飛行船
元に戻ったのは騎士たちだけではなく、最初から黄金像として船の周りにいた兵士たちも同様である。
「あれ……俺たちはどうなったんだ?」
「たしかマバラジャの封印に来て、土の精霊ヴィィに襲われて……あっ!」
兵士たちはライトたちをみるなり、その場に跪いた。
「勇者マサヨシ様!聖女ヒミコ様!俺たちを助けにきてくださったのですか?」
「ありがとうございます!」
一斉に感謝され、ライトは困惑してしまった。
「あ、あの、えっと……」
「違うぞ兵士たちよ。この者はマサヨシ様ではない」
船から兵士たちのリーダーが降りてきて、ライトたちに詰め寄った。
「貴様は何者だ!なぜ勇者様と同じ高純度の光の魔力を持つ?この偽物め!」
胸倉をつかんで責め立ててくる。見かねたクーデルが割って入った。
「落ち着きたまえ」
「貴様もセイント様の偽物か!なんのつもりだ!」
わめき散らす男の前に、クーデルはセントバーナード王国の紋章が入った短剣を見せる。
「この紋章は……?」
「私はセイントの息子クーデル王子。そしてそこにいるのは、二代目勇者ライト殿だ」
それを聞いて、男は信じられないという顔になった。
「馬鹿な。セイント様はまだ少年のエルフ。子供を持つなどありえぬ」
「当然だ。今は当時から400年もたっているんだぞ」
それを聞いても、男は疑わしそうな顔になる。
「疑うなら父上に話を聞くがいい」
「……わかりました」
しぶしぶ男は船にライトたちを招きいれるのだった。
「この船は勇者様が使った聖なる船『セイレーン』号。乗れることを感謝するがいい。偽勇者の一行よ」
船長を名乗る兵士たちの代表者は、そういって威張った。
「へえ……風のオーブで船を浮かせているんだ。面白いね」
エレキテルが船の中央に設置されているオーブを興味深そうに見ている。
「ふん。エレガント様の偽物までいるのか。しかし残念だな。上品さが足りんぞ」
「君ってほんと失礼だね」
偽物扱いされたエレキテルはプンスカと怒っている。
「ということは、私も偽物?」
「当然だ。ヒミコ様の美しさには及びも……」
ホリーを見た船長の声が尻つぼみになる。
「どうかした?」
「ありえない。ヒミコ様より美しい偽物なんて」
船長は頭を抱えた。
「兄上、聞いた?ご先祖様より美しいって」
「ああ、お前は美人だぞ」
ライトになでられて、上機嫌になるホリーだった。
セイレーン号が空に浮き上がると、ダンジョンの壁の一部が壊れて太陽の光が差し込んでくる。
「さあ、出航だ。目指すはセントバーナード城」
飛行船セイレーンは、400年ぶりに空に飛び立つのだった。




