断片|赤い飲み物
【メモ帳より】
清音が小さな瓶をくれた。
「これ、よかったら」
手のひらサイズの丸い瓶。
蓋に巻かれた布、夕日に透かすと血みたいに赤い。
清音の指が触れた瞬間、氷みたいに冷たかった。
「村の子はみんな、これを飲んで育つの」
なんの説明もなし。
でも断る理由もない。
家に帰って、瓶をまじまじと眺めた。
なんでだろう、見覚えがある気がする。
母の遺品を整理してた時、似たような瓶を見た気がする。
でも思い出せない。
夜、瓶を開けた。
甘い匂いがふわっと立ち上がる。
でもその奥に、鉄の匂い。生臭い匂い。
液体はあめ色で、とろり濃厚。
ひとくち口に含んだ瞬間──
舌がしびれた。
甘いのに、苦い。温かいのに、冷たい。
のどを通る時、何かがざらざらした。
体が重くなって、こたつで眠ってしまった。
夢の中で声が聞こえた。
「やっと来てくれたのね」
「待ってたの、ずっと」
「今度こそ、最後まで」
誰の声かわからない。
でもすごく懐かしく感じた。
母の声に、似ていた。
朝起きたら、なぜか冷蔵庫に瓶がしまってあった。
私がやったのかな。覚えてない。
でも不思議と「毎日少しずつ飲まなきゃ」って気持ちになった。
その日から体調が劇的に良くなった。
東京にいた頃の貧血、頭痛、すべて消えた。
でも、なんで母の遺品に似た瓶があったんだろう。
【メモ帳の隅に走り書き】
母、何か隠してる
この液体、普通じゃない
でも体調いいから、まあいいか




