断片|学校での日常
【村はずれの民家より発見された日記より】
※ただし、この日記は軒下に廃棄されていたようだ。
〇月〇日
今日、転入生が来た。
梓さんっていう子。東京から。
朝のホームルームで先生が紹介して、私が学校を案内する係になった。
級長だから、こういうの慣れてる。
梓さんは物静かな子だった。
でも目がよう動く。色んなものを観察してる感じ。
「何か困ったことがあったら、いつでも言うてね」
そう言うと、梓さんは「ありがとう」って微笑んでくれた。
梓さんの席は清音の隣。
改めて書くけど、清音は村長の娘さんで、みんなから一目置かれてる。
美人で、静かで、でもどこか近寄りがたい雰囲気がある。
授業中、梓さんと清音が小声で話してるのが見えた。
清音が、あげな風に誰かと話すの、珍しい。
休み時間、ロッカーの前で健太とすれ違った。
健太は相変わらず無愛想に会釈だけして通り過ぎていく。
私、いっつも健太のこと見てる。
眼鏡をかけてて、口数は少ないけど、優しい目をしてる。
困ってる人がおったら、黙って手を貸すような人。
でも健太は、私のことなんて見てない。
昼休み、清音と梓さんが屋上に行くのを見た。
二人だけ。
なんだか特別な空気が流れてる気がした。
あゆみも、階段の影から二人を見てた。
彼女はずっと清音のことを慕ってる。
幼馴染だからって理由もあるけど、それ以上のものを感じる。
放課後、図書室で勉強してたら、健太が来た。
珍しい。あいつ、あんまり図書室来んのに。
「美穂、これ」
健太が、ノートを差し出してきた。
数学の問題集。私が昨日困ってるって言うたやつ。
「解き方、書いといた」
そう言って、すぐ出て行ってしもうた。
ノートを開くと、丁寧な字で解説が書いてあった。
私のために、時間かけて書いてくれたんじゃ。
嬉しゅうて、泣きそうになった。
でも、これは優しさなんじゃろうな。
私が期待してるような、そういうのじゃない。
【日記の隅に走り書き】
健太、優しい
でもこれは友達としての優しさ
わかっとる
わかっとるけど




