おねぇ聖女が凄すぎて、歴史書には残すことができません!
私はエドガー・バルマー。正直、今起こっている事態が理解できない……
「貴方、エドガーっていうの? 美味しそうだわぁ」
バルマー家は聖女の護衛を担ってきた名家。戦乱が起きた時に聖女はどこかに現れる為、先祖代々伝わる神具を使って聖女を見つけてきたのだが……この目の前の人物が聖女なのか?
「あ、自己紹介がまだだったわね。マ・リ・アって呼んで。ねぇ? 聞いてるの?」
王国の危機において現れるという聖女。過去の歴史において殆どの戦争に聖女は現れている。それを知っているのは、バルマー家に受け継がれてきた「聖女の記録書」を読んだからなのだが……
「でぇ~、私に何か用事があるのかしら?」
指を口に咥えながら私にしなだれかかってくる人物は、どう見ても筋肉の盛り上がりが凄い……それ以前に髭が生えてる。しかし、神具はこの人物が聖女だと示している。だが、男じゃないか……
◇
今、私はマリアを連れて戦場に立っている。しかし、マリアの格好は一体何なのだ……スカートが短いオフショルダーのパーティドレスを着ている? なぜ、胸に布が必要なのだ……
「すっごーい! みんなぁマッスル~!」
マリアがよくわからない奇声を上げながら、太い腕で自分で自分を抱きしめると、青白い光が戦場に溢れた。ケガ人が治っていく……明らかに聖女の奇跡だ。認めたくはないが……
奇跡を受けて人が集まってきたが、マリアをみると愕然とした。それが正常な反応だ。中には錯乱して剣で襲い掛かった兵士もいたが、股間を鷲掴みにされてうずくまっていた。見たくなかった……下っ腹がキューっとなる……
「マリア、みんなを元気にしちゃうわ! もし戦った後も元気があったら、夜も私とハッスルよ~!」
本人は妖艶な顔をしているつもりなのだろうが恐ろしい顔だ……その舌なめずりする様子は兵士たちに恐怖を与えた。その反面、放たれた青白い光によってどんどん力が溢れてくる……残念で仕方がない……
◇
戦争の結果は我々の大勝利だった。兵士全員が全力で戦った。本当に皆必死だった。護衛任務の私でさえも槍を投げまくった。夜に力を残さないように……
私は過去の歴史で戦争に聖女が現れない時の真実を知った気がする。できれば「聖女の記録書」にエドガー・バルマーの名前を残したかったが、今回の奇跡の記録は闇に葬る事とした……おそらくご先祖様がやってきたように。この事は決して書き残す事はできない。夜の犠牲になった兵士たちの為にも……