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断片|幼い約束

【村の南東方面の民家より発見された日記より】


7月15日


 今でも思い出す。

 清音ちゃんと初めて会ったのは、五歳の時。

 

 わたしは村長の家に、母さんと一緒に行った。

 母さんは掃除の手伝い。わたしは庭で遊んでいいって言われた。

 

 縁側に、女の子が座っていた。

 真っ白な肌、真っ黒な髪。

 人形みたいに綺麗な子。

 

「一緒に遊ぼ?」

 

 わたしが声をかけたら、その子はゆっくり顔を上げた。

 

「……ええよ」

 

 初めて、友達ができた。

 

 清音ちゃんは、いつも一人だった。

 村の子どもたちは、清音ちゃんに近づこうとしない。

 村長の娘だから? それとも、別の理由?

 

 でも、わたしは違った。

 清音ちゃんと遊ぶのが楽しかった。

 

 一緒に庭で虫を探したり、川で石を拾ったり。

 清音ちゃんは笑わなかったけど、時々、小さく微笑んでくれた。

 

 その笑顔が見たくて、わたしはいつも清音ちゃんの側にいた。

 

(中略)

 

 十歳の夏。

 川のほとりで、清音ちゃんがこう言った。

 

「あゆみ、ずっと一緒におってくれよる?」

 

「うん! ずっと一緒よ!」

 

 わたしは即答した。

 

「約束?」

「約束!」

 

 清音ちゃんが、初めて笑った。

 本当に、心から笑った。

 

 その笑顔が、わたしの宝物になった。

 

(中略)

 

 でも、中学に入ってから、何かが変わった。

 

 清音ちゃんの体に、変化が現れ始めた。

 詳しいことは教えてくれなかったけど、時々苦しそうにしていた。

 

「大丈夫?」

 

 わたしが聞いても、清音ちゃんは首を振るだけ。

 

「大丈夫。これは、わたしの役目じゃけぇ」

 

 役目?

 

 清音ちゃんは、何も教えてくれなかった。

 

 そして、清音ちゃんはどんどん遠くなっていった。

 

 わたしは側にいたのに、届かなくなっていった。

 

(中略)

 

 そして、梓が来た。

 

 清音ちゃんが、初めて誰かに心を開いた。

 

 わたしじゃなく、梓に。

 

 ずっと一緒にいたのは、わたしなのに。

 約束したのも、わたしなのに。

 

 なんで。

 なんで、梓なの。

 

 わたしじゃ、ダメなの?

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