断片|神社の裏板
【メモ帳より】
神社の裏手で、古い板を見つけた。
山側の茂みで道に迷って、必死に出口を探してたとき、
急に視界がひらけた。
そこに三枚の板が立てかけてある。
釘は錆びて抜けかけで、板は半分倒れてた。
裏面に、黒いペンで何かが書いてある。
一枚目。子どもの字で:
「みかちゃんが選ばれた」
「神様の花嫁になるんだって」
「うらやましい、私も選ばれたい」
「清音様はとても美しくて、優しくて」
「きっと神様も喜んでる」
二枚目。もう少し大きい子の字:
昭和53年 清音(一代目)記す
いちに、にくゑが 落とし肉
さんし、静かな 夜の後
ごろく、喜んで 次の子を
ななはち、早く迎えて
きゅうじゅう、待ってる 待ってる
※これは村に伝わる神聖な歌です
※選ばれた者だけが知ることができる、尊い真実
※次の清音に、誇りとともに伝える
三枚目。きれいな大人の字:
平成12年 清音(二代目)
私の使命も終わりに近づいています。
神様とひとつになれる日が楽しみです。
【過去の供物】
昭和58年 田中家→神様に喜ばれました
平成3年 佐々木家→豊作をもたらしました
平成9年 高橋家→不完全でしたが、神様は慈悲深く受け入れてくださいました
──この部分の下に、荒々しい文字で割り込むように書かれていた──
間違ってる!
これは神聖なことじゃない!
でも、もう遅い
誰も止められない
この子だけは、普通に生きて
私は震えた。
三代目清音の欄に書かれていた名前——
弓子。
それは、お母さんの名前だった。




