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三下令嬢、わが道を逝く。  作者: 波月カジマ
6/6

ちょいちょい心の声が漏れるのは仕様です

■ep6



 私はいま、ドーラの実家のフィッシャー侯爵家に呼び出されて怒られている。

 怒られている理由は、私が原因でドーラが急激に横に成長したからだという。

 先週ドーラが学園を休んだ日。体調不良は実は嘘で、本当の理由は制服のボタンが締まらなくなかったからだそうだ。

 令嬢にあるまじき醜態に、ドーラが止めるのも聞かずにお付きの侍女が侯爵家にご注進してしまったらしい。

 曰く、「ドロシアお嬢様がお友だちから頂いたお菓子を食べて、制服が入らなくなるほどお太りあそばされた」と……。


 私、言ったよ? あれは一人で食べる量じゃないって。

 お砂糖の塊だから少しずつ家族で分けて食べてねって。一人で食べたらウェスト大変なことになるよって。

 実際レイシーはご実家に持ち帰ってみんなで食べたって言ってたし、なんだったら追加の注文も貰えたから、先週お父様が届けてくれた今月分の「現物支給お小遣い」から二瓶ずつ渡したところだ。

 なのにドロシーは寮のお部屋に隠し持ってて、侍女さんに見つからないようにひとりで全部食べてしまったらしい。あまつさえ先週レイチェルと同じように1瓶ずつ追加の注文を貰って渡したばかりだ。

 追加分も一人で食べていたとしたら……ボタンが締まらなくなるのも当然である。


 けどそんなこと、ぷりぷり怒るドーラパパを前にしては口が裂けても言えない。

 あ、ドーラパパってのはドーラのお父様のことね。なんだかゴロが良かったから頭の中ではドーラパパって呼んでるの。

 そんなわけで私はいつものように、ドーラパパに最大限の謝罪の意をこめて正座スタイルで平伏しているのだった。


 すべての原因のドーラは、おろおろしながらドーラパパの横で奇妙な踊りを繰り返している。

 なんとなく分かる。あれは自分が悪いということを言うに言えないでいる感じだ。私もお母様に対してよくやるからピンときた。

 ふふっ、逃げられると思っちゃダメだよドーラ。私は私の忠告を聞かずにぽっちゃりし、なおかつその原因を言えずに、私を土下座したままにしている友だちを許してあげるほど甘くないのだ。

 さっきは口が裂けても……って言った(思った)けど、ドーラが本当のことを言わないなら私が言っちゃうんだから。

 いざ、死なば諸とも!



「閣下! 発言をお許しください!」


「か、閣下?? いや、娘の友だちなんだからそんな畏まらなくてよいぞ?

 だいたいさっきからドーラパパ、ドーラパパ言ってたじゃないか。もうその呼び方でよい」


 ちょっと怒り顔なのにくふふって笑うドーラパパ。

 緑のお目めと明るいブロンドの髪がドーラそっくりだけど、笑顔もそっくりで私も楽しくな──っていけないいけない。これからドーラのびっくりな秘密を暴露するのだ。馴れ合ったらダメ。



「ちょっ、リリーなにを言う気ですの!? 待ちなさいリリー!」


 焦るドーラ。

 ふんっだ。私がずっと正座で足がぴりぴりしてくるくらい待っていたのに、ドーラったら本当のことを言わないんですもの。

 だから全部ドーラが悪いのだ。己の罪に向き合わなかったドーラ、あなたが悪いのよ!



「ドーラパパ! 先月私はドーラに実家で作っている砂糖菓子を渡しました。四分の一ガロン瓶で2つなので、お家に持ち帰ってご家族と食べてねって。

 お砂糖の塊だから、ぜったいに一人で食べちゃダメだって。

 レイシー……アノン伯爵家令嬢にも一緒にあげたので、もしお疑いなら聞いてみてください」


 私の口をふさぎに飛びかかってきたドーラを華麗なステップで躱して……コケる。ううっ、足がぴりぴりする。ドーラもそのまま止まれなくなってソファーにつんのめっていた。

 ドーラパパあ然。ふふん、これがお宅のご令嬢の本性ですよ! いまもみんなの前では「淑女の鑑」とか言われてるけど、ドーラはけっこう子供っぽくて怒りっぽい。そのうえ甘いものが大大大好き! なのだ。



「そして、つい先週に追加で二瓶の注文を貰って渡したばかりです。合計で4瓶(約4リットル)分の砂糖菓子、ドーラパパは見たことがありますか? 無いなら今、どこにあると思いますか?」


 ドーラパパの視線がドーラのお腹のあたりを向く。ドーラが両腕をわちゃわちゃして隠そうとしているけど丸見えである。



「ドロシアお前……1ガロンの砂糖菓子を一人で食べたのか?」


「まだ少し残ってるから全部じゃないわ!」


 言ってからハッとなるドーラ。やぶへびである。

 沈黙の中、ひとしきり眉根をもんで復活したドーラパパは、ドーラのお付きの侍女さんを呼び出した。



「娘の部屋のお菓子をすべて回収してきなさい。お菓子に限らず、紅茶に入れる角砂糖まで太りそうなものは全てだ」


 悲痛な表情を浮かべてがっくりと膝をつくドーラ。さすがにちょっと可哀想になってきた。

 仕方がない。大事な友だちだから、ほんの少し助けてあげよう。



「ドーラパパ、こちらをお収めください」


 そう言って私はカバンからこんぺい糖と赤豆ジャムを1瓶ずつ取り出す。



「こちらはドーラにプレゼントした砂糖菓子と同じものです。とても美味しいので、ぜひ食べてみてください。

 おすすめの食べ方はドーラが知っているので、ドーラと一緒に食べてくださいね」


 私はばちこーんとドーラにウィンクする。片目だけとか難しいことは出来ないので、両目一緒に開け閉めした。伝わったのかドーラが笑顔で抱きついてきた。

 でも食べ過ぎは体に悪いからね。これからは私たちも見つけしだい止めるよ。


 ドーラパパも笑ってた。

 あっ、ドーラパパは怒ったこと謝ってくれました。

 それで本当のことを言わなかったドーラにゲンコツ落としてた。ドーラは涙目になってた。

 ゲンコツなんてするのうちのお父様だけだと思ってたからびっくり。もしかしたらレイシーのお父様もやったりするのかしら?


 そんなこんなでドーラパパから開放された私は、ドーラと一緒に寮に帰宅した。

 ドーラは部屋中探したみたいだけど、お菓子はこんぺい糖一粒残っていなかったみたい。

 悲しそうな表情でこちらをチラチラ見てきたから、痩せたら私とメラニーが摘む見切り品をわけて上げる約束をした。



 そしてひと月後──今度はドーラママが膨張したとクレームが来た。

 私たちは頭を抱えた。







■dasoku

さすがに5000字ペースを維持するのは無理でした。今後は適当なボリュームを探りながらやってきます。

今話の最後は「美味しいけど太らないお菓子」の緊急ミッションの導入です。

うまい具合に続けていければよいな、と思います。


あと、RTA要素なくなりつつあるのであらすじ変えるかもです。

本当は第3王子が難癖付けてAクラスに編入してくるのから逃げるために飛び級するって流れでしたが、短期間で3人組+メラニーが飛び級できる手段が思い浮かばずお流れになりました。


飛び級して小さい頃に電気アンマで撃退した幼馴染みに再会する構想があるので、どこかのタイミングで飛び級はするかもしれません。



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