十八階へ
もし計算が間違っていなければ、今いるのは十五階だ。
部屋の形こそ以前と変わらないが、中にあるものはまったく違っていた。
ここには……
処刑用の器具が、所狭しと並んでいた。
中央には一人の男の子が座っており、カッターナイフで自分の腕に次々と傷を刻んでいる。
彼の服だけ黒色で、腕からは黒い液体がじわじわと滲み出ていた。
「一つ頼んでいい?」
男の子は私のほうを見て、右手側の火炎放射器を指差した。
「それ取ってきて」
女性の件を経験した後なので、私は躊躇せず火炎放射器を手渡す。
男の子は受け取ると、自分に向けて炎を噴射し始めた。
たちまち全身が広範囲に焼け爛れる。
そのとき、私は奇妙なことに気づいた。
黒い液体が……流れていない。
漂うのはただ、焦げた臭いだけ。
彼は自分の身体を傷つけているのに、死にはしない。
まるで、意地でも生き残るつもりかのように。
「次、それ取って」
彼はまた言った。
今度は少し離れた場所にある“果物ナイフ”を指している。
「……君は、生きたいのか?」
私は果物ナイフを手渡し、彼の前でしゃがみ込む。
「生きたい? それは僕が決めることじゃないよ。」
「どうして? 自分で自分を傷つけてるじゃないか。」
「僕は自分を傷つけてるんじゃない。再現してるんだよ。過去の身体を。」
「どういう意味?」
「君はもう覚えていないかもしれないけど、今まで会ってきた人たちは全部、君自身と関係がある。僕も全部は知らない。一部分しかね」
ますます意味が分からなくなる。
「僕はね、君の“身体”を再現してるんだ」
「俺の……身体?」
「だから質問はこうだよ。生きたいのは僕じゃない。君自身なんだ」
俺は、生きたいのか?
「僕を殺して。そうすればもっと上の階に行ける。十八階まで行けば、すべてが見える」
少しの沈黙の後、私は銃を取り出し、男の子の眉間に向けて撃った。
「お前がやったのか?」
すぐ背後から“あの方”の声が響く。
「俺がやった」
俺は、すべてを思い出したい。
「三階」
言葉とともに、床が震え始め、地面から上へ伸びる階段がせり上がる。
「上へ行け」
“あの方”は先を歩き、私を十八階——最上階へと導いた。
短編小説を読んでいただきありがとうございます。
この作品は短編小説です。
路面電車で通学中の空き時間に書きました。
良いレビューをいただけたら嬉しいです。




