第2話 前途多難
「あ、ありがとうございます」
とりあえず見方だと信じて、お礼を言った。
しかし、少女はこちらが何を言っているのか分からないようだった。
「◆○×?」
やはり発音が分からない言葉で話しかけてくる。
「ノーノ―、俺、日本語以外ワカリマセーン!」
言葉が分からない、ということを伝える為に、万理は口の前でバッテンを作ってみた。何故か、カタコトの日本語になった。
奇跡的に、少女はそれを見て悟ってくれたのか。
額に手を当てて、「だめだこりゃ」みたいな仕草をした。
言葉が通じなくても、伝えようとすれば伝わるし、向こうが考えている事もなんとなくわかるもんだなーと謎の感動を万理は感じていた。
少女は、何かを考えていたが、ふと何か思いついたようだった。
腰にベルトで固定しているポーチをごそごそと探る。
取り出されたのは、1つの小さな指輪。
「○○○」
少女はそれを指にはめるような仕草を見せてから、万理に渡してきた。
どうやらはめろということらしい。
恐る恐る、万理は指輪を嵌めてみた。
瞬間。
「どう?言葉、分かるのか?」
先ほどまで全く意味不明だった少女の言葉が、急に日本語に聞こえた。
一体どういう原理なのか。現代もびっくりの技術だ。
「!?」
「その様子だと通じてるみたいだな」
「あ、ああ…あの、先ほどは助けていただいてありがとうございました!」
「単にとおりすがったから助けただけだ。放置して死なれても後味悪いし。
ったく、一人で珍しい服着てこんなとこうろつくなよ。盗賊に襲って下さいって言ってるようなもんだっての」
少女は呆れた様にため息をついた。
「そ、そーなんだ」
どうやら物騒な世界に来てしまったようだ。
「で、アンタ、名前は?」
「俺は、万理。黒田万理」
「…クロード・バンリ?」
「名前が万理で、苗字が黒田」
「異国人か。苗字を先に名乗る国もあるのは聞いたことはある。
あたしは、スコール。スコール=レイヴァー。
アンタ、どっか行くところあるんでしょ?近くだったら送ってくけど」
行くべき場所。戻るべき場所。トイレ。
しかし、ドアの向こうは相変わらずの草原で。
「…え、えっと…その…ここ、どこですか?」
「…」