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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

別に、誰も、悪くない


誰も、悪くない。


お母さんがわたしを叩くのも。

お父さんがわたしを蹴飛ばすのも。


由宇ちゃんがまっ逆さまに落ちたのも。


わたしがお母さんを苛々させたから。

お父さんがわたしを嫌いだから。

いなくなりたいけど、わたしも他に行くところがないから。


由宇ちゃんがわたしに飛び降りろって言ったけど、わたし飛び降りたくなかったから。


誰も、誰も悪くない。


苛々したらそれをなにかにぶつけたい。

嫌いな人には消えてほしい。

うじうじしているのがいたら、いじめてやりたい。


それが、人なんだよね。

だからきっと誰も悪くないんだよね。

仕方ないんだよね。


誰も誰も、悪くない。

なんにも悪くない。

人を責めずに許したら、誉められるよね。

人を許したら、わたしをいてもいいって言ってくれる人、誰かいるかもしれないよね?


誰とも、仲良しには、なれなかったけど。

お父さんとも、お母さんとも。

由宇ちゃんとも。他の人とも。


神様、誰とも仲良しになれないわたしのこと怒ってるのかな。

悪い子って思ってるかな。

悪い子は嫌いだから、意地悪するのかな。

だから、皆毎日、意地悪するのかな。

神様の、嫌われものだから。

だから、痛い思いしても、泣いても、許してくれないのかな。


隠れてる。

誰も悪くないけど、怖いから。


お父さんもお母さんも、先生も由宇ちゃんのお父さんとお母さんも、警察も、これからきっとわたしを怒鳴ったり殴ったり蹴ったりするから。


怖くて逃げ込んだ。

入っちゃ行けないところに。

誰も追いかけてこないように見つからないように力いっぱい扉を閉めた。


頑張って引っ張って扉を閉めたら、変な形に歪んで扉は開かなくなった。


誰も悪くない。

わたしを誰も見つけてくれないのも、

わたしが誰にも見つけられたくないから。

誰も、誰も悪くない。


お腹が空くのも、逃げ込んでいる途中で金属で切った足がじくじくじくじく痛むのも、わたしが他の所よりここにいたいと思ったから。

誰もなんにも、悪くない。


ねえ、神様。

神様は、ちょっと悪い?


神様も、悪いって言われるの嫌?

──じゃあ全部、仕方なかったんだね。

仕方がなかったんだよね……。


ここは寒くて、じめじめしてて、暗いな……。

でもなんにも悪くない人たちが一人もいなくて、とても静かだ……。



〈了〉

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