悪ー拾五ー
ここのケーキ店は聞くと最近できたらしい。
なんでも店長がウチの学園出身で、三年間外国で修行してここに店を構えたという。
さらに凄いことにここでは注文さえすればどんなケーキも作ってくれるのだ。
味も絶品で開店初日から大盛況だった、とのこと。
今は大分落ち着いてはいるが、常連の客も来るほどらしい。
「 ってことなんですよ」
「へ〜」
僕が一通りの説明をすると、サヤさんは感心したような返事をした。
「それに嬉しいことにここの学生だったら特別割引もしてくれるんですよ」
そして視線をその隣に移す。
「だから、その、…あまり食べ過ぎないで下さいね……」
サヤさんの隣ではカナデさんがご満悦の表情でケーキを食べていた。
現在、三つ目だ。
「え?でもサッキーの奢りでしょー♪じゃあたくさん食べないとねー♪」
おかわりー♪と、カナデさんはさらにケーキを注文する。
「いや少しは遠慮してくださいよ!」
さすがに財布の中身が心配だ。後で確認しておかないと…。
「カナデー、あまり食べすぎると太るわよー」
そう言うサヤさんもすでに二つ目を完食だ。
「あの、できれば次で最後に…」
「ん?何か言った?」
「い、いえ…」
このまま続けるとまた先ほどの不名誉な称号を付けられそうだったので口を紡ぐ。
くそう!こんなことなら事前に「ケーキは一人一つまで」って言っておけばよかった!!
そんな反省をしてるなかカナデさんが四つ目のケーキを持ってきた。
「うわあ…、なにこれカナデ凄く可愛いじゃない」
「そんなサヤ、照れるじゃないのー♪」
「いや、ケーキのことだから」
一連の漫才を見てからケーキの方を見やる。
パンケーキを何枚か重ねたような生地で一層一層にクリームやフルーツをのせてある。それをチョコか何かで周りを包んだのだろう。
その上にあるイチゴを中心にクリームの柱があって極め付きにトッピングで可愛らしい動物のクッキーまでありとても手間暇がかかった…。
「え?ちょっと待ってカナデさん。これいくらのやつか見ました?」
今まさにフォークを刺そうとしているのを止め、若干嫌な予感がするが聞いてみた。
「?あ、ゴメン確認するの忘れたー♪アハハハハー♪」
「忘れた」の部分をカナデさんが言う頃には僕はもう立っていた。
そしてすぐさまカウンターに向かう。
「 すいません !彼女が頼んだケーキっていくらぐらいですか!?」
前のめりになるぐらいの勢いで駆け込んだので、店員もさすがにたじろいでいた。
「あ、あちらのケーキですか?大体税込み───」
そしてその言葉は僕の予想した通り。
この店で一番高い金額であることをその店員からの口から告げられた。