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勇者参戦

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ライトたちは、地道に電球を組み立てていた。  

 

「『光明(ライト)』」


ガラス球に光魔法を組み込んで、光属性を持たせる。


「いやー。まさか光魔法が役に立つ日が来るなんて」

「これで俺たちも食べていけそうです。勇者様、ありがとうございます」


作業所にいた他の光魔法の魔術師からは、そんな風に感謝される。彼らは魔法が使える貴族の子弟だったが、今まで役立たずとして冒険者としてもやっていけず、農業や実家の雑用をしていた者たちである。やっと自分の魔力を役立たせることができて、張り切って電球を作っていた。


「ふふ、そのうち電球は国中に広がるかもね。ボクのヒラガ家もこれでますます発展させることができるよ」


エレキテルはそんな彼らを見てご満悦である。『電気』という新しい産業を創り出し、他の貴族家の子弟も多数雇った彼らはますます国内で影響力を深めていった。

その時、慌てた兵士が作業所に来る。


「た、大変です。王子がお戻りになられません」

「どういうことだ?」


ドレレンツの問いかけに、兵士はどもりながら答えた。


「それが、電球の設営中に新しいダンジョンを発見してしまったようです。そこに奴隷たちが逃げ込み、王子はそのあとを追って入ってしまいました」


それを聞いたエレキテルが真っ青になる。


「うそ。どういうこと?早すぎるよぅ。まさかナバラジャの復活イベント?あれって学園二年生の時におこるはずじゃ?鉱山内を電球の光で満たして、永遠に復活できないように封じ込めるつもりだったのに」


何かぶつぶつ言っている彼女を置いて、ホリーが立ち上がる。


「飽きていた所。ちょうどいい。兄上、行こう」


ホリーはライトをひっぱり、兵士についていった。


「ま、待ってよう」


慌ててエレキテルもついていくのだった。






新たに見つかったダンジョンを、勇者一行は降りていく。ライトは「光化の指輪」と『鏡の盾」を、ホリーは『雷神のナイフ』を身に着けて準備は万全だった。



「いい?ボクが先頭を務めるからね。君の強みは遠距離からの一撃必殺射撃。絶対に前に出ないようにしてよ」


怖い顔でいうエレキテルの迫力におされ、ライトは思わず頷く。


こうして、エレキテルを先頭にして慎重に進んでいく。最深部の神殿に到着すると、ドッグへと続く扉の前で足を止めた。


「この先に飛行船のドッグがあるから、多分王子はそこにいるよ」

「なんでそんな事知ってるんだ?」

「いいから!気を付けてよ。絶対に扉を開けちゃだめだからね」


エレキテルが強い口調で警告するので、ライトたちは大人しく従った。


「さて……ここからどうしょう。強いのはナバラジャじゃなくて、召喚された大地の精霊ヴィィなんだよね。目を合わせるだけで黄金にされるのって、反則だよぅ。どうやったらあいつら倒せるんだろう」


悩んでいると、ホリーの肩の上にいたイズナがきゅいきゅいと鳴いた。


「そうか。君がいたね。ここは任せよう」


「きゅい」


イズナは床に降りると、バンザイのポーズをとる。黄金の壁が透過されて、ドッグの様子が映し出された。



ドッグの中では、必死に風で自分を包んでいる王子と、余裕たっぷりに眺めている美少女がいる。他の騎士たちはすでに黄金像にされていた。


「ほう。そなた目が見えぬのか。だから黄金にならなかったのじゃな。運のいい奴じゃ」

「ああ。初めて自分の盲目に感謝したよ」


冷たい汗を拭きながら、クーデルはそう返す。しかしナバラジャはそんな彼を嘲笑った。


「しかし、どのみちそなたは詰んでおる。風の魔力もいつまでも続くまい。魔力が切れた瞬間、ミストレージどもの餌食になるだけじゃ」

「くっ……」


言い返せず、クーデルは悔しそうに唇をかむ。


「どうじゃ?意地をはらずワラワのものにならんか?そうしたら命だけは助けてやろう」

「お断りだよ。このクソババア」


クーデルは顔をしかめて言い放った。その一言にナバラジャは激高する。


「ババアじゃと?」

「ああ。ボクは若くて小さい子が好みなんだ。そういう子を愛でているだけで心が癒される。どんなに見た目が美少女でも、臭い匂いがするババアはお断りだよ。若作りはみっともないぜ」


酷い事をいうクーデルだった。


「貴様!よくわかった。一滴残らず精気を搾り取ってやる」般若のような顔になって、脅しつけるマハラジャだった。


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