平穏な日々
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一か月もすると、領主の館が完成し、ポツポツと民家の建設作業が始まる。
それに伴い、ますます暖かくなり、春が近づいてきた。
農業地では麦が蒔かれ、本格的な農業が始まる。
そんな時、ライトとホリーはエレキテルに呼び出され、泥だらけの農地に来ていた。
「なんでこの畑はこんなに水はけが悪いんだ?」
「わざとしているんだよ。あのさ、勇者マサヨシって異世界からきたんだよね」
エレキテルの言葉にライトは頷く。今では半ばホラ話とされているが、確かに勇者マサヨシは異世界から召喚された者だといわれていた。
「たぶんマサヨシが日本人なら、冒険の旅でアレを探したはず。ねえ、その『勇者の袋』に『コメ』って名前の種が入ってない?」
そういわれて、ライトは袋をあさってみる。奥の方に『コメ』と表示された種があった。
「これのこと?」
「そうそう。これ!やった!!」
エレキテルは茶色い粒を見て、狂喜乱舞していた。
「これを蒔けばいいのか?」
「ちょっと待って。その前に、ホリーちゃん、この泥畑―田んぼに『落雷』を流して」
「なんで?」
ホリーは首をかしげる。
「昔から、雷が落ちた田んぼは稲がよく育つといわれていたんだ。雷のエネルギーで空気中の窒素が化合物になって、それが良質の肥料に……」
延々と説明されるが、ライトやホリーには何のことかわからない。
「とにかくやってみる。『落雷』」
ホリーの手から落ちた雷は、田全体に広がって行った。
「あとはこれを発芽させて植えれば……秋が楽しみ」
半年後を待ち望むエレキテルだった。
田を作ったエレキテルは、次に王子に頼み込む。
「王子には、これを探してほしいんだ」
エレキテルは植物の絵を差し出す。それは細い木のような節くれだった茎をもち、線形の葉をもつ植物だった
「なんだい?これは?」
「サトウキビという、甘い匂いがする植物だよ。これから砂糖が取れるんだ」
それを聞いて、王子は興味を持った。
「砂糖って、グローリー王国の特産品じゃなかったかな。たしかテンサイとかいう植物からとれる汁が原料で、寒い地方でしか栽培できないって聞いたけど」
「もちろんそうだよ。でも、このサトウキビは暑い地方に自生していて、この茎から砂糖が取れるんだ」
この世界ではいまだ砂糖は高級品である。時に冬になるとグローリー王国との交易が滞るので、セントバーナード王国では不足していた。
「わかった。探してみるよ」
風の魔法を使って島中から匂いを集め、甘い匂いがする場所を捜索する。
「あった!これだ!」
持ち帰られたサトウキビは、農地で栽培される。こうしてシャイン島の開拓は順調に行われるのだった。
シャイン島の開発にも目途がたち、魔法学園に入るために王都に帰る日が近づいていたころ、ライトはエレキテルに呼び出される。
「ライト君。ちょっと付き合って」
「いいよ」
気軽なノリで返事したライトに待っていたのは、ジャングルを突き進む過酷な旅だった。
「い、いったいどこまでいけばいいんだ?」
「もうちょっと」
真剣な顔をしたエレキテルは迷いなく進んでいく。木を切り開きながら進むと、やがて大きな洞窟が見えてきた。
「目的地はここか?また新たなダンジョンかぁ。今から探索するのか?」
「ううん」
エレキテルは首を振ると、洞窟の天井を指さす。
「いい、ライト君、この洞窟の入り口を『光線』で破壊して、誰も入れないようにして」
「なんで?」
「いいから!」
怖い顔をしたエレキテルに押されて、ライトは素直に従う。
「わかった。『レーザー』」
洞窟の天井を光線で穴をあけて、岩崩をおこさせる。
「とどめだ。グラビティショット!」
崩れた岩をビッグハンマーで砕き、入口は完全にふさがれた。
それを見て、エレキテルはほっとする。
「ふう。これで安心だよ。これでもう闇蛇シーサーペント復活イベントは起こらないよね」
「ときどきエレキテルは変なことをいうなぁ」
エレキテルに対して、ライトは首をかしげていた。
「兄上、最後に海で遊ぼう」
王都に帰る前日、ホリーがじゃれついてきた。
「そうだな。海岸で遊ぶか。帰ったら忙しくなるしな」
魔法学園に入ったら、あまり相手してあげられなくなるかもしれない。そう思ったライトは、ホリーに付き合ってあげることにした。
「どうせなら、皆で遊ばない?」
「ボクもご一緒するよ。他にも若い子たちを集めて、バーッとやろう」
エレキテルとクーデルも参加してくる。
「決まりですな。皆様の送別会を開きましょう」
セバスチャンの手配で、海岸にパーティの準備が整えられるのだった。
「えーっと。いつもみんな頑張ってくれてありがとう。今日は仕事を忘れて、遊ぼう」
ホリーの挨拶に、開拓民の若者は歓声を上げる。
「今日は泳ぐぜ!」
「競争だ!」
若い男たちはふんどし一丁になって、海に入って行った。
「やーね。下品」
「……でも、気持ちよさそう」
若い女の子たちはそれを羨ましそうにみている。この世界の海水浴とは海辺の静かなところで静養するといったもので、特に女子には泳ぐという文化がなかった。
「うーっ。私も海に入りたい。でも……」
葛藤するホリーの肩を、エレキテルが叩く。
「ふふ。こんなこともあろうかと……ちょっと来て」
ホリーはエレキテルに連れていかれる。
戻ってきたホリーは、満面の笑みでライトの前に立った。
「どう?兄上?」
「ボクも負けないよ」
ホリーは清楚な白いワンピースで、エレキテルは大胆なパレオを着ていた。
「ふ、二人ともなんて服着ているんだ……は、はしたない」
そうは言うものの、二人の姿を見てライトは真っ赤になっている。
「くんくん……この濃密な肌の匂いは……ま、まさか裸になっているのか?ヒャッハー!」
その隣で、なぜかクーデルが大喜びしていた。
「裸じゃない!ええい!この変態王子め。これは水着っていうの。女性が泳ぐ時の服なの!」
真っ赤になったエレキテルは、ふらふらと寄ってきたクーデルをしばく。
「水着か。いい!これを国中に広めよう。おーい」
クーデルは、あたりにいた女の子たちに呼びかけた。
「お、王子、なにか御用ですか?」
「いや、エレキテルが良いものを発明してくれたんだよ。皆もこれを着て泳ごう」
そういわれて、女の子たちは真っ赤になる。
「は、恥ずかしい、でも……」
「王子のご命令だもんね。それにみんなでやれば怖くない。エレキテル様!」
エレキテルは、覚悟を決めた女の子たちに取り囲まれる。
「わ、わかったよ。この際みんなで泳ごう」
「わーい!」
海岸は水着をきた女の子たちに埋め尽くされるのだった。
「天国だ……僕は今まさに天国にいる」
クーデルは大勢の女の子の肌の匂いを嗅いで、恍惚としている。
「ええい!まてまて!待つのじゃあー」
「きゃぁぁぁぁぁ!王子!おたわむれをー!」
ふんどし一丁になって追いかけてくる王子に、女の子たちは歓声をあげて逃げ惑うのだった。
「兄上、あれやろう。追いかけて!」
誘ってくるホリーだったが、ライトは首をふる。
「さすがに、あそこまで本能むき出しになれないよ」
「確かに」
クーデルは鼻の孔全開で女の子に迫っている。貴公子が台無しだった。
「あはは、なら、これをやってみる?」
エレキテルが取り出したのは、流線型をした板のようなものである。
「これ、どう使うんだ?」
「見てて」
エレキテルは板を持つと、沖へと泳いでいった。
そして大きな波が来ると、板を波の上にのせて自分がその上に立つ。
「なんだあれ!」
「かっこいい!水の上に立っている!」
男も女も、ドワーフもエルフもみんな注目している。
やがて華麗に波に乗ったエレキテルは、泳いで戻ってきた。
「す、すごい」
「どう?これが『サーフィン』って遊びだよ」
楽しそうな姿をみせられて、ライトもホリーもやってみたくなる。
「やりたい!」
こうして、彼らは海水浴を堪能するのだった。
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