカナデさんは口に生クリームをつけたまま僕にお礼を言った。

まさかこの店一番のケーキを注文するとは常識的にも予測できていなかった僕の財布事情はいきなりの危機を迎えていた。




「サツキくん大丈夫?やっぱり少し悪いし割り勘にしようか?」




そんな事情を察してくれたサヤさんはバッグから財布を取り出そうとしていた。




「いや、大丈夫ですよ。別に支払い切れない金額とかではないので」


「そう?じゃあ…ゴチになっちゃおっかな」


「いえいえ」

と笑顔を取り繕ったが、正直内心はそれほど穏やかではなかった。




いや、お金は足りるのだが問題は今日一日でそれだけ使ってしまった(・・・・・・・)という事実が問題なのだ。




僕には同居人がいる。大体のことは僕に任せてくれているのだが、その同居人なぜかお金の管理だけは自分でやるというのだ。

まぁ、全面的に任されても困っていたので良かったのだが、今はそれどころじゃない。




もし、今日一日でこれだけ使ったことを知られたら。




そしてその相手が同じクラスメイトのしかも女子(・・)だと知られたら。




「サッキー?大丈夫ー?」




ふと、カナデさんの声が聞こえ、意識をカナデさんの方に向ける。




「どうかしましたか?」


「いやどうかしたのはサッキーの方でしょ。凄い汗だよー♪」




そう言われ額を拭うと大量の汗をかいていたことを知る。




「サツキくん無理してない?やっぱり出そうか?」


「い、いえいえ!大丈夫ですよ!ちょっと別のことを考えてたものでして」


「……………」




怪訝そうな顔をされるも一応は了承してくれたようでバッグに突っ込んでいた手を引っ込めてくれた。




「まったく、カッコつけちゃって。私嫌ですよ。サツキくんの土下座姿を見るのは」


「私は少し見たいなー♪」


「いやだから大丈…なぜに見たいと?」




呆れて机に頬杖をつくサヤさんを横に、明るく無邪気に頬杖をつくカナデさんの聞き捨てならない言葉に僕は問うた。




「え?だって面白そうだしー♪」




聞くまでもないほど幼稚な理由でもはや言及する気にもなれなかった。




「それにサッキーの土下座姿なんて超が付くほどのレアものだからねー♪多分高く売れると思うんだよねー♪」


「え?ちょっと待ってください。それどういうことですか?」




またしても聞き捨てならない言葉につい前のめりになってしまった。

さすがに気圧されたのか、カナデさんも少し腰が引けている。




「い、いや〜、サッキーて実は結構モテてるんだよねー♪」


「そうなの!?」




僕よりも先になぜかサヤさんが反応して立ち上がった。




「ご、ごめんなさい…。カナデ、続けて…」




そのまま顔を赤くさせ、サヤさんは座り直す。




「うん、で。あまりにもサッキーがモテたことでついにはうちの学園に『サツキファンクラブ』なるものが結成されちゃったんだよねー♪」


「何ですか、それ?」


「まぁ、要は『私たちサツキくんが好きだけど恥ずかしくて告白できないしライバルも多いしなんならいっそ一緒に組んでサツキくんのことをお互い語り合いましょう!』って感じのグループ?」




なんだその奇妙、というかハタ迷惑な集団は…。




なるほど、最近学園でやたらと視線を感じるのは(特に女子から)そういうことだったのか…。

と、なるとカナデさんが僕の土下座姿を見たがる理由は…。




「つまり、僕の写真をそのファンクラブに売り込むってことです…か?」


「うん!ピンポーン♪よく分かったねサッキー♪」


「…………」




もはやどこからツッコめばいいのか分からなくなったので、僕は頭を抱えるような姿勢をとる。




「お!いいねーそのポーズ♪これはみんな欲しがるだろうなー♪」


「ハハッ、好きにしてください…」




そう言うとカナデさんはどこから取り出したのかカメラを持って僕の写真を撮り出した。




「ねぇ、カナデ…」




カナデさんの服の裾を掴みサヤさんが呼びかけた。もしや友の暴走を止めようとしているのか。




サヤさんはカナデさんの耳元に寄り、なにやら話していた。




「はっはーん♪さてはサヤもサッキーの…」


「ち、違うわよ!」




ガタッとサヤさんは再び立ち上がった。




「わ、私はただ同じクラスメイトとして、且つクラス委員として気になるだけよ!」




そう言った後、ハッとした表情をした後サヤさんはこちらを見、より一層顔を赤くさせてまた座り直した。




「あの?サヤさん?なにやら様子がおかしいのですが大丈夫ですか?」


「なんでもない!なんでもないから!」


「ハァッ…」




心配して声をかけるもサヤさんは顔を赤くさせるばかりで何も言ってはくれなかった。




「フッフーン♪モテる男は辛いねー♪」




その横のカナデさんはなにやらさっきから楽しそうだ。




「そのモテすぎる罪が“黒いシニガミ”の対象にならないように気をつけなよー♪」


「“黒いシニガミ”?」




二度ならず三度までも聞き捨てならないことを言い出したカナデさんにまたも聞く。




「あれ?知らないのサッキー?この街のいわば都市伝説でもある“黒いシニガミ”のこと?」


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