真実
一瞬で、膨大な記憶が頭に流れ込み、激しい痛みが襲う。
そして目の前の“大人”が変化し始めた。
純白の皮膚は崩れ落ち、その下から無数の縫合線が全身を覆って現れる。
「思い出したよ」
自分が何者で、なぜここにいるのかを。
「私は“お前”だ」
“大人”が言うと、黒い液体を吹き出しながら、やがて私と同じ姿へと変わった。
「最初に出会った老人は、お前の両親だ。お前を守るために閉じ込めようとしていた。だが死んだ」
「俺の両親は……姉に殺された」
脳裏には、壁にもたれかかり腹に果物ナイフを刺された状態の自分、そして横たわる父と母の死体が浮かぶ。
まさに私が最初の白い部屋で目覚め、腹部から黒い液体が流れ出していた理由そのもの。
「出会った女性は、姉がした性的虐待だ」
「俺は姉のおもちゃみたいに扱われていた……」
今度は裸のまま拘束され、姉に弄ばれる自分の映像が流れる。
「男の子は、幼い頃から姉が続けてきた虐待そのものだ」
「姉は色んな道具で俺を痛めつけた。でも死なせることはしなかった。いつも包帯を巻いて……」
「傷が感染し、栄養も足りず、身体は弱り、血は黒く変質した」
そうだ。黒い液体とは——血。
「弱りきった身体を見て、姉は果物ナイフを腹に力いっぱい突き刺し、そのまま引き抜いた。最終的に姉はお前を殺し、遺体をバラバラにした」
「だから俺の身体には縫合の跡があるんだ……外せる縫合線……」
すべて、思い出した。
私は軽度の精神疾患があり、姉は重度のサディストだった。
私が抵抗しないと知ると、姉はエスカレートし、両親は二人を会わせないようにした。
しかし、ある日。
姉は目的もなく家に侵入し、自分が嫌うものすべてを消し去った。
両親を殺し、私を監禁し、一週間後、私は死んだ。
姉は私を解体した。
私は死後、魂となって姉に取り憑いていただけ。
あのとき街で歩いていた“俺”は、ただの迷える霊魂だった。
なら、姉はなぜ振り返った?
声は聞こえないはずなのに。
考えた瞬間——白い部屋が崩れ始めた。
壁は古び、光は薄れ、赤みが混じり始める。
空気は腐臭で満ちていく。
「ようこそ……十八階。地獄の最底層へ」
“大人”は微笑む。
短編小説を読んでいただきありがとうございます。
この作品は短編小説です。
路面電車で通学中の空き時間に書きました。
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