ダンジョンマスターとの戦い
「起きて……起きてよ……」
「うん?」
ライトが目を開けると、涙目のエレキテルが膝枕していた。
「ここは……どうなったんだ?」
「たぶん、ダンジョンの最下層だと思う。気づいたら僕たちはここにいたんだ」
それを聞いて、ライトは身体を起こす。すると、なぜか切り落とされたはずの右手が再生されていることに気づいた。
「あれ?なんで手がくっついているんだ?」
「わかんないけど、あの時に、切り落とされた手も光の霧になるのを見たよ」
「そうか。『光化の指輪』は実体を光の幻体にして、また実体に再構築する。その際、傷とかも元に戻るのか」
改めて、指輪を身に着けてよかったと思う。
落ち着いて周囲を見渡すと、黒い石で構成された神殿のような作りになっていた。
「不気味な雰囲気だな」
「たぶん。ボスがいるんだと思う」
エレキテルの声にも恐怖がまじっている。
「どうする?脱出目指して階段を探すか?」
「だめみたい。上に上がる階段も転移魔法陣も見当たらなかったよ。つまり、ボスを倒すまで後戻りできないような仕組みになっているんだと思う」
それを聞いて、絶望してしまう。
「そんな……それじゃ、どうすれば」
「ボスを倒すしかないよ。大丈夫。君のことは私が守って見せる」
エレキテルがトンカチを振りかざす
「それは?」
「ふふ。ボクの家の家宝。『巨人の槌だよ。伝説の勇者マサヨシに従ったメカマンの子孫であるボクの家に伝わったんだ」
「なんだって?それじゃあ君も英雄の子孫なのか」
ライトが何か言いかけたとき、無数のコウモリが天上から降ってきて、二人に襲い掛かってきた。
「うわっ!」
「きやっ!」
コウモリが一か所に集まり、人型になっていく。すると、マントを着た男が現れた。
「いまいましき勇者に倒され、この地に封印されて400年。やっとわが復活の贄にふさわしい冒険者が来たか」
男はニヤリと笑うと、二人を見比べる。
「お前は何者だ!」
エレキテルが気丈に問いかけると、男は気障に一礼して名乗った。
「我が名は六魔鬼の一人、闇羽のドラグル。この『漆黒の穴』の主なり。貴様たちの血を貰おう」
ドラグルは再び身体を黒いコウモリの集団にすると、襲い掛かってきた。
「くっ!}
エレキテルはビッグハンマーを掲げると、果敢に迎え撃ち、黒いコウモリたちを撃ち落とした。
「お、俺はどうすれば?」
「明りをお願い!こんなに暗いと、良く見えないよ」
「わ、わかった。『光明』」
ライトの手から光の玉が発生し、上空に上っていく。あたりは昼間のように明るくなった。
それを見て、コウモリたちの動きが鈍くなる。。
「ちっ。光魔法の使い手か。だが勇者でもないかぎり、何もできまい」
ドラグルは、ライトを無視してエレキテルに攻撃をしかける。その体から何十もの黒いカッターが放たれ、彼女に襲い掛かった。
「このっ!」
エレキテルは思いハンマーを振り回し、必死に撃ち落とすが、完全には回避できずにあちこち切り裂かれて傷だらけになった。
「このままじゃまずい!なら、グラビティショット!」
エレキテルはハンマーを地面に叩きつけて、周囲一帯に高重力のエリアを作る。
しかし、コウモリたちは天上に張り付いてエリアから脱出した。
「無駄だ。その武器は地属性のもの。地面に接していない物には効力を及ぼさぬ」
「くそっ!降りてこい!」
エレキテルはハンマーを振り回すが、ドラグルは嘲笑った。
「これ以上血を流させるのはもったいないな。お望み通りおりてやろう」
コウモリたちは十字架の形をつくり、急降下してくる。そしてエレキテルのハンマーをかわすと、彼女の後ろに回った。
「えっ?」
次の瞬間、コウモリたちによってエリキテルの身体が持ち上げられる。ふいをつかれ、ビッグハンマーを落としてしまった。
「闇技『十字架絞り』ふふふ。一滴残らず血を吸いつくしてやろう」
背中の十字架に無数の牙が浮かび、エリキテルの身体に突き立てる。
「ライト君……逃げて……」
エレキテルが弱弱しくつぶやく。
「くそっ!」
ライトは「光明」の玉をコウモリたちにぶつけるが、ただ照らすだけで何の意味もなかった。
「無駄だ。ただの光など無意味」
元の姿に戻ったドラグルの高笑いが辺りに響き渡る。エレキテルの身体からどんどん血が失われていった。
「ふふふ……勇者亡き今の時代、もはや我ら魔族を脅かすものはおらぬ。力を取り戻したら地上に復活し、我が新たな魔王になるのだ」
勝利を確信したドラグルを睨みつけながら、ライトは必死に考えていた。
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