領地拝領
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セントバーナード城
戻ってきたセイレーン号によって、多くの美術品や宝石などの財宝が宝物庫に運び込まれている。
「よくぞ役目を果たしてくれた。ドラッケン船長よ」
セイント王は機嫌よく船長を褒める。
「して、400年ぶりの故国はどうであったかな?」
「滅亡寸前といったところですな。光のオーブの加護に胡坐をかき、それがいつまでも続くと勘違いした結果、冬の備えを怠っていたようです」
ドラッケンはグローリー王国の現状を詳しく話す。飢えと寒さ、疫病に民は悩まされて、騎士は権力をもてあそび無法状態も同然になっていたという。
「ふむ。なら内部崩壊は近いとみてよいな」
「そうなるかと。戦火に巻き込まれる前に、価値ある美術品を回収できてよかったです」
ドラッケンは既に、これからグローリー王国に起こることを予測していた。
「つきましては、陛下にお願いがあるのですが……勇者様の指示を受け、グローリー王都の善良な民たちを避難させたのですが、彼らをセントバーナード王国に受けて入れて欲しいのです」
一万人もの避難民をつれてきていると聞いて、セイント王は困ってしまった。
「困ったのう。助けてやりたいのはやまやまじゃが、いきなり連れてこられても、簡単には受け入れ先は見つからぬ」
「ご心配なく。当てはございます」
ドラッケンは400年前、勇者と共に世界中を旅した時に作成した地図を手渡し、セントバーナード王国の南に広がる大南洋の中心にある名前のない島を指さした。
「ここに、小国並みの広さを持つ無人島があります」
「だが、どうやってそこに行くのじゃ?大南洋は危険なモンスターであるリヴァイアサンの巣で、外海を航海する船は襲われるのでどこの国も進出できずにいる……いや、そうか、飛行船なら問題なく行き来できるな」
セイント王は、空を飛ぶ飛行船ならモンスターの脅威を無視できることに気付いた。
「ここを勇者様の一族の領地として、セントバーナード王国に組み込むべきでしょう。避難民たちも喜んで勇者様に忠誠を誓うと思います」
ドラッケンの言葉にセイント王は頷く。彼にしてみても、前回のナバラジャ討伐の功績として黄金と子爵位への昇爵、家臣団の下賜くらいじゃ少なすぎると思っていた。そもそも家臣団を養うためには何か収入源と根拠地を与えてやらないといけない。
どうしようかと悩んでいた時に、自分の懐が全く痛まない解決法を提示されたのである。
しかもライトに支払った黄金と今回ドラッケンが稼いだ大金を、島開発を通じて王国が回収できるとなれば、認めない理由は何もない。
「さらに、ここに有人の領地を作れば、さらに大南洋の先にある未知の大陸への探検の中継地になります」
「よかろう。ホリー・シャイン子爵令嬢にその島の領主権を認めよう」
さっそくヒラガ公爵邸に使者が使わされるのだった。
ヒラガ公爵に呼び出されたホリーは、思いがけない話を聞かされた。
「ホリー殿にシャイン家の領主として、新たな島の統治を国王から委託されるらしい」
「なんで私が領主に?兄上がなればいい」
面倒くさそうな顔をするホリーに、公爵は説明した。
「基本的にこの国の領地貴族家は当主と領主に分かれており、領主―地域の支配者は家を継ぐ女性が望ましいとされているのじゃ」
当主はその貴族家に婿入りしたもので、家の外交や商会の経営、国家の役職につく。領主はその妻で領地を守るというのがセントバーナード王国のやり方らしい。
「ワシの妻でエレキテルの母も領地にあって、立派に家を守っておる」
「興味ない」
バッサリ斬り捨てるホリーに、エレキテルが笑いながら告げた。
「まあまあ、シャイン家の当主がライト君、そして領主がホリーちゃんということは、二人の関係は?」
「……なるほど。将来の夫婦と公認されたようなもの。それなら、その話を受ける」
こうして、ライトの知らないところでシャイン家に領地が与えられることになるのだった。
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