あゆみ 弐
橋を渡って必死に追いかけた。夜の道は怖かったけれど、清音のそばに行きたい一心で、足は止まらなかった。
胸はどきどきして、息も苦しい。けど、それも全部、清音に近づける証のようで嬉しかった。
追いついた時、美穂と健太は地にのたうち、血を吐きながら苦しんでいた。
二人の身体のあちこちが、不意に裂け、血と肉が、噴水のように吹き上がり清音に降りかかる。
月光に照らされたその姿は、おそろしいほど惨かった。
けれど、あゆみの目はそこに向かなかった。
清音――。
赤黒い血に頬を濡らしながらも、祈りの言葉を口にするその横顔。
月光に浮かんだ睫毛の影まで、美しくて仕方がなかった。
(やっぱり、わたしは清音のこと、だいすきなんや)
胸の奥が甘く震えて、涙が滲んだ。
美穂と健太のことより、清音の姿が尊く思えた。
「清音……やっぱり、きれい……」
小さく呟く。唇の端が自然と緩んだ。
美穂と健太がこうなったのは、きっと自分が清音に知らせに走ったからだ。
あの二人の逃亡を止める役目を、自分が果たしたのだ。
そう思うと、胸がいっぱいになり、誇らしくすらあった。
(わたし、清音のために役に立ったんよ。えらい子やろ……?)
血の匂いも、呻き声も、夜風に消えていく。
残ったのは、祈りを紡ぐ清音の美しい姿だけだった。
◆◆◆
あとがき。
清音の章と銘打ちながら、美穂と健太の物語になりました。
長い間章でしたが、一気に読んでいただきたく、この形に。
二人の物語は、ここで終わります。
次章「家族」では、佐藤家の翌日を描きます。
書いていると、手が震えました。




