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シャイン島

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「ホリー・シャイン子爵公女よ。シャイン島の領有を認める。グローリー王国からの避難民を引き連れ、ただちに開発に向かうべし」

「勅命、謹んでお受けいたします」


うやうやしく領地拝領証明書を受け取ったホリーは、勇者パーティと共に出発する。


「南の島かぁ。どんなところなんだろう」


ライトはわくわくしていた。


「兄上と一緒なら、どこでも天国。夢の新婚生活」


ホリーも上機嫌だった。


「シャイン島かぁ。あのイベントが起きないといいんだけど。まあ、大丈夫だよね。今の段階で手を打っていれば、復活をふせげるはず」


なぜかついてきたエレキテルが、ぶつぶつつぶやいている。


「南の無人島の大冒険。胸が躍るね」


今回初めて海に出たクーデルも、眼下に広がる大南洋を見て感動していた。

王都から出発し、南に進むにつれて暖かくなる。


「え?なんで冬なのに暖かいんだ?」


その疑問に答えのは、エレキテルだった。


「ここは北半球だからね。南に行くにしたがって赤道に近づくから、暖かくなるんだよ」


それを聞いたライトたちはポカーンとしていた。


「赤道ってなんだ?」

「えっと、丸い惑星の一番中心というか、太陽の通り道というか……とにかく、一番日照時間が長い地域」


それを聞いて、ドラッケンが感心したような目を向けた。


「勇者マサヨシ様も似たような事を仰ってましたな。この大地は丸いのだと。我々もこの飛行船で世界中を飛び回るまでそうだと信じられなかったのですが、エレキテル様は彼にも負けないほど知識が深そうだ」


「あ。あはは。これくらい元日本人なら当然だよ。まあ、とにかくこれから向かう場所は暖かいから、心配しないでいいよ」


それを聞いて、グローリー王国からの避難民は安心するのだった。


しばらく行くと、大きな島が見えてくる。中央に大きな山があり、その周囲は平原と森に囲まれていた。


「うわぁ。きれいな海。ここを開発したら一大リゾート地にできるかも」


エレキテルは眼下に広がる白浜を見て歓声をあげる。


「予想はしていたけど、やっぱり魔物の宝庫だよね」


島からの風の匂いを嗅いだクーデルがそう警告した。


さっそくシャイン島降陸作戦の会議が始まる。


「島で一番広く、水量豊かな川が流れ、しかも海に面している南の平原に町を築くのがいいと思います。しかし。あそこにはモンスターである蛇鳥(スネークバード)がいます」


イズナの透視魔法を使い、平原の様子を映し出す。鳥の身体にトカゲの頭がついたようなモンスターで、鋭い爪がついた強靭な足を持っていた。頭の高さは2メートルもある。


「あれと戦うとなると、相当被害がでるだろうな。ただでさえこっちは非戦闘員を多く抱えているし」

ライトはどう戦おうか悩む。


「上空からライト君の「光線(レーザー)」で威嚇して追い散らし、残った奴らをホリーちゃんの「落雷(ピリレイン)」で退治するのが一番安全なやり方だね」


レキテルの意見が採用され、上空からの攻撃に徹することになった。


「えいっ!『光線(レーザー)』」


ライトは蛇鳥の集団に向けてレーザーを放つ。わずかに狙いがはずれ、地面に光の線が突き刺さった。

次の瞬間、地面が大爆発を起こす。


「兄上は爆発魔法も使えるの?」


ホリーが尊敬の目を向けてくる。


「い、いや、なぜか地面が爆発したというか……」

「ああ、それはあそこが川の側で、地面が湿っているんだよ。レーザーに熱せられて地中の水分が急速に沸騰したから爆発したみたいだね。光の攻撃魔法の第三の系統スパーク系の誕生かも」


エレキテルはそう説明した。


「よくわからないけど、これで楽に追い出せそうだ。よし『光爆(スパーク)』」


わざと蛇鳥を外してレーザーを打ちまくる。爆発音と衝撃に驚いた蛇鳥たちは逃げ出し、残ったのは卵を抱えた親鳥だけになった。


「とどめ。『落雷(ピりレイン)』」


ホリーの手から放たれた稲妻が雨のように降り注ぎ、蛇鳥たちを黒焦げにしていった。


無事に平原を解放し、セイレーンは地面に降り立つ。


「ここが俺たちの新たな故郷……」

「暖かい……まるで天国みたい」


長い間、グローリー王都で雪と寒さに苦しめられた避難民たちは、涙を流して喜んだ。


「では、さっそく設営を開始する」


セバスチャンの指揮で、テントが張られ、船から物資が降ろされる。


「ライト様、食料をなるべく節約したいので、蛇鳥を調理してもよろしいでしょうか」


黒焦げになった蛇鳥をみながら、セバスチャンはそう提案してきた。


「え?いいけど、食べられるのかな」

「蛇も鳥も食べられます。ならば、蛇鳥もおそらくは」


そういいながら、優雅な手つきで肉を切り取って、口に運んだ。


「ふむ。あっさりとした味ですな。食感も申し分ないですし、塩をつければさらに味が引き締まるでしょう」


それ聞いて、あちこちで蛇鳥の調理が始まる。


「美味しい!」


たちまち上陸記念パーティが始まってしまった。


「兄上。卵がたくさん残っている。おいしそう」


平原のあちこちに巣が残され、そこには多くの卵があった。ちょうど人が抱えられるぐらいの大きさである。

ホリーが鍋にいれようとするので、ドラッケンは慌てて止めた。


「ち、ちょっと食べるのは待ってください。蛇鳥は雛から育てれば人になつきます。力が強いので馬や牛などの家畜の代わりになります。領地開発に使えるかと」


「人に懐く?かわいいのかな?」


一つのヒビが入った卵を見ていると、卵が割れて小さな頭が出てきた。


「ピ一!」


卵から蛇鳥の雛が孵ってホリーを見つめる。


「かわいい」


ホリーは思わずその頭をなでる。他の卵からも次々と生まれて、ピィピィ鳴きながらホリーに群がった。


「あはは。ちょっと待ってよ。くすぐったい」


たまらずホリーが逃げ出すと、雛はよちよちとついてくる。


「そういえば、ホリーは魔物テイマーになりたいんだよな。どうする?こいつらを飼うか?」

「うん。この子たちは私が育てる」


雛たちを抱きしめて、ホリーは宣言するのだった。



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