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春風の華  作者: 真条凛
日常の中の歪み
7/17

前触れ(葵+αsaid)

6/14

更新


月鈴

本当はこんな風に関わるつもりはなかった。


ただ、数年前に忽然と行方不明になったあの人を探したくて。

それだけだった。


今となっては顔も覚えていないけれど。


僕に掛けてくれた言葉本物だった。



けれど雰囲気は彼女―――


―――安杜木 桜に似通っているものがあった。


だからなのだろうか。



「‥‥もし、その力に自覚があって隠れていたなら。貴女はこれから‥‥。」


―――彼女と同じになってしまう。

昔会ったあの人の二の舞に。


だから彼女にあんな事を言ってしまったのだろうか。



僕は扉を叩く音をバックに、ドアの隣に座り込んだ。


そして頭を抱えこむ。


あの人を探す手がかりのために、彼女を差し出すなんて。


自分もずいぶん非道になったな、と思わずにはいられない。




僕を呼ぶ声がする。


こから出して、と。


それから


どうして、と。



その声から逃れたくて、逃れる方法を知りたくて。

でも逃げる事は許されない。


これは僕の責務だ。


だから耳を塞ぎたくとも塞ぎはしない。


ただ、

ここから出して、とドアを叩く彼女の声には答えることなく。

ただその場に留まっていた。



彼女にも光が、

助けがあると信じて。

目を瞑った。


自分勝手だと知りながら。






++++++++++++






暗闇の中、衣擦れの音がする。


闇夜の中なのに、妙にその音が清廉に聞こえて。



視覚など何の頼りにもならない。



闇に同化したぬばたまの髪は、ひっそりと肩口で揺れる。



そんな中、開かれる一対の瞳。




赤色の瞳。




「―――時が来た。」




そう落とされた音は空気を震わせ、それ程大きくはなかったはずなのに部屋の隅々まで響き渡った。


―――この時を待っていた。


その呟きは突如として室内に吹き荒れた風に飲み込まれた。


風の後に残ったのは、それに紛れて来たであろう木葉一枚。


誰もいなくなった室内にひっそりと落ちた。


それはそう遠くない、何か未来を示しているようだった。

それを知る者はもういない。



6月14日の更新でした。

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