悪ー拾六ー
ユニアド。
それがこの街の名前である。
周囲が半島や、大陸などで囲まれているということもあり昔からここは商業都市として繁栄、発展していった。
しかし近年、国からの要請によりユニアドは商業都市から学園都市に変える“ユニアド学園都市化計画”が発足され、ユニアドは中心にユニアド学園なるものを建て、このまま街はより良い発展をするかに思われた。
だが現実はあまりにも残酷なものであった。
国が次にユニアドに言い渡したのは“人員の移動”であった。
ユニアドには幾つかの教育機関や研究機関が設立されており、そこに充てるための人手が欲しい、とのことだった。
そのため国は人員と引き換えにその企業による一部の費用を肩代わりするということで人手を得ることにした。
それが悲劇の始まりでもあった。
国が引き抜いた人員はどれも優秀な者たちで、その他を圧倒するほどの技術や知識を持った者達だけであった。
その結果、引き抜かれた企業は重要な人材を失ったことで次第に回らなくなり、廃業、倒産の憂き目に遭ってしまった。
人員を返してもらうよう申請をするも、金を受け取ったという手前、そういうことは叶わなかった。
同じような現象はユニアドの外周部に起き、現在ユニアドは中心部の学園都市と倒産し、今もそのままで放置された廃墟が並ぶゴーストタウンが外周部の二つの街が存在する。
なお、ユニアド学園都市を囲むように廃墟が建ち並ぶことから、通称“廃墟リング”と呼ばれ、不良や失業者によるホームレスの巣窟になり社会問題となっている。
その、廃墟の一つに。
数人の人影があった。
皆同じ所にいるというのに誰一人として話そうとしない。
会話の代わりに聞こえるのはシャリンッシャリンッと響く金属と金属をぶつける音のみ。
それは刃物と刃物をぶつける音であった。
それをする人物の目は、まるで感情のない虚ろな目でその作業を続けていた。
「今日はするのか?」
唐突に数人の内の一人が口を開く。
その問いは全員に対してのものであったが、声を返したのはその人物の一番近くにいた者であった。
「いや、武器の確保は充分に確保出来ているからマフィアの襲撃などは今日する必要はないだろう」
そう言って他の人物にも同意を促すように目配せをする。
「じゃあ今日は…」
刃物をこすりつける音が止む。
それと同時に全員の注目は刃物を持つ人物に集中する。
「あぁ…そうだな」
刃物を服の内側にしまいこみ、ゆっくりと立ち上がる。
「今日は…報復の日だ」
その言葉を聞くと、その他数名の方からガチャガチャと何かがぶつかる音が聞こえる。
「総員…準備が出来次第、すぐに執り行うものとする」
刃物の人物がそう言うと全員が無言で立ち上がり、刃物の人物を残してその部屋を後にする。
「クフッ…クハッハッハハハ」
不気味な笑い声が、部屋に響き渡る。