後悔
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後宮では、国王が執事長ルパートから報告を受けていた。
「なに?我が国から逃げ出したシャイン一族が、セントバーナード王国で子爵位を得ていると?」
それを聞いた王は不快な顔になる。
「ぐぬぬぬ……たかが光のオーブの管理者風情がつけあがりおって。戦いもしない無能者が!」
「失礼ですが陛下、彼らはただの無能者だというわけでもなかったようで」
ルパートは、淡々と追放されてからのライトたちの活躍を語った。
「聞くところによればダンジョンを制覇し、光のオーブを発見したとのこと。さらに太古の昔に失われた飛行船まで復活させたのこと」
それを聞いた王は、真っ赤な顔になった。
「ぐぬぬぬ!無能面をして猫をかぶっておったのか。彼奴らを連れ戻せ!」
「お言葉ながら、それは難しいかと」
ルパートは首を振る。
「なぜじゃ!奴らに伝えよ。戻ってくれば再び伯爵位をくれてやると!」
「おそれながら、シャイン元伯爵は、セントバーナード王国のヒラガ公爵の婿となることが決まっております」
「ぐっ」
それを聞いて国王は絶句する。ライトは伯爵どころか、将来公爵にまで上り詰める可能性があるのだ。
「こうなれば、彼に王女の一人を降嫁させ、婿として王家に迎え入れるぐらいのことをしなければ、納得させられないかと」
ルパートの提案に、王は首を振る。
「いや、それはできぬ。民の不満も高まっておる。もし奴を婿にすれば、頭に乗って革命をはかり、勇者の一族に王国が乗っ取られてしまうかもしれぬ」
王はその光景を思い浮かべて震える。
「ともかく、この婚約に我が国の命運がかかっておる」
「御意。万事ぬかりなく執り行います」
ルパートは一礼して退出していった。
しばらく国王は悩んでいたが、意を決して娘を呼び出した。
「セレニティ。こうなったらそなただけが頼りじゃ。この国の未来はそなたにかかっておる」
「心得ております」
それを聞いた銀髪の美少女は、覚悟を決めて頷く。
「そなたを他国にやるのは不本意じゃ。じゃが、セントバーナード王国から援助を受けぬと、もはやこの国は立ち行かぬ」
「父上のお言葉に従い、国のためにこの身をささげる覚悟でございます。ですが、最後に一つだけお願いがあるのですが……」
セレニティは、澄んだ目を父に向けた。
「なんじゃ?」
「執事長から聞きました。ライト様を…いや、シャイン一族の追放を解いてほしいのです」
それを聞いた国王は、がっくりと肩を落とした。
「わかっておる。シャイン一族を追放したの余の誤りであったかもしれん」
「では……」
「じゃが、今となっては宰相が許すまい」
王はグローリー王国の現状を語る、王が病床についてから、宰相一派の専横は極まり、国のあらゆる部署を自分の息が掛かった人員に入れ替えてしまった。軍部も宰相の息子パーシバルに乗っ取られ、いまや王の権威は失墜したに等しかった。
「そなたをセントバーナードに送るのは、この国から逃がす意味もあるのじゃ。おそらく、再び生きては会えまい」
「父上……」
セレニティは父の胸の中で涙を流す。
「泣くでない。有能な家臣を追放し、佞臣を登用した愚かな王がその報いを受けるだけじゃ。シャイン殿に会ったら、わびて置いておいてくれ」
王の目にも後悔の涙が光った。
「では、結納品を納めさせていただきます」
大量の食糧や薪、日用品が王宮の倉庫に運び込まれていく。それと入れ替わりに、運び出されるものがあった。
「では、王子への引き出物を運び出せ。気をつけろよ。この絵画はオッペンワンダー男爵の逸品だ。丁重に運び出せ」
「はっ」
ドラッケンが率いる『光の騎士団』は、貴重な美術品や宝石をグローリー王宮から大量に持ち出していた。
「そ、そんなに持っていかれると困る」
慌てたロックウェルは必死に止めようとしたが、ドラッケンに軽くあしらわれる。
「国と国との交際には対等な付き合いが必要です。セントバーナード王国はそちらの要求を呑み、薪と食糧を大量に届けた。ならばそちらも誠意を見せていただきたいものですな」
「だ、だが、明らかにこちらが損をしておる」
渋る宰相を、ドラッケンは鼻で笑う。
「物の価値は状況によって変わるもの。今の貴国が薪や食糧より美術品が貴重というのなら、元に戻しましょう」
「ぐっ……足元を見おって」
宰相は歯噛みするが、今の状況では結納品を突っ返す事もできない。
しぶしぶ、大量の美術品の引き渡しを認める。こうして美しく飾り立てられていたグローリー王国の王宮は、みすぼらしくなってしまうのだった。
貴重な美術品や宝石を大量に確保してホクホク顔のドラッケンは、さらに宰相に要求する。
「我らが持ってきた薪や食糧は、まだ余裕があります。王都で民に向けて販売しようと思うのですが、許可いただけますかな」
「……勝手にするがいい」
プイっと顔を背けると、宰相は行ってしまった。
「よし。これで許可を取った。勇者様の立場をさらに強化するための計画を始めるか」
セイレーン号は王宮を飛び立ち、王都の中央広場に降り立った。
「空飛ぶ船が来た!」
いきなり空から降り立った船に、何事かと王都市民が集まってきた。
固唾を呑んで見守る市民たちの前に、兵士たちが降りてきて荷物を広げる。それは市民たちが心から欲している物だった。
「薪だ!」
「小麦粉だ!パンもある!」
どよめく市民たちに、兵士たちが告げる。
「我々はシャイン元伯爵家の者だ。この国を真に思うシャイン様は、困窮するそなたたちを憐れんで、物資を運んでくださった」
品物を並べながら、自分たちはシャイン元伯爵の部下であることをアピールする。
「彼に石を投げて追い出した恩知らずの王都民たちよ。寛大なシャイン元伯爵に感謝するがいい。今からバザーを開催する!」
並べられた品物に値札がつけられる。
「お、俺に売ってくれ!」
王都民たちは品不足により価値が暴落していた金貨を握りしめ、バザーに殺到するのだった。
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