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第15話 追放するものされるもの

 「パーティなんて追放されるほうが悪いのよ!!」


 「そうそう!どうせ実は有能だった~とか気持ち悪い妄想の世界に入り込んで部屋の中でニヤニヤしてる奴が多いのよそういうのは!」



 どれだけ嫌われたらこんなことを言われるのか。

 元パーティメンバーであったであろう依頼人のスカイに対して、ボロクソに言いまくる勇者の取り巻きの女性達。

 4人に依頼をしてきたときも、たしかにおどおどしていたものの、そう言われるほどのことは無いように見受けられたが・・・。

 勇者パーティが泊まろうとしていた宿屋の部屋で依頼者であるスカイが追放された理由を、直接勇者パーティに聞き取り調査をしていた4人は、元パーティメンバーからのあまりの不評具合に面食らっていた。


 「たしかに、なんか声も小さいし暗いしアレな感じだったわ」

 「まぁ正直私でも追放するかも」


 ――― ゴンッ

 


 あくまで依頼者の立場に立つべき探偵側にも関わらずあまりにも自分の意識に正直すぎるマフユに、机の下で蹴りをいれるナツメ。

 探偵業としてはただ真実を持って帰るだけが仕事ではない、依頼者が納得する答えを勝ち取ってくることが次の依頼に繋がるのだ。

 仕事とはいえど自分自身のこと以外に全くといっていいほど興味がないマフユを押しのけ、勇者の前に座るハルカ。おそらく彼女だけは真剣に依頼者の事を考えていた。


 「パーティに直接聞くこともできずに探偵に依頼してくるなんて、よほど本人は傷つく追放の形だったハズです!」

 「長くパーティを組んでいたメンバーの気持ちも分からないで、勇者がつとまるんですか!?」


 ハルカが真剣な表情で勇者の前に顔を近付けると、周りの取り巻きの女性たちが威嚇するように4人に顔を近づけ返してきたが、勇者はそれを遮るように腕を伸ばして静止する。


 「まず誤解を解くとすれば、彼に関しては、ごく短い間しかパーティにいなかったんだ」


 「あれ、そうなんだ?」

 

 意外な返答に対してきょとんとした顔で聞き返すナツメ。

 てっきり世界を救う勇者のパーティというと、長年付き添っていたようなイメージであったが、そうではなかったようだ。

 この世界はその辺を歩いていれば勇者に会うし、スライムより魔王が多い狂った世界らしいので、意外にも勇者パーティについてもギルドつぶやき掲示板のカップル冒険者アカウント並に会ったり別れたりが乱立しているのかもしれない。

 

 「どのくらい いっしょにいたんだー?」


 まるで自分が借りた部屋かのようにくつろぎながら、置いてあるお菓子を頬張りつつ、やる気のない声でチアキが尋ねる。


 「うーん、たしか3日くらいか」



 「3日ですか!?」


 「み、短いな・・・、思ってたより・・・」

 

 予想外の短さに驚きを隠せない4人。

 単純にモンスターをハントするとかではなく、ゴッドをイートするというわけでもなく、魔王を倒して世界を救おうという勇者パーティの滞在時間がわずか3日。

 序盤で突然離脱してそのまま使用した有限バフアイテムと経験値を持って行ってしまうキャラにしてもあまりに短すぎる時間である。

 

 「なんでそんな短い時間で追放してしまうんですか!?」

 「まだ強さや人柄もわからない時間じゃないですか!」


 どうしてもスカイを追放した納得できる理由がほしいハルカ。

 そうすると、勇者は苦々しい顔で、重そうな口を開いた。


 「これは彼の名誉のためにあえて言わなかったが・・・」

 「そうまでして知りたいのであれば仕方ない」


 

 「彼はその、この子たちに対する態度が・・・」


 気まずそうな顔で後ろの取り巻き3人を振り返る勇者。

 すると、話しにくそうにしている勇者の代わりに、3人が次々に口を開いた。



 「私たちを見る目がいやらしいんですよ!!」


 「しょっちゅうジロジロ見てくるし、2日目にはベタベタ触ってくるし!」


 「3日目にはお風呂やトイレにニヤニヤしながらついてくるんだ!」





 「あー・・・」


 さっきまでの勢いを治め、スッと椅子に座るハルカ。

 女性と子供への嫌がらせはハルカが一番気に障る部分である。

 微妙な表情で冷や汗をたらしながら、うーんと考え込んでしまった。


 「暗くて気持ち悪いなんてトリプルスコアじゃないの」

 「もうこれ以上別に聞きたくもないわ」

 

 「真実はある程度かくして、報酬金貰ってさっさと終わらせようよ」


 「いやそれは普通に真実話した方が本人のためじゃないか・・・?」


 既に勇者パーティに聞き取りを行う前からスカイに別に愛着がなかった3人は、これを聞いて更に興味を失い、帰ってゲスヤローから巻き上げた報酬金で暖かいスープでも飲んで早く眠りたいという表情でハルカに訴えている。


 

 「う、うーん」

 「でも、もしかしたら勘違いという可能性も・・・」


 

 「いやー、僕も彼の素性を少し調べてみたんだが・・・」

 

 部屋の中には女性が7人、さすがの勇者といえど男性が目の敵にされていた先ほどの会話には入りづらかったのか、口をつぐんでいたが、やっと話を逸らせるタイミングが来たと言わんばかりに早口で話し始める。

 

 「彼が自分で言っていたんだが、彼は数日で追放されては別のパーティに入るということを繰り返しているそうなんだ」

 「彼を追放したあと、ギルドにも事情を話して経歴を確認したから間違いない」


 

 「あー、だからあの堅物の受付嬢が簡単に情報を渡してくれたのか・・・」


 「情報だけ渡して厄介ごとは勝手に処理してくれれば都合がいいって魂胆だったのね」


 4人の冒険者登録を抹消までした受付嬢は、最初にあった時から規定に厳しそうな雰囲気は出していたにもかかわらず、聖女の面目などと理由をつけて他人である冒険者の情報を簡単に渡してきたことに少し違和感があったのか、ナツメとマフユはうんうんと頷いていた。

 すると、勇者の横から、顔を乗り出し取り巻きの3人がまた騒ぎ出した。


 「それ以外にも、自分は実は有能なんだよなーとか、勇者の活躍を奪っちゃったら勇者から3人を取っちゃうから力を隠してる とか、聞こえるようにブツブツ言ったり!」


 「ギルドで依頼を受けようとすると、お前達は足を引っ張るから無理だろ、ヒヒ!とか陰で笑ったり!」


 「注意しても、無言で後ろに下がった後、雑魚の女どもにいじめられる転生者追放系マジキチー(笑)とかニヤニヤしながら囁いたり!!」



 頭越しに文句を言いまくる取り巻き3人の下で、困ったような顔を浮かべる勇者。


 「どうしてなのかわからないが、まるで追放されたいかのように嫌われるようなことを永遠繰り返してくるんだ・・・」

 「だから僕としても追放せざるを得なかったんだよ」


 その後も繰り返し暴露されるスカイの悪行を目の前で聞かされ続け、ハルカの瞳の奥の赤色灯からはゆっくりと確実に哀憐の光が失われていった。


 

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