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第9話 四次元時空多様体

 「こ、これは・・・ 」

 「ポルターガイスト!!?」


 「キャハハハハハハハ!!」

 

 周りから聞こえるけたたましい笑い声と連動するかのように、淡い光をまとった本や薬ビンが、気絶しているチアキを支えているマフユとハルカに、自分の意思があるかのように襲い掛かる。


 「チアキ、いままでありがとう!!」


 「えぇ!?ちょっとマフユちゃん!?」


 気絶して伸びている友人を即刻見限ったマフユが手を離したため、急にチアキの全体重がハルカにのしかかった。

 ハルカがマフユの行動に驚愕している間もなく、バサバサとページがめくれがるような音と共に、飛翔物の影に押しつぶされ、2人の姿は見えなくなってしまう。

 もうもうと立ち上がるホコリに、マリーの店で嗅いだようなポーションの植物っぽい匂いが辺りに広がった。


 「あぶなかったわ・・・」


 「おおおおおい!! お前は本当に!!」


 危機一髪やり切ったと言わんばかりの満足げな表情で地面に手をつくマフユに、ポルタ―ガイストと関係なく本が1冊放り投げられる。


 「ちょっと! せっかく助かったのにあぶないじゃない!!」


 「お前なぁ、あれ見て見ろ!!」



 さきほどまでハルカ達がいた場所には、色とりどりの液体をかぶった本の山が出来上がっていた。


 「・・・ま、大丈夫でしょ。 こっちまで飛んできたときには、ほとんどスピード出てなかったし」

 「あなたが投げた本のほうがよっぽど早いくらい」


 「お前さぁ・・・」



 たしかに、部屋の中央から離れた入口付近にいた3人のところまで飛んできた時には、既にフラフラとほとんどスピードは出ていなかったため直接的な怪我はしていないであろうが、紙というものは思ったより重量がある上に、薬ビンはガラスで出来ていたため、破片が飛散していたら危険な可能性は十分にある。

 

 「で、そっちは大丈夫なの?」


 「まぁ、このくらい大丈夫・・・、さっさと見つけ出して止めさせないと、まずいことになるかもな」

 

 マフユたちと違ってポルタ―ガイストの近くにいたため、近距離で避ける暇がなかったのであろう、飛んできた物を咄嗟にガードしたため少し負傷してしまった腕を抑えつつ、ナツメは耳を澄ませた。


 「あの笑い声が聞こえるところにいるはずなんだが、全然姿が見えん!」


 「仕方ないわね・・・、後ろは見ててあげるからさっさと見つけなさい」



 未だに少し震えているが、マフユなりの精いっぱいの援護なのであろう、ランタンをもって後ろを警戒しているマフユに、少し成長を感じていたナツメが耳に集中していると、さっきハルカ達がいたほうから物音が聞こえた。


 「そっちか!!」


 「そういえばさっき笑い声はこっちで出てたわ!!」


 2人がすぐさま駆け寄ろうとしたとき、ガサガサとかき分けるけるような音を立てながら、本の山から何かを持ち上げるように、腕が1本だけ突き出てきた。


 「うっ・・・」


 いきなり出てきた腕に仰け反ってしまったマフユだったが、聞きなれた声を聞いて安堵の表情を浮かべる。


 「たすけてくださーい・・・」


 「ハ、ハルカじゃないの・・・。ビックリさせないでよね・・・」


 「お前・・・ 見捨てておいてすごい態度とるね・・・」



 何事もなかったかのようにハルカの腕を掴んで引っ張り上げるマフユにナツメがドン引きしていると、っハルカが苦しそうに声をあげる。



 「うぅ・・・痛・・・ 、 痛・・・」


 「どうした!? どこか怪我した!?」


 心配そうにかけよるナツメの前で、屈み込んでしまうハルカ。



 「いた・・・ あれ? あんまり痛くない・・・」

 

 「はぁ?」



 一応心配していたのであろう、安堵したような怒ったような反応を見せながら、支えていたハルカの体を投げ捨てるマフユ。


 「思ったより軽いものというか、小さなものしか飛んでこなかったからでしょうか・・・」


 パタパタと体についたホコリをはらいつつ、立ち上がるハルカを横で見ていたマフユは、はっとした顔と共に、一つの回答を導き出す。


 



 「・・・ もしかして、そもそも小さなものしか動かせないのかしら」


 「キイイイイイイイイイィィィィ!!」




 マフユが思いついたことをそのまま口に出した瞬間、少女が大好きなお菓子を奪われた時のような声を響きわたり、部屋中の小物が光を纏いながら浮かび上がった。


 「なーんですぐ煽るのお前は!!」


 「煽ったわけじゃないわ!! 考察してただけよ!!」


 「ちょっと!! いっぱい飛んできてます!!」


 本や薬ビンの他にも、なぞの袋や木の枝。 あげくにはホコリの塊などが、3人めがけて飛んでくる。

 大きな物は飛ばせなくとも、大量に投げつけられた後、すぐに浮き上がり再度飛んでくる圧倒的物量のせいで、体力を消耗していた3人が全てを避けるのは不可能だった。


 「くっ、 こ、これはちょっと きっついな・・・」


 部屋の中を走り回り、できるだけ避ける3人だったが、次から次へと飛んでくるポルターガイストに次第に隅に追い詰められ、いよいよ動くのが難しくなったと思ったその時、何かを発見したマフユが大きな声をあげた。


 「ちょっと!! あれ見て!!」


 「どうした!!」


 「部屋の中央!!」


 飛んでくるブサイクな顔のぬいぐるみを殴り飛ばしつつ、謎の植物の種の雨を掻い潜り、ナツメが部屋の中央を見ると、まわりを飛び交っているものと同じ淡い光をまとった半透明の妖精が、腕らしき部分を動かしているのが見えた。

 慌てたような動作でマフユのほうに両腕を突き出すようなポーズをとると、周辺を飛び回っていた物たちが急に向きを変え、マフユのほうに飛んで行く。


 「やばいマフユ避けろ!!」


 「ちょっと! これまっ・・・


 部屋の隅に追い詰められていたマフユに、一気に大半の物が飛び掛かり、なすすべなくガラクタの山に埋もれてしまった。


 「いったん、廊下に逃げるぞ!!」


 「あれってモンスターなんでしょうか!?」


 ナツメに手を引かれて廊下に走りながら中央で笑い転げている妖精に目を向けるハルカ。

 するとまた慌てたように妖精が起き上がり、ハルカめがけて手を振りかぶる。


 その瞬間、またもや周囲のポルターガイストが慌ただしく動き出し、廊下に逃げるハルカの背中や腕に直撃した。


 「あっ!!」

 

 腕に本が直撃した衝撃で、さきほどから持っていた何かを落としてしまうハルカ。

 するとハルカは、何を思ったのか、大量の飛翔物が飛んでくるなか、必死に手を伸ばして落とした何かを拾い上げたあと、それを庇うように抱いたまま、廊下の手前でうずくまってしまった。


 「おい! 何やってる!? 」

 

 ハルカの後ろから飛んでくる物を掻い潜りながら、必死にハルカに手を伸ばすナツメ。


 ( くそ!! 間に合わない!! )

 

 蹲るハルカの上から嵐のように色々なものが降り注ぎ、廊下にいるナツメも、次々飛んでくるポルターガイストに押され、前が見えなくなりつつなったその瞬間。




 「キッ・・・」


 っという小さな悲鳴と共に、そこだけ時が止まったように全てのポルターガイストが空中で静止する。

 手を前に向け、守りの姿勢をとっていたナツメが止まった物音と衝撃に気付き、ゆっくりと目を開けると

 部屋の中央で慌てたように手足をジタバタさせる妖精と、それを後ろから鷲掴みにしている、ホコリまみれのチアキがいつものだるそうな目でこちらを見つめていた。






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