後悔
どうも。
短編なんぞに挑戦してみました。
書いてるうちに筋が変わってしまいましたが、まあこれでいいでしょう。
なんかこっちの方が私らしいですし。
朝、いつもよりすんなり目が覚めた。
いい気分で支度を済ませ、いざ出勤と思ったところ、
玄関のベルが鳴る。
こんな時間になんだと思いながら、玄関先で話してそのまま出かけようと準備したままドアへ向かう。
ドアののぞき穴から外を見ると、そこには友人の顔があった。
不審に思いながらもドアを開けると、
「助けてくれ、鬼に追われてるんだ!!」
「……。さーて仕事仕事。」
わけわからんことを言い出した。こういうのはスルーするのが一番だ。
戸締り良し。さて行こう。
と思ったらしがみつかれた。
「待て待て待て、ホントなんだって。さっきから追われててさ。いまやっとの思いで逃げてきたんだよ。信じてくれって。」
「知るかよ。放せよ。これから仕事なんだって。そういう話は他所でしろ!」
頭を押して引きはがそうとしながら小声で答える。こんな変人が友人だったとは。
「頼むよ。そう言うなって。頼る相手がもうお前くらいしかいねえんだよ。」
「だ~とにかく放せ。人目が痛いからひとまずあがれ。めんどくせえ。」
確実に遅刻だがもう仕方ない。話を聞くまではどこまでもついてきそうだからな。
「で、なんなんだ?鬼がどうのって言ってたけど。」
リビングで話を聞く。
「実はさ、俺の親父がある人に貸してたものを、黙って返してもらってきたんだ。」
「それは立派な犯罪だろ。お前が悪い。」
「でも、返却期限はだいぶ過ぎてるんだぜ?」
そういう問題でもなかろうに。
「どのくらい過ぎてるんだ?」
「うーん。ざっと300年くらいかな。」
よし放っておこう。
「そうかそうかそれは大変だったな。頑張って和解策でも見つけてくれ。」
「なんだよ押すなよ。まだ話は終わってないぞ。帰らせようとするんじゃない。は、その顔は信じてないだろ。ホントなんだぞ。」
いやでもまあ、信じろっていう方が無理だと…
「ホントだって。証拠もあるんだよ。頼むよ聞いてくれよ。」
などと喚いているが、構わず押し出す。
ドアを閉めた後でも、しばらく「鬼」だの「お前は俺を殺す気か」だの叫んでいたが、しばらくしてそれも聞こえなくなった。
きっとほかの友人に頼りに行ったんだろう。友達だけは多い奴だからな。
去り際に言ったセリフは引っかかったがまあ気にはしないでおこう。
その数日後、あの時のことを後悔する出来事が起こる。
結局あの日はそのまま出勤して、帰宅したころにはそのことはすっかり忘れていたのだ。
だから初めは何のことやらわからなかった。
「閻魔大王の持ち物を盗んだ者が、先日こちらに来ていると思うのですが。行き先に心当たりはありませんかね。」
「へ?」
閻魔大王…ってあの、地獄の王的なあの人?
そんな人から盗むやつに心当たりなんて…あれ?
「何か知ってるんですね。教えていただきましょうか。」
そんなこと言われても。
「え~っと。確認なんですけど、その人、見つかったらどうなります?やっぱ殺されたりとか?」
「すぐ殺すようなことはしません。いくら妖怪といえど、いつかは死にますし、死ねば罰することはいくらでもできますから。」
そ~ですよね~。
「って妖怪!?」
「おや、知りませんでしたか?かくいうわたくしも妖怪ですが。」
え、妖怪ってこんな簡単に溶け込めんの?そういやあいつも得体のしれないやつではあったけど…
しかし、自分の友人に妖怪がいたとは。まあ知ってても友達になりそうだけどね。
「そんな簡単にばらしちゃっていいんですか?割と大事な隠し事ですよね、普通。」
「無闇矢鱈と話はしませんよ。あなたは言っても構わないと判断したまでです。現に動揺の欠片もしてないじゃないですか。」
えぇ~。これは喜ぶべきなのか?
「知りませんよ。」
「心を読まないでください!!」
「ほら、普通に受け入れてる。そういう人には言って大丈夫なんです。」
う~む。それでいいのか、妖怪よ。
「いいんです。」
「また読んだ!!」
コントのようになってきた。
「玄関先で立ち話もなんですし、上がりませんか。お茶でもいかかです?」
「いえいえ、今日はこれで失礼します。さっさと見つけて白状させないと、私の身が危ないですから。」
そうか、それは残念。
「あ、そうですよね。また今度、暇なときにでもよってください。歓迎しますよ。」
「いえ、そうもいきません。私は閻魔大王様に仕える身ですから。それでは。」
軽く礼をして別れる。
ああ、本当にあの時あいつをかくまえばよかった。
そうすれば妖怪とお茶をすることができたかもしれないのに。
全く、次あんなことがあったら家にかくまってやるぞ。
そして妖怪と楽しくお茶を飲むんだ!!
それにしてもいったい何を盗んだのだろうか。それだけでも聞けばよかった。
※この話はフィクションです。実在の人物、企業、団体、宗教、妖怪などとは全く関係ありません。