こちらが前菜の「プロローグ」になります。
「ようこそ!異世界探偵事務所へ!!」
やたら元気のいい名乗りと共に、豪快に開けられたドアごとふっ飛ばされ、地面に倒れ伏しながら思った。
――――やっぱりやめておけばよかった。
重くのしかかるドアと、その上で頭を抱えながらもがいている、今しがた異世界再転生させられそうになった相手である犯人を見上げながら、体の痛みとこの状況に顔を引きつらせていると、室内から慌てたようにドタドタと駆け寄ってくる足音がした。
「せっかく修理したのに何やってんのよ!!このバカ!!」
開口一番にドアの心配だけをしながら出てきた、冬の海のような冷たさを感じさせる青髪の少女は、彼女にとっては客であろう自分や、おそらくは同僚であろう犯人のどちら助けるでもなく、むしろ愛するドアの憎き仇敵かのように、不機嫌そうな双眸でこちらをただ睨みつけている。
「しかたないじゃん!おもいっきり開けたらドアごと外れたんだもん!」
どこがどうしかたないのか分からないが、夏の日差しのような煩さを感じさせる赤髪の少女は、なぜかこちらも不機嫌そうに頭をさすって、ドアを足場に起き上がった。
そしてどうやら頭をうったからなのか、元からなのか、足下に踏みつけているこちらのことは全く気にならないらしい。
体の上でいがみ合っている少女達を見上げながら、青髪の少女が乗り上げてきた分、さらに増えた重みに痛みが追い付いてきたところで、より慌てた足音と共に、待ちわびた言葉が聞こえた。
「大丈夫ですかぁー!お客さまぁ-!!」
「きゃあっ!!」
残念ながら、勢いよく発せられる気配りの心は、玄関を出た直後に倒れていたお客様を下敷きにしているドアの位置まではカバーできなかったようだ。
春の朝露のような穏やかさを感じさせる緑髪の少女は、小さな悲鳴と共に、その風の速度を重みに変えつつ、下敷きになっているドアに向かって壮大にずっこけた。
「すっ、すみません!お客様どこかお怪我は!?痛いところは!?」
こけた痛みなど意に介さず、緑髪の少女はドアに乗ったまま、心配そうにこちらを見つめている。強いていえば君たちのおかげで全身が痛い。
「とりあえず、はやくどいてくれ―――」
そう言いかけたとたん、さらなる重みと共に、願いは遮られた。
「お兄さん、転生者なの?」
秋の空のような奔放さを感じさせる黄髪の少女が、もはやドアがあろうがなかろうが関係ないくらいの態度で、頬杖をついて顔を覗き込んでいた。
「私たちも転生者なんだけど、なんのスキルも持ってないの」
「だから思いつきで探偵初めてみたんだけど、それでも依頼する?」
――――やっぱりやめておけばよかった。
初めて小説を書きます!
この小説が面白いと思っていただけた場合は
ブックマークと、↓の評価をしていただけると
作者が夢の高額納税者に近づくので、結果的にはあなたのおかげで多くの恵まれない子供たちの命が助かります。