私の灰色な世界に、一筋の光が差し込んだ
初めはいつも通りコメディ寄りで書こうと思っていたのですが、何故か曇らせ小説になりました。
ですが、ちゃんとハッピーエンドですので、そこの所はご安心ください。
また、初めは現実世界恋愛で投稿していたのですが、「これヒューマンドラマの方が良くね?」という思考に至り、一度削除したのち、ヒューマンドラマの方で再投稿という形になりました。
私、東雲 結月は人生に疲れ、たった今、廃墟のビルの屋上から飛び降り自○をしようとしている。
私が自○しようと思い至った経緯はよくある話………だとは思う。
私が自○しようと思い至った経緯……、それはいじめだ。
私は多数の女子からいじめられていた。
別に私が彼女達をいじめていたからいじめ返された、なんて事では決してない。
それどころか、私は至って普通の女の子だ。
ただ、私は少しばかり他の女子よりも容姿が整っており、少しばかり他の女子よりも勉強が出来た。
そんな私を一言で表すなら、『才色兼備』だろう。
それに、私は比較的誰にでも優しく接する。
そのため、私は多くの男子から告白をされていた。
その中にはイケメンの先輩や、サッカー部のエース、野球部のエース、その他にも女子に人気のある男子から、数多く告白をされていた。
だが、私は「今は恋愛する気はない」と言い、全ての告白を断っていた。
それが仇になってしまったのだ。
私が告白を断った男子の中に、当然ながらその男子が好きな女子も含まれていた。
だから、男子の告白を断ると『アイツ生意気……』『〇〇先輩の告白断るとかありえない……』『アイツ何様のつもりなの?』『〇〇君に近づくなよ……』などの話を男子に聞こえない声量で、だが、私には聞こえるような声量で陰口を言われていていたのをよく聞いた。
この様な陰口がきっかけで、私の世界は少しずつ灰色に色褪せていった。
この時点で、私はかなりメンタルにきていたのだ。
だってさっきも言った通り、私は至って普通の女の子なのだから。
だが、まだこの時点では私の心は折れていなかった。
これも高校を卒業するまでだと言い聞かせていたからだ。
しかし、今までは陰口だったものが、少しずつ私に面と向かってその様な言葉を言ってくる様になった。
そしてその女子達は言葉だけではなく、行動に移し始めたのだ。
初めは、私の身体に軽くぶつけたり、私だけ仲間はずれにするなどの行為だった。
だが、次第に私へのいじめがエスカレートしていった。
物を隠されたり、物を壊されたり。また、体操服を破かれたり、体操服をゴミ箱に捨てられたり。バケツで頭から水をかけられたり。
言葉にすれば解る通り、私は行き過ぎたいじめをされていた。
ここまでいじめが露骨になると、クラスメイト達も皆んな気付き始める。
だが、クラスメイトは誰も私の事を助けようとはせず、また、先生に言おうとする者もいなかった。
次に自分がいじめの標的にされてしまうかもしれないからだ。
また、私も先生や親にいじめの事を打ち明けられなかった。
もし言ってしまったら、何をされるか分からないからだ。
そして終いには、私は彼女達にこんな事を言われる様になった。
『色目使ってキモいんだよ』『お前の事、前から目障りだと思ってたんだよ』『お前、生きてる価値ないのに何で生きてるの?』『消えろよ、ゴミが』『お前の親だって、お前がいなくなればせ晴々するんじゃない?』『お前が生きてても誰も喜ばないんだよ』
『お前、死ねよ』
その言葉を聞き、私の世界は完全な灰色に色褪せた。
何故私はこんな容姿で生まれてきてしまったのだろうか……?
もし普通の容姿で生まれてきていたら、多くの男子からの告白なんてされなかっただろうに……。
何故私は皆んなに優しい性格になってしまったのだろうか……?
もし皆んなに優しい性格じゃなければ、多くの男子から声をかけられる事もなかっただろうに……。
何故私は頭の良い女の子に生まれてしまったのだろうか……?
もし頭の悪い女の子に生まれていたら、男子達に勉強を教える事もなかっただろうに……。
そもそも何故私は女に生まれてしまったのだろうか……?
もし男子に生まれていたら、男子に告白される事もなかっただろうに……。
何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故。
何故。
私の心はついに折れたのだ。
ああ……、何故私は生きてるんだろう……。
私の生きる意味って何?
私に生きてる価値なんてあるのかな?
私がいなくなれば、お母さん達も喜んでくれるのかな?
もう疲れた。
何も考えたくない。
こんな世界、もう嫌だ。
楽になりたい。
どうすれば楽になれるのかな?
ああ、そうだ。死ねば楽になるじゃないか。
そう思い至り、現在。
私は廃墟のビルの屋上から飛び降り自○しようとしている。
私がこの世界を生きるには、あまりにも辛すぎる。
このままこの灰色な世界で生きていても、楽しいことなど一つもない。
それどころか、彼女達にもっといじめられるかもしれない。
高校を卒業するまで我慢すれば、いじめはおそらく終わる。
だが、高校を卒業するまで我慢するなど、この何の楽しみもない灰色な世界で生きるなど、私には到底出来ない。
それならいっその事、死んでしまった方が早いではないか。
そうでしょう?
私はこんな世界から早く解放されて、楽になりたいのだ。
だから私は今から自○をする。
私は屋上のフェンスまで行き、フェスに手をかけ、よじ登る。
フェスをよじ登りを終え、次にフェスに手をかけながら、ゆっくりと廃ビルの縁に降り立つ。
そして、下を見下ろす。
見下ろした先には、多くの車が行き交っている。
ここは25階なので、私の事など下から見ても米粒ほどの小さだろう。
そのため、当たり前だが私の事など気にも留めずに車を走らせている。
私が居なくなっても、誰も私の事など気にも留めない。
今下で走っている車は、正に今の私を現しているかの様だ。
私の長い黒髪が、風で靡く。
楽になりたい……。確かに私は楽になりたいのだ。
だが、ここに来て私の足が少しすくんでしまう。
楽になろうと思っても、怖いものは怖いのだ。
だが、ここで飛び降りれなければ、またいじめられてしまう。
そんな辛いことはもう嫌だ。
だから、私は飛び降りる。
私は目を瞑り、大きく深呼吸をして飛び降りる決意をする。
だが、その決意に邪魔をするかの様に、背後でカンカンカンカンと誰かが階段を登ってくる音がした。
どうしてこんな場所に人が来るのだろうかと思い、私は後ろを振り返る。
そして、バンッと屋上の扉が開かれた。
屋上の扉を開き、姿を見せた人は、おそらく私と同年代の男の人だった。
「はぁ、はぁ、はぁ」
急いで登って来たのか、男の人は息が上がっていて、膝に手を当て、「はぁ、はぁ」と言いながら息を整えていた。
「おい君!!早まるな!!!!早くコッチに戻ってこい!!!!!」
息が整って来た様で、声を大にして私に呼びかける。
どうやらこの男の人は、私の事を止めに来た様だ。
だが、私は男の人の声を無視して、再び前を向き下を見下ろす。
「おい!!!!」
背後で男の人が、タッタッタッタッと走り、私の方に近づきながら再び呼びかける。
私はその呼びかけも無視して、フェンスから手を離して飛び降りようとしたその瞬間。
「どうせ死ぬなら俺の童貞を貰ってくれ!!!!」
「………はい?」
男の人のあまりの言葉に、飛び降りるためにフェンスから手を離そうとした手を止め、「何を言っているんだ?」といった表情をしながら、後ろを振り返る。
「えっと……、今何と?」
「どうせ死ぬなら俺の童貞を貰ってくれと言った!!」
やはり聞き間違いではなかった様だ。
この男の人は、どうやら私に童貞を貰って欲しいらしい。
私に童貞を貰ってくれと言った男の人は、フェンスに登り、そしてビルの縁に降り立った。
「ほれ、危ないから俺の手に掴まれ」
男の人はフェンスを掴んでない方の手を私に向けて、「掴まれ」と言ってくる。
「あなた、バカですね。童貞を貰って欲しいがために、あなたまでフェンスの外側に来て危険を犯すなんて」
私は呆れながら男の人へ向くき、小言を言う。
「まぁ、確かに君に俺の童貞を貰って欲しいのは確かなんだが、俺が危険を犯してまで、俺は君には死んでほしくないと思ったんだ」
そう言い、男の人は私の方を向きながらニカッと笑う。
「はぁ…、何かもう飛び降りる気力が失せましたね…」
「それは良かった」
私はため息を吐きながら、男の人が私に差し出してきた方の手を握ろうとした瞬間。
「あっ……」
「ッ!?」
私は足を踏み外してしまい、ビル25階の屋上から空中に私の身体が放り出されてしまう。
男の人は「マズイッ!」といった焦った表情をした。
これから私は死ぬ。
そう思い、私の見る景色全てがスローモーションになる。
ですが、まぁ良いでしょう。
今回は飛び降りる気が失せてしまっていましたが、どうせ遅かれ早かれ死ぬつもりだったのですから。
これで私は楽になれます。
どうせなら私も死ぬ前に初体験ぐらいしたかったですが、まぁ、それももう仕方がない事ですね。
私は目を瞑り、己の運命を身に任せる。
だが、私の手を誰かが掴んだ。
いや、誰かなんて、ここにいる1人以外あり得ない。
私は目を開けた。
空中に放り投げ出された私は、男の人に手を繋がれたまま、宙ぶらりんになっていた。
「どうして……」
私は困惑気味に、私の手を掴んだ男の人を見上げ、聞く。
「どうしてってッ、俺はッ……、君にッ……、死んでほしくないから……ッて言っただろッ……!!!」
腕一本で私の全体重を支えているため、男の人は苦悶の表情をしながら私の問いかけに答える。
「あなたは、私に死んでほしくないのですか……?」
「はぁ!?当たり前だろッ!!!」
男の人は少し怒気を強めながら私の問いかけに答える。
「何度でも言うぞッ……!!!俺はッ……君にッ……、死んでほしくないッ!!!!!
君が死ぬとッ……俺が悲しくなッ……てッ……、泣くぞッ……!!!
だからッ……、君の事はッ、必ず、助けるッ……!!!!」
「ッ!」
誰もが私に死んでほしいのだと、私は思っていた。
でも、私に死んでほしくないと言ってくれる人がいた。
誰もが私が死ねば喜ぶのだと、私は思っていた。
でも、私が死ぬと悲しむ人がいた。
誰もが私が死ねば笑顔になると、私は思っていた。
でも、私が死ぬと泣いてくれる人がいた。
そんな風に思ってくれる人がいるのだと思い、私は涙が溢れ出す。
この男の人は私と初対面だが、それでもこの男の人は私に生きてほしいと言ってくれた。
そんな事言われたら、私……、そんなの……そんなのッ…!!!
まだ生きていたくなるじゃないッ!!!!!
私の灰色な世界に、一筋の光が差し込んだ。
そうよ!!私はまだ死ねないッ!!
この男の童貞をまだ貰っていないじゃないッ!!
生きてこの男の童貞を私が絶対に奪ってみせるんだからッ!!!!
彼女にだってなってやるんだからッ!!!!
他の女の子になんて絶対に渡さないんだからッ!!!!!
初めましての人や、大して仲良くもない人、また、別に気にもならない人にはいつも敬語だったが、気づけば私の口調は敬語じゃなくなり、いつもの口調になっていた。
「一気に上げるぞッ!!!
ちゃんと捕まっとけよッ!?!?」
「うんッ!」
今、私の事を苦悶の表情で力一杯引き上げようとしてくれているまだ名も知らないこの男に対して、私は小さな、だが確かな恋心が芽生えた。
私の事をチョロインだと言いたければ、勝手に言えば良い。
この男は、私に死んでほしくないと言ってくれた。
私が死ぬと、悲しむと言ってくれた。
私が死ぬと、泣くと言ってくれた。
いじめのせいで自殺しようと思い至ってしまうほどに人生に疲れていたのに、そこからこの男が私に「まだ生きたい」と言う思いを湧き上がらせてくれた。
そして、現在進行で命懸けで私を助けようとしてくれている。
こんなの誰だって好きになってしまうじゃないか。
私の死に、悲しんでくれる人がいる。
こんなに嬉しい事があるだろうか?
ない、と、私は思う。
16年間生きてきた今までの中で、間違いなく今日この日が1番嬉しい日だ。
「おッ……りゃあああああああああああああああああああああああッ!!!!!!!」
男の人が、私を力一杯引き上げてくれた。
引き上げられた私は、次は絶対に足を踏み外さない様にフェンスをしっかりと掴む。
「はぁ、はぁ、ふぅ……。よし!フェンス登るぞ!!」
「うんッ!」
私と男の人はフェンスを登り、無事フェンスの内側に戻った。
「はぁ………、マッッッッッッッッジで君が落ちなくて良かったぁ………」
男の人は、私が無事にフェンス内側に戻ってこれて緊張が途切れたのか、深いため息溢しながらへたり込み、私が落ちなかった事を喜んでくれる。
「あなたのおかげね。ありがとう」
私も男の人に屈託のない笑顔を向け、助けてくれたことに対して、礼を述べる。
「いや、良いよ。それよりも本当に君が落ちなくて良かったよ……」
男の人は、心底私が落ちなかった事を喜んでくれている様だ。
「今日はたまたま俺がこの下を通りかかったから良かったものの、次は助けられるか分からないからもう自殺しようとか思わないでね?」
「ふふ……、私はもう自殺しようだなんて思わないわ。生きたいと思える理由を見つけたから」
「そうか……。それは良かったよ……」
「だから……、覚悟しててね?」
「えっ?」
※
それからのお話を少ししよう。
私を助けてくれた後、名前を聞くと、彼の名前は西雲 紡希と言う名前だと言う事が分かった。
そして、私は彼の事を紡希君と呼ぶ事にした。
彼にも、私の事は結月と呼んでくれる様にお願いをした。
紡希君が、何故私が自殺しようとしていたのか尋ねられたため、私はそれに答えた。
紡希君は私の話をしっかりと聞いてくれて、私が話終わると、涙を流しながら慰めてくれた。
紡希君が「結月がいじめられていた事を打ち明ける時には、俺も一緒に居てやるよ!」と言ってくれた。
その言葉により、紡希君への私の恋心はさらに大きくなった。
廃ビルを後にした私と紡希君は、紡希君の「童貞を貰ってくれ」という約束を果たすために、紡希君のお家にお邪魔して、しっかりと紡希君の童貞を頂いた。
私も初めてで少し痛かったが、凄く良かったとだけ言っておこう。
その後、私は紡希君に交際を申し込み、紡希君は私の交際の申し込みを承諾してくて、晴れて私たちは恋人になった。
それから次の日には、私は勇気を振り絞り、私がいじめられていた事を、両親と学校の先生に打ち明けた。
勿論私の側には、紡希君が一緒に居てくれた。
私が両親や先生にいじめの事を打ち明ける時に、紡希君が私の側に居てくれて、凄く心強かった。
この時に、紡希君が私を助けてくれた事と、紡希君と交際した事を両親に話している。
両親は「結月を助けてくれてありがとう」と泣きながら頭を下げて、紡希君にお礼を述べていた。
両親が私の事をこんなに心配してくれるとは……と思い、私も声を上げながら涙を流した。
その時、両親と紡希君が慰めてくれた。
そして、勿論紡希君との交際についての許可も貰った。
私がいじめられていたという事を話し終えた後に、両親と先生は迅速に対応してくれた。
私をいじめていた彼女達は全員退学処分となり、また、私が自殺未遂まで行ったため、損害賠償が数千万円ほどが課された
また、私は今まで通ってた学校を転校する事になり、どうせ転校するなら紡希君と同じ所が良いと言う事で、紡希君の学校の転入試験を受け、無事合格。
約2年間を、紡希君と同じ学校で、今までとは比べ物にならないほどに楽しい学園生活を紡希君と一緒に過ごした。
高校を卒業後、お互い同じ4年制大学に進学し、ここでも紡希君と共に楽しい大学生活を送った。
そして大学卒業後、私と紡希君は結婚をした。
あの日に紡君と出会ってからかれこれ10年。
今では、私と紡希君との間に産まれた4歳になる可愛い娘の結愛と、2歳になる可愛い息子の紡玖、そして私の大好きな旦那様の紡希君と私の4人で、ワイワイと賑やかに過ごしている。
あの日、紡希君が私を助けてくれなかったら、間違いなく灰色の世界のまま私は死んでいた事だろう。
だけど、今はどうだ?
紡希君が私を助けてくれたから、今では可愛い娘と息子に囲まれ、そして大好きな紡希君とこんなにも色鮮やかな世界で過ごせている。
あの日に紡希君が私を助けてくれてから、私の幸福値は毎日が最高値を更新し続けている。
今、私の膝には紡玖が座っている。
そして、紡希君の膝の上には結愛が座っている。
私はその光景を見て、この普通な幸せを噛み締める。
そして、隣に座っている紡希君の肩へ頭を預け、私はこう言った。
「ねぇ……、紡希君……」
「ん?どうしたの結月?」
「あの日、私を助けてくれてありがとね……。紡希君があの日私の事を助けてくれていなかったら、この光景は見られなかった。だから今の私、すっごく幸せ。紡希君……大好きだよ……。そして、これからもよろしくね……」
「ああ、俺も結月の事が大好きだよ。こっちこそ、これからもよろしく……」
完
胡桃 瑠玖です。
ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます。
「どうせ死ぬなら俺の童貞を貰ってくれ!!」という紡希のセリフから分かる通り、この小説は本来コメディ寄りの小説になる予定でした。
ですが、結月の内面を書いてるうちに「これ……コメディ無理や……」という思考になり、それならとことんえげつない『いじめ』の描写を書こうと思い至り、こうなりました。
また、私の他の短編小説も読んでいただければ幸いです。
短編その1。
片思い中の幼馴染の好きなタイプが「経験人数100人以上」らしいので、100人斬りしようと思う
https://ncode.syosetu.com/n4130kp/
短編その2。
俺の彼女がドSに目覚めた
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短編その3。
婚約者様に「腕力が強すぎる」と言われ、婚約破棄されました
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この3作品は、全てコメディ寄りの小説です。