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春風の華  作者: 真条凛
日常の中の歪み
5/17

知らぬ間の出来事

6/13(月)

今から一気に更新します


月鈴

学校に着くなり、私は何故か皆に見られる。


(なんで?)


全く心当たりはない。

同学年に見られる事はあっても、下級生、ましてや上級生にまで見られるだなんて心外だ。


「私、なにかした?」


はあ、とため息をつくも、状況はなんにも変わらない。

ならば、ととっとと足を進める。


ガラリと開いた教室に一歩足を踏み出せば、思いもしなかった攻撃にあった。

正しくは抱擁だが。


「よ、陽子!びっくりするじゃない。」


私の胸に飛び込んで来たのは陽子。

思いもしない行動に出られ私は戸惑う。


(なんだかスキンシップが激しい‥)


あの強気な陽子が珍しい、と思うも、取り敢えず声をかける。


「なにかあったの?」


しかしその問いに答える声はない。


そればかりか、周りからの注目が増すばかりだ。


陽子に抱き着かれた時に足元に落ちたカバン。

最近よくカバン落とすな〜、と不謹慎な事を考えてしまったのは重々承知している。

だが事実だ。


ここに突っ立っていたってしょうがない、と陽子を引きずり、席に着く。


彼女の乱れたスカートを直しながらも、私は考える。


昨日はあんなに強気だったのに、一体何があったのか、と。


そしてこの気になる視線は何なのだろう。


その後者の答えは、程なくして知る事になった。






「安杜木さん。」


「はい?」


どうして2年の教室に、3年の菅沢さんがいるのだろう。

菅沢さんと言えば、先日のお昼の放送をした、放送部の部長だ。


「葵君の探し人ってあなた!?」


この人の言っている意味が分からない。

助けを求めるように、陽子を見るも、彼女は今だ本調子ではない。


「あの?葵、さんってこの前転校して来たあの?」


分からないと言う風に聞けば、ガシリと肩を捕まれた。


いったいなんなんだ。


「知らないの?」


「へ?あ、はい。」


「向こうは知っている風だったわよ。」


「えっ、うそ。」


私は転校生とは顔を合わした事もないはず。


「本当に知らないのね。」


「申し訳ないんですが、身に覚えがないです。」


「そう。残念だわ。春崎 葵君の心を掴む方法を伝授、て特集組もうと思っていたのに。」


「‥‥。」


そんな特集組まれそうになっていたのか、自分。


「仕方ない。他を探すわ。また何か合ったら教えてね。」


菅沢さんは言うだけ言うと、颯爽と去って行った。


「結局なんだったの。」


私の苦労は拭われない気がする。






そうして迎えた昼休み。


朝から元気のなかった陽子も、少しは元に戻って来ていた。


「‥朝はゴメンね。」


気が動転していたみたい、と弱々しく笑う陽子。


「それは大丈夫。なんかいろいろと合ったみたいだしね。」


「うん。まあ‥ね。」


よっぽど口には出来ない事らしい。

大抵の事は相談してくれる陽子がここまで、という事は無理に聞かない方が良いだろう。


「まあ、何も知らない私が言うのもおかしいけど、そう落ち込まないでね。」


「うん。やっぱり桜大好き。」


ようやく笑った陽子。

その顔に少し影は残るものの、だいたいマシにはなった。


「それはありがとう。けど、私って転校生に会った事あったっけ?」


未だに残る疑問。

春崎 葵、という人物に会った覚えはない。


「昨日会ったじゃない?」


「え、うそ!!いつ?」


「昨日帰り。」


「というと‥‥まさか、あの人!」


「そのまさかだよ。」


(あ〜、なんで今の今まで気付かなかったの、自分。)


「それで、あの美男子がね。皆集まっている前で桜の事を探していたんだ、って言うものだから。聞き耳を立てていた周りの女子生徒が、尾鰭を付けて噂をしたわけ。」


特に美男子と言う所に皮肉を込める陽子。


「‥‥噂に付いた尾鰭って、例えば?」


「‥‥‥気にしない?」


私が気にするような内容なのか。


取り敢えず頷いてはおく。


「桜が葵クンの許婚だとか、桜は一度葵クンをふったが、葵クンが諦められずに追いかけた。だって。それと、‥桜が誘惑して葵クンを寝取った、だなんて専ら噂されてる。」


「ね、寝取った!」


あまりに衝撃的すぎて、声が裏返った。


「しぃ!」


声が大きい!と怒る陽子はようやくいつも通りだ。


「だって!前の二つもショックだったけど。最後のはいくらなんでも酷いわよ。」


「そうよね。私もそれは思った。フラれた葵クンが、諦めきれずに桜を追いかけてきた、ってのは信憑性はあっても、後の二つは、ね。特に最後のは冷やかしか何かでも論外でしょ。」


「う、ん。微妙な慰めをありがとう。」


「微妙じゃないわよ。歴とした慰め。」


「そうありがとう。」


「もういい!」


拗ねたように言ってのける陽子を見て、思わず笑いが込み上げてくる。


そして二人して笑った。



6月13日の更新でした。



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