断片|しゃがんでいる子
【メモ帳より】
学校からの帰り道で見かけた。
畑の脇、コンクリートの縁に小さな影。
子ども。たぶん小学生。
紺色のシャツに白いランドセル。
膝を抱えてしゃがんでる。
でも変だった。
背中の形がおかしい。
人間の骨格じゃない曲がり方してる。
肩甲骨が肩より上にあるみたい。
それに、濡れてる。
晴れた日なのに、全身びしょびしょ。
服の裾から水がぽたぽた落ちてる。
「大丈夫?」
声かけそうになったとき、気づいた。
動いてない。
呼吸してない。
でも、水は落ち続けてる。
顔を上げたらまずいって直感した。
きっと、人間の顔じゃない。
急いで通り過ぎて、角を曲がってから振り返った。
もういない。
濡れた跡だけが道に残ってる。
次の日、同じ場所を通った。
また同じ子がいる。
同じ姿勢で、同じように濡れて。
3日目も、4日目も。
でも誰も気にしてない。
村の人たち、普通に横を素通りしてく。
見えてないのか、見ないふりなのか。
5日目に勇気出して近づいた。
1メートルぐらいまで。
シャツの背から何かが覗いた。
――目だ。
小さな目が、いくつも、布地を押し上げるように並んでいた。黒
目がちのそれが、一斉にこちらを見た。
でも振り返らない。
顔は絶対に上げない。
【メモ帳の隅に走り書き】
毎日同じ時間に同じ場所
でも村の人は素通り
なんで私にだけ見えるんだろう




