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魔法学園入学

そして、魔法学園入学の日を迎える。


「……というわけで、皆様、セントバーナード王国を担う若き貴族として、学業に恋愛にと励んでください」


クーデル王子の新入生挨拶に、女の子たちから歓声が上がった。


「俺たちはAクラスか」

「兄上たちと一緒。うれしい」


学園の可愛い制服を着たホリーが抱き着いてきた。


「いい加減ボクも腹をくくらないとね。いい、ライト君。しっかりホリーちゃんを守るんだよ」


同じくエレキテルも合流してくる。


「ホリーを守るって?」

「王子はともかく、他の奴らはちょっと問題があって……まあ、おいおい説明するよ。とりあえず入ろう」


教室に入ると、女生徒に囲まれているクーデルが目に入った。


「やあ、みんな来たね」

「王子は相変わらずだね」


ハーレム状態の王子を見て、エレキテルが呆れる。


「ボクの生きがいは、若い女の子と触れ合うことなんだ」


鼻の孔全開で開き直る王子だった。


「みんな、紹介するよ。彼が二代目勇者のライト君と聖女ホリー嬢だ。皆、仲良くしてくれ」


王子が告げると、教室がどよめいた。


「あれが噂の勇者か?たしかに強い魔力を感じる」

「で、でも、それより、隣のあの子……可愛い!」


男子生徒の視線がホリーに注がれる。たちまちホリーの周囲に集まってきた。


「アーノルド・シュワルツ侯爵子息です。父は筆頭宮廷治療師としてこの国を支えております。聖女ホリ―様。一緒に魔術に励みましょう」


眼鏡をかけた線の細いエルフ美少年が声をかけてくる。


「わいはピーター・ピエール男爵子息や。あんさん、新領地を与えられたんでしたっけ?わいと付き合いまへんか?うちはセントバーナード王国一の大商人さかい」


ぐるぐる眼鏡のイケメン芸人みたいなドワーフ少年が、変な関西弁で話しかけてきた。


知らない男たちに囲まれて、人見知りするホリーが切れてしまう。


「ええい!離れろ。このチ〇〇スども!むぐっ!」


放送禁止用語を使われる前に、ライトが慌てて口をふさいだ。


「す、すいません。妹はちょっと人見知りするので、ごめんなさい」


人込みをかき分け、一番後ろの席にホリーを座らせる。ホリーはずっと不機嫌な顔をしていた。


「もう、なんなの?」


プンスカと怒るホリーを、隣に来たエレキテルがなだめる。


「予想どうりだね。これがヒロインの宿命かぁ。彼らも必死なんだよ。この魔法学園で結婚相手見つけないと、玉の輿にのれないからね。数十年ぶりに新しく領地を与えられたホリーちゃんなんか、これ以上ないくらいの結婚相手だもん」


それを聞いたホリーは、ライトに抱き着いた。


「兄上、すぐ結婚しよう」

「おいおい。俺たち兄妹だからな」

「義理、でしょ。何の問題もないよ」


エレキテルまで参戦してきて、ライトを責め立てる。


「キミが悪いよ。ホリーちゃんの気持ちは固まっているのに。いい加減ホリーちゃんの好意を受け入れてあげれば?」


それを聞いて、ホリーはうんうんと頷く。


「そういわれてもなぁ。そりゃホリーは可愛いよ。でもずっと妹としか思ってなかったわけだし……」


煮え切らないライトに、ホリーは闘志をもやす。


「兄上に振り向いてもらえるように頑張る」

「頑張れ。そうなればボクも安泰だ。あとは穏便にライト君との婚約を破棄すれば……あれ?なんだろう、この気持ちは。ボクは二人を応援するんだよね?」


複雑な心境になるエレキテルだった。





「オラオラ!てめえら邪魔だ!どけ!」


突然、そんな声がして、赤毛の野性的な美少年が入ってくる。


「なにあれ?」


顔をしかめるホリーに、エレキテルが説明する。


「エドウィン・マーカス伯爵子息。軍務大臣の息子で、たしか騎士の資格を得ているんじゃなかったかな?はぁ。きたよオラオラ系。乙女ゲームの開発者って何考えてるんだろ。あれじゃただの粋ったお子様ヤンキーだよ」


ため息をつくエレキテル。


何事かと振り向いた生徒たちは、少年に続いて何人もの貴族令嬢が入ってくるのを見た。


「だれだ?彼女たちは」

「見かけない子だけど、もしかして他国の留学生?」


女子生徒たちは、まるで侍女のように教室の入り口に並んだ。


「セレニティ王女様のおなり!」


ドアが開かれ、金髪ツインテール美少女が入ってくる。

そのあまりの美しさに、生徒たちは言葉を失った。


彼女は女王のように教壇にたつと、自己紹介をした。


「はじめまして。セインバーナード王国の皆様。私はグローリー王国第一王女、セレニティ・グローリー。あなた方に会えてうれしく思います」


優雅に一礼する。セレニティはただ現れただけで、教室の視線を一瞬ですべて集めてしまった。

セレニティはつかつかと進むと、ライトとホリーに目もくれずに王子の前に進む。


「セレス姉さん……?」

「どうしたの。その金髪は?何があったの?」


そう問いかける二人を無視して、セレニティはクーデルに笑いかけた。


「初めまして。あなたがクーデル王子ですね。私はセレニティ・グローリーと申します。この度のご婚約の申し出、誠にありがとうございます」


にっこり笑って手を差し出してくる。


「あ、ああ」

「よき王妃になれるよう努めますわ。それではごきげんよう」


握手した後、セレニティは優雅に一礼して去って行った。


「ほ、本当にセレス姉さんなのか?どこか違う感じがする」

「無視されちゃった」


違和感を覚えるライトに、落ち込むホリー。


「え、えっと、彼女はたしか主人公であるホリーちゃんのよき理解者になるはずなんだよね。悪役令嬢、つまりボクの悪行を王子に告発する役を担うはずなんだけど……」


ある意味、自分の直接の破滅のきっかけをつくる人物の登場に、エレキテルは警戒感を強める。

そしてクーデルは、必死に握手した手をこすっていた。


「王子、どうしたの?」

「い、いや、バラのようないい匂いだったんだけどね。握手した時に一瞬腐ったドブみたいな香りがしたんだよ。それでなくともあの香水の匂い……うげっ。あれじゃビ〇チじゃねえか」


人を顔ではなく匂いで判断するクーデルは、どうやら香水を使う行為はド派手に飾りたてている成人女性を思い浮かべるらしい。幼い少女が好きな彼とは、あまり相性がよくないようだ。


「いやだぁ。あんなのと結婚したくない。ホリーちゃん、エレキテル、どっちでもいいからボクと結婚してくれ!」

「だが断る」

「〇ン〇スは寄って来るな!」


二人にしばかれるクーデルだった。



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[良い点]  チ○○スというパワーワード。
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