指揮官はチェックメイトと呟いた
俺たちは今絶体絶命の危機にあっている。
俺たちが乗車しているストライカー装甲車は、荒野のど真ん中で燃料切れで動かない。
燃料はある、車内に燃料が入った缶が10個置いてある。
何が問題かと言えば、装甲車を取り囲む吸血ゾンビのせいだ。
荒野に隣接する多数の街から俺たちの血を求めて集まって来た、百万……否もっといるな、百数十万以上の吸血ゾンビ共。
1人の犠牲者に吸血ゾンビが数十体群がり血を吸い尽くすものだから犠牲者は干からびたミイラ状態、ミイラ状態になった犠牲者が吸血ゾンビとして起き上がり次の犠牲者を求めて徘徊する。
そのミイラ状態の吸血ゾンビの群れが、装甲車のボディーを乱打し引っ掻いているんだ。
まあ集めてしまったのは俺たちなんだけどな。
荒野に程近い所にある空軍基地が生き残れた人たちの避難場所になっているんだが、基地を取り囲んでいた数十万の吸血ゾンビの群れの圧力に、基地の内外を隔てていた塀が屈服しそうになる。
その危機を脱する為、基地憲兵隊指揮官の俺と囮になる事を志願してくれた兵士4人は、ストライカー装甲車に燃料と大量の弾薬を積み込み、吸血ゾンビ共を撃ち倒し引き連れて荒野を疾走してたんだ。
誤算だったのは基地を取り囲んでいた吸血ゾンビだけで無く、荒野に隣接する街などに屯していた凄まじい数の吸血ゾンビまで集まってしまったって事。
大量に積み込んだ弾薬は全て撃ち尽くし、残っているのは拳銃の1弾倉分の弾のみ。
こいつは俺たちの頭に撃ち込む用なんで、吸血ゾンビ共に撃ち込む訳にはいかないんだ。
積んでいたレーションで食事を済ませ、同じように積んでいた缶コーヒーで最後のコーヒーブレイクを楽しむ。
拳銃を腰のホルスターから抜いて共に戦ってくれた兵士たちに見せる。
最初に頭を撃ち抜く者を決めようとしていた時、東の水平線に太陽が顔を覗かせ空高く登って行く。
通常なら朝になる前に太陽光が届かない所に姿を隠す吸血ゾンビ共。
それが俺たちの血に引き寄せられ遮断物が無い荒野に群がっていた為、朝日を浴びた吸血ゾンビ共が次々とチリになって行く。
俺はハッチから身を乗り出し、装甲車の影にいたためチリになり損なった吸血ゾンビの頭に拳銃の弾を撃ち込んだ。
部下たちもハッチから頭を覗かせ周りを見渡す。
俺たちは顔を見合わせ誰ともなく笑い声を発した。
「「「「「ハハハハハハ」」」」」
俺は笑う部下たち1人1人の顔を眺めながら呟いた。
「チェックメイト」