セイレーン号
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ライトとホリーは、国王の応接室に招かれる。そこにはクーデル王子もいた。
「さて、卿らに聞こう。セレニティ・グローリー殿下とはどんなご婦人かな」
「美しく、賢くて、優しくて、完璧な人です。私たちにとっては、姉のような存在でした」
ライトはそう即答する。
「セレス姉が来るの?また遊んでもらえる。楽しみ」
ホリーははしゃいでいた。
「そうか。なら快く王子妃として迎えるべきだな」
「ち、ちょっと待ってください。私はババアはご遠慮したいのですが……いたっ!」
ホリーに足を踏まれて、クーデルは悲鳴を上げた。
「セレス姉をババア呼ばわりするのは許さない」
「だけど、18歳超えているんだろ?少女特有のかぐわしい匂いが失われているだろうし……いたっ」
今度はむこうずねをけられてしまった。
「こほん。息子の変態嗜好は置いておいて、この婚約は確かに両国の対立関係を解くきっかけとなるだろう。じゃが、結納の品の意味がわからぬ。食糧と薪とはなぜじゃ?」
セイント王は首をひねる。普通王族の結納品といえば、美術品や宝石である。現金ですら下品なものとして忌避されているのに、それよりもっと即物的な食糧や薪を要求される意味が分からなかった。
「それは、おそらく『光のオーブ』が弱まっているからでしょう」
ライトは痛ましそうに言う。自分たちの管理から離れたオーブが、その機能を充分に生かせているとは思えなった。
「なるほど。ありえることだな」
納得した王は、人の悪そうな笑みを浮かべる。
「くく。『電球』の設置がすすみ、国内ではたいまつの需要がへって在庫があまっておる。薪などでよければ、いくらでも送ってやろう」
こうして婚約受諾と共に、大量の薪と食糧が送られることになった。
飛行船船体ドッグ
国内から大量に薪や食料、服や日用品などが集められてセイレーン号に積まれている。
「この船のペイロードには『勇者の袋』と同じ空間拡張魔法が使われているので、馬車一万台分の荷物と人員を運べますぞ。お任せください」
ドラッケン船長は、そういって胸を叩いた。
「お願いします。王都の貧しい人たちを助けて下さい。光のオーブが機能を発揮できないでいるので、多くの人が寒さに震えていると思います」
ライトはドラッケンにそう頼み込んだ。彼はかなりの私費を投じて、国中から薪と食料を買い集めてドラッケンに託している。
「二代目勇者様のご命令とあれば従いますが、やつらは勇者様を追放した報いを受けているのでは?」
その言葉に、ライトは柔らかく微笑んだ。
「せいぜい石を投げられた程度で、私たちは大して不幸になっていません。その程度のことで、罪もない多くの市民が苦しむ必要はないでしょう」
それを聞いて、ドラッケンは感激する。
「なるほど……あなたは確かに勇者のお心を持たれているようだ。グローリー王国は、あなたのような方を王として推戴すべきだったのだ」
ドラッケンは見事な敬礼を返し、飛行船に乗り込む
セイレーン号はグローリー王国にむけて出発していった。
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