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第13話 やーい!無能力者ー!

「えっ・・・、 本当に能力無し・・・?」


 悲しそうな目で声を震わせながら、ハルカが恐る恐る聞き返した。

 


 「はい・・・、残念ながら・・・」


 白いローブを纏った金髪の女性が、困ったような憐れむような笑顔のまま目をそらし、無情にも4人に残酷な結果を伝える。

 横で見ていたギルドの受付嬢からは、思わずため息が漏れた。


 「ちょ、ちょっとまってよ! こんな変なもやもやしてるボールみたいなので何がわかるっての!」


 「なんか気持ち悪いし、あんまり触らないほうがいいんじゃないの?」


 怒り顔で謎の球体をブンブンと振り回すナツメと、それを横目で見つつ自分の前に置かれた同じ物に手を付けようとせず、気味悪がって一歩下がるマフユ。

 

 「これがどうなったらいいのさー?」


 ゆらゆらとヒトダマのように揺れる不思議な球体を真似するように、自分も体をゆらゆらと左右に揺らしながら、持たされたそれを目の前でしげしげと眺めるチアキ。


 「それはマナオーブというもので、潜在的に能力を持つものが触ると、持っている能力によって様々な変化を起こすものです」

 「火の能力を持つ者は燃え盛る炎のような形態となり、召喚ができるものは雄々しいモンスターのような形態。というように、そのものが持つマナの量によってより大きく、より強大なものへと変化します」

 「・・・ですが、何ら変化がないということは・・・」


 「何も能力がないということですね。 わざわざ聖女様にご足労いただいたのに、申し訳ございませんでした」


 遠慮していたのか口ごもっていた聖女の横から受付嬢が割り込み、歯に衣着せぬ物言いで直球ストレートを投げつけてきた。


 「あなた達が余りにもしつこいので聖女様に判定をしていただきましたが、能力が無いということはやはり転生者ではないということです」


 さきほど適当な冒険者登録をされた4人は、勇者や賢者、魔王などがそこらじゅうに存在するということを聞き、ではやはり転生者である自分たちにも何か能力があるはずだと、受けた依頼そっちのけでギルドの正面玄関に居座り、抗議を始めた。

 多くの冒険者たちが通る所で騒がれたのではたまったものではないと、町に来ていた王宮の聖女に来てもらい、仕方なく4人の自称転生者を判定することとしたギルド。

 女神コスモスから直接情報が与えられるというギルド本部からの転生情報に無かったとはいえ、万が一情報が漏れており本当に転生者だった場合は国間のバランスを左右する存在にも成り得る。

 が、女神コスモスの権能を体現する存在である聖女の判断によると、どうやらそれは杞憂だったようだ。

 


 「何も起こらないというのは、このオーブ自体に問題があるという可能性は・・・」


 「それはあり得ません」


 ハルカがオーブを両手でもったままおずおずと発言すると、さきほどの優しそうな態度とはうってかわって、制するように食い気味に聖女が否定した。


 「そのマナオーブは、この世界を司る女神、コスモス様が我々に与えられたもの」

 「この世界を作る核であるマナの塊であるマナオーブが問題のあるものなど、あり得ません」

 「あなた達もお会いになったと思いますが、コスモス様は・・・



 「会ってないよ」


 ハルカの言葉を食い気味で否定した聖女を、更に食い気味で否定するチアキ。


 「えっ・・・」

 

 「たしかに、異世界転生っていえば神様だか女神だかに会うっていうのがお約束な気がするけれど、会っていないわ」


 目をつむったまま頷きチアキの言葉を肯定するマフユ。


 「・・・」

 「それはおかしいですね、転生者は転生前に必ずコスモス様に会います」


 「聖女様、この者たちやはり転生者ではないようです」


 またもや聖女の横から怪訝そうな顔で4人を眺めながら、受付嬢が口をはさむ。


 「うーん・・・、たしかに前世の記憶が無く、コスモス様にもお会いしていないというのは・・・」


 「転生者を騙る不届き物の一般人かもしれません。能力もないようですし」


 迷ったように首をかしげる聖女の横で、こちらに聞こえることなど気にしていない様子で、たんたんと述べる受付嬢。


 「お前なんなんだよさっきからお前は---!!」


 ズケズケと言われまくったナツメが怒りまくりマナオーブを地面に投げつけたその瞬間


 「あっ」


 マナオーブは地面に衝突すると、まるでマナが大気に広がるかのように、光の粒子があたりに霧散し、そのまま消滅してしまった。



 「あぁ!! 女神様からの頂きものであるマナオーブを!!」


 そう叫んで受付嬢はナツメに詰め寄る。


 「何をしているんですかあなた!! 無能力の一般人のくせにこんな・・・」


 「うるせ---!! 転生者だって言ってるだろ---!!」


 とことん相性が悪いのか、言い争いを始めた受付嬢とナツメだったが、その横で小さく驚いたような声が上がり、周りのギルド職員や冒険者が、ザワザワと騒ぎ始めたのたため、お互いにいがみ合っていたナツメと受付嬢が、パッとその声の方を見る。


 「あれー?」

 「私のも何か消えちゃってるけど、なんかゾワゾワするー」

 

 「あっ、私のも消えてしまいました・・・」


 チアキとハルカが持っていたマナオーブが次々にナツメが地面に投げつけたときのように、どんどんと空中に溶けるように消えていく。


 「ほーら、やっぱり得体の知れないものには触らない方がいいってことよ」


 目の前に置かれているマナオーブからまるで危険なものを見るかのように顔を背けて離れるマフユ。



 「あーーーっ!!!」

 「あなたたち、女神コスモス様から聖女様が与えられしものを何個も何個も・・・!」


 「えー ナツメと違って私はなにもしてないよー」

 

 「私も何もしていません!勝手に無くなっちゃいました!」


 怒りの形相で歩み寄る受付嬢に、あわてて言い訳をする2人。


 「とにかく! 転生者を騙ったことも、マナオーブを壊したことも許されることではありません!!」

 「わざわざご足労いただいた聖女様の顔を立てて、あなた達が探している勇者のパーティは教えますが、それを最後にあなた達の冒険者資格ははく奪です!」

 「後ほど詳しく聞き取りをしますから、ギルドの’’外で’’待っていてください!」


 受付嬢がそう言うと、周りにいた屈強な冒険者たちがいきを合わせたように4人を担いで玄関の外に連れて行った。


 「申し訳ございませんでした、聖女様・・・・」


 そういって受付嬢が振り返ると、聖女は神妙な面持ちで、マナオーブが消失したところを眺めていた。


 


 


 



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