妻がいなくなった日 キャスター視点
「続いてのニュースです。変死体が発見されたといういちあ村で新たな情報が警察側から開示されました。変死体は、生前誰かと会っていた可能性が高く自殺ではなく他殺の可能性が高いということです。
さて、続いては嬉しいニュースが入ってきました。今年の——」
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ピッ、ガタンッ
「はぁ、ひと仕事した〜。」
ニュースキャスターになってからもうだいぶたつ。
世間一般的にはもうベテランと呼べる年に近くなってきた。
年の流れとは残酷だ。
若いうちは蝶よ花よと採用されても、年を取ればすぐに捨てられる。
しかも、新しい芽はすぐに出てくるのだから、自分の存在意義を見せつけるために日々気が抜けない。
「せ〜んっぱい!お疲れ様です。」
「ん?二田さんか。お疲れ様、どうかしたの?」
「ん〜、特に何もないんですけど、、、先輩最近疲れているみたいなので気になって。」
「心配してくれてありがとう。でも私は大丈夫だ「そ、それに!最近暗いニュースが多いですし。例えばいちあ村の話、とか」」
いちあ村、、、
そういえば最近変死体が発見されたとかで巷で噂になっているんだっけ。
でも、なんでピンポイントでいちあ村の話なんかするんだろう。
まぁ、若いうちはそういうの気にしてんのかな〜。
SNSがどうとか。
「うん、いちあ村ね。なにか気になることでもあったの?」
「いえ、ちょっと気になって。最近こういう物騒な話なかったし、、、」
あ〜、これは少し怖くなっちゃったパターンかな。
私も昔あったな〜。
自分とは全く関係ないのに、なんか怖くなっちゃうこと。
ここはベテランとしてホロ—しておいたほうが良いかな。
「大丈夫大丈夫。こんな話めったにないし、自分とは関係ないんだから。」
「そう、ですよね。私が気にし過ぎなのかもしれません。」
「そうそう。そういえば二田さんこの後収録じゃなかったけ。時間大丈夫?」
「あっ、だいじょばないです。先輩休憩時間なのにすいませんでした。失礼します。」
私がそう言うと二田さんはしまったというように、慌てて現場に向かっていった。
私は二田さんの行動をただの善意だと思い、次の収録のことを考えた時にはこのことを綺麗サッパリと忘れていた。