護衛騎士エドウィン
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グローリー王国の諸侯たちは、新春の挨拶のため領地から王都にやってきた。
「婚約成立とはめでたい」
「南のセントバーナード王国と我が国は犬猿の仲だったが、これで援助を受けられるかもしれぬ」
王都との交易が途絶えて困っていたのは彼らも同然である。流通に乗せられなかった野菜は腐って無駄に廃棄され、不景気が国全体に蔓延していた。
そんな中、ようやく雪が解けた街道を通ってやってきた諸侯に伝えられたのが、グローリー王国の王女セレニティと、セントバーナード王国の王子クーデルとの婚約だった。
それを聞いて贈り物をもってやってきた諸侯は、王都を見て愕然とする。
「な、なんだこれは?」
「これが光のオーブに守られた王都だと?まるで廃墟ではないか」
彼らがみたものは、王都のあちこちに転がる腐乱死体だった。
やってきた貴族は、泣きながら穴を掘っている家族に尋ねる。
「何があったんだ?」
「何がですと!王のせいで!私の子供に何の罪があったというのですか!」
その男は泣きながら訴える。シャイン一族を追放したせいで、その管理をするものがなくなり、冬になると王都は雪に閉ざされた。オーブに頼り切って何の準備もしなかった王都は、薪不足と食糧不足に襲われ、疫病により壊滅的な被害を受けたのだった。
「シャイン家を追放するとは、なんという愚かなことを……」
話をきいた貴族は絶句するが、内心でニヤリと笑っていた。
(ふふふ……王の力はかなり落ちていると見える。今まで高い上納金を要求されていたが、今こそ我ら地方貴族の発言権を強化するチャンスだ)
皮算用をする貴族の前で、その男は大きな咳をする。
「ごほっ!」
「汚い!き、貴様!平民の分際で!」
男のつばがかかり、貴族は激高する。連れてきた騎士に命令を下した。
「こやつを斬れ!不敬罪だ!」
「し、しかし王都の民は国王のもの。我らが勝手に処断するわけには……」
躊躇する騎士に、貴族は重ねて命令する。
「かまわぬ。王都の様子を見ると相当に王の力も落ちておろう。我らを処分できるほどの武力も権力もはもはやないに違いない」
「は、はっ」
騎士は意を決して男に斬りかかる、栄養不足と病気で弱っていた男は、あっさりと切り殺された。
「何するんですか!」
「うるさい!」
.父親を殺され、泣きながらつかみかかってくる少女ージャンヌは、貴族に殴り倒された。
「ごほごほ……!」
「貴様も病気か!近寄るな!」
咳き込む少女をみて、貴族たちは離れていく。
「ごほごほ……許さない。勇者も貴族も王もすべて復讐してやりたい……」
暗い呪詛をあげるジャンヌだった。
セレニティ・グローリー王女を乗せた馬車が、グローリー王国を出発していく。
何人もの貴族の子女が、彼女には侍女としてつけられていた。
「殿下?なにか御用はありませんか?」
「なんでもおっしゃってくださいね」
侍女からそう労わられるが、彼女の心は晴れない。
「いえ……大丈夫ですよ」
気丈に笑って侍女を下がらせたセレニティは、馬車の中で物思いにふける。
(クーデル王子様とはどのようなお方なのでしょうか?いや、いけない。私の両肩にグローリー王国の運命がかかっている。精一杯お仕えして、わが故国を支えてもらわないと)
必死に自分に言い聞かせるが、心の中は不安でいっぱいだった。
馬車は無事に国境地帯に差し掛かり、セントバーナード王国からの迎えの騎士隊に引き渡される。
「セントバーナード王国騎士エドウィン・マーカスだ。俺があんたを魔法学園まで護衛することになった。おとなしくしてな」
無礼な挨拶をしたのは、炎のような真っ赤な髪をした野生的な少年だった。狼の獣人族である。
「無礼者!グローリー国の姫君に失礼ですよ!」
侍女がたしなめるが、少年は顔をしかめる。
「立場をわきまえろ。お前は人質も同然なんだぜ」
「なっ!」
侍女は色めきたつ。
「だってそうだろうが。国を継ぐべき第一王女ともあろうものが他国に出されたんだぜ。人質以外の何の意味がある」
エドウィンはそういってあざける。女性が家に残るセントバーナード王国の文化ならではの偏見だったが、それはセレニティの心を深く傷つけた。
しかし、彼女は我慢して頭を下げる。
「……侍女が無礼をしました。マーカス殿にはよろしくお願いします」
エドウィンは彼女を見ると、ふんっと鼻を鳴らした。
「そうそう。そうやって立場をわきまえていればいいんだ。魔法学園でも調子にのるんじゃねえぜ」
そういい捨てて、警備に戻っていく。
「なんという無礼な者なのでしょうか!」
「……これは、覚悟しておいたほうがよいでしょうね」
改めてセレニティは気をひきしめるのだった。
「まったく、親父はなんだってこんなつまらない任務を俺に命令したんだ。お姫様の護衛なんて何の手柄にもならん。どうせなら、魔物討伐とか……」
エドウィンは不満をもらしている。彼は軍務大臣の息子で、自分の武勇に自信を持っていた。なんとか武勲を挙げて出世したいと思い、父親に願い出た結果、セレニティの護衛任務を申し渡されたのである。
「マーカス伯爵家の名を貶めぬように、しっかりと護衛役を果たせ」
そういって父親から送り出されたのだったが、激しい気性をもつ彼に穏やかであるべき護送の任務は性にあわなかった。
「こうなったら、さっさと送り付けて魔物退治の任務を新たに受けよう」
そう思った彼は、必要以上にせかして旅を急いでいく。計画を無視して旅をつづけた結果、町をつなぐ街道の中心で夜を迎えてしまった。
「止まるな。進め!」
「エドウィン殿。もう無理です。兵士たちも疲れ切っています。どこか泊まるところを探しましょう」
若くて血気にはやるエドウィンを、年配の騎士である副隊長が制止する。
「もっと急がせればケーフタウンの町までいけるだろう」
「これは軍事行動ではないのですぞ。早く進むことに何の意味もありません。その結果、殿下の身に何かあれば本末転倒ではありませんか」
そういわれて、エドウィンも言葉につまる。
「なら、どうすればいいんだ?」
「少し先にイナリ村があります。予定外ですがそこに泊まりましょう」
そういわれて、しぶしぶ従うのだった。
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