悪ー拾参ー
暗い裏路地。
そこはジメジメとしていて、光もまともに当たることのない場所。
そこにあるものといえば誰が設置したのかゴミ箱や誰かが捨てたかどこかから風などに煽られてやって来たゴミ。
そして人。
たくさんの、人。
この街の住人であり、そして帰る場所を失ったもの達。
この街の裏路地は、その者たちによって支配されていた。
いや、捨てられていた。
彼らは皆、この街に不必要とされたのだ。
今までこの街のために尽くしていたというのに。この街のために働いていたというのに。
ある日、突然に彼らは捨てられた。
まるでそこらに散らばるゴミか何かのように──。
「か………。……らずだ」
どこかから、誰かの呟きが聞こえる。
「必ずだ」
その者の呟きは独り言のようであるが、しかしその声は周りの人間にも反響するかのように伝わっていく。
必ずだ。
必ずだ。必ずだ。
必ずだ。必ずだ。必ずだ。
必ずだ必ずだ必ずだ必ずだ必ずだ必ずだ必ずだ必ずだ必ずだ必ずだ必ずだ必ずだ必ずだ必ずだ必ずだ必ずだ必ずだ必ずだ。
「必ずだ」
一人が言う。
「…復讐、してやる」
その悪意を込めた言葉は、またも周囲に伝染していく。
暗い裏路地は悪意の闇に飲み込まれるかのように。