クーデル王子
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ライトたちは、王都の東にあるオラムス金鉱に来ていた。
そのふもとには、金貨の製造所や、金細工の店などがある町が栄えている。また金山で働く労働者向けの酒場も何件も立ち並んでいた。
「活気がある町だなぁ」
あちこちで金山労働者の募集や冒険者が集まり、パーティを組んでいる。ゴールドラッシュがおきていて、一攫千金を狙う者たちが集まっていた。
「ここは今のところ王家の直営になっていて、あの王子が管理しているんだけど……さすがに現場にはいないよね」
なぜかエレキテルは警戒している。
その時、ムチで叩かれながら連行している一団が目に入った。
「彼らは?」
着ている服はボロボロで、普通の労働者には見えない。
「彼には犯罪奴隷だよ。犯した罪にふさわしい金額を稼ぐまでは、奴隷待遇なんだ」
エレキテルがそう説明したとき、奴隷の一人が大声をあげて暴れだした。
「き、貴様のせいで俺たちは!」
兵士たちを振り切り、鬼の形相でつかみかかってきたその男には見覚えがあった。元Sランク冒険者のヨシュアである。
「お前は、ホリーを襲った冒険者。なんでここにいるんだ?」
「何でじゃねえ!てめえ達のせいで全財産没収の上一億マリスを稼ぐまで奴隷身分に落とされたんだ!」
ヨシュアは涙を浮かべている。よく見ると、奴隷たちの中にエレルやマーリン、元ギルドマスターたちもいた。
「許さねえ!死ね!ファイヤボール」
ヨシュアの振り上げた手に炎がともる。そのまま振り下ろそうとしたとき、突風が吹いて炎がかき消された。
「あ、あれ?」
茫然としたヨシュアは、兵士たちに取り押さえられる。
風が吹いた方を見ると、緑色の髪をした美青年がいた。
「いけないな。大事な客人たちに迷惑をかけるのは。衛兵、早くつれていけ」
「はっ!」
兵士たちはその青年に敬礼を交わし、奴隷たちを引っ立てていく。その間、青年の青色の瞳は一点を見つめたまま、うごかなかった。
彼は鼻をくんくんと鳴らすと、エレキテルのほうに向きなおる。
「この匂いは……エレキテルか!久しぶりだ!よくきてくれた。ヒラガ公爵から聞いていて、待っていたよ!」
「げっ!王子!」
いきなりその青年は、エレキテルを抱え上げて高い高いをする。
「大きくなったなぁ。ちょっと前まではおしめしていたのに。今はお〇っこの匂いもしないよ。立派なレディになったね」
赤ちゃん扱いされて、エレキテルの顔が真っ赤になった。
「ええい。会うなりなんてこというんだよ。このエロ王子!」
「冷たいなぁ。昔は僕をお兄ちゃんと慕ってくれたのに。でもそんな所も愛しいよ」
王子はエレキテルに頬ずりをした。
「そ、それは前世記憶を思い出す前の話で……ええい!いい加減に離せ。このロリコン!」
じたばたと暴れるエレキテルを、王子はやっとおろす。
「ロリコンとはひどいなぁ、そもそも僕は100歳超えているんだから、エルフ以外の女性は全員妹や娘みたいなもんなんだよ」
エレキテルの頭をなでると、王子はライトたちに向き直る。
「はじめまして。勇者ライト殿。セントバーナード王国の第一王子、クーデルです。よろしくね」
彼の周囲にはさわやかな風が吹いている。まるで近所のお兄さんのように親しみを感じさせる笑顔で、そのエルフは挨拶してきた。
「は、はじめまして。ライト・シャインです」
「ホリー・シャイン。よろしく」
ライトとホリーは挨拶する。
「勇者君からは太陽の匂いがするね。これから長い付き合いになると思う、よろしくね」
ライトとクーデルはしっかりと握手を交わした。次にクーデルはホリーに向き直る。
「ふむ……君が聖女か。雷の刺激的な匂いだね」
「……」
ホリーは匂いをクンクンとかがれ、おもわずライトの後ろに隠れてしまった。
「あはは。聖女ちゃんはお兄さんがすきなんだね。それじゃあ僕とのロマンスは無理かぁ。二人とも、僕も春から20回目の魔法学園入学を果たすから、同級生として仲良くしてくれ」
それを聞いて、ドレレンツが苦笑を浮かべた。
「王子も懲りないですな。また再入学ですか」
「この汗くさい匂いは、ドレレンツ君か。久しぶりに会った元同級生に懲りないはないだろ。学生時代は何回味わってもやめられないんだよ。常に新しい出会いがあるからね。僕は永遠の青春を謳歌するんだ。窮屈な王宮づとめなんてやってられないよ」
クーデルは肩をすくめた。
「えっと……さっきからやたらと匂いを気にされてますが?」
「ああ、ボクは生まれつき目が見えないんだよ」
クーデルは自分の青色の瞳を指さして言った。
「そ、それは失礼しました」
「気にしなくていいよ。幸い僕には風魔法の才能があった。人を匂いで判別できるし、風を対象に当てることで物の形もわかるからね」
王子からさわやかな風が吹いて、ライトたちを優しく包んだ。
「僕は風嗅師として、ダンジョン内の換気と索敵を担当するよ。それじゃ、また後で」
そういうと、クーデルは自分のパーティの所に言ってしまった。
「なんか憎めない人だな」
風のようにとらえどころのないクーデルに、ライトはそんな感想を抱く。
「ああ見えて100歳超えの爺だからね。僕たちをあしらうなんて簡単なんだろうね。まったくもう」
クーデルにからかわれて、エレキテルはちょっと憮然としていた。
「ちょっとうざい」
ああいうチャラいタイプは嫌いなのか、ホリーは顔をしかめる。
「それは同感。若作りしているジジイっぽいんだよね。まあ、悪い人じゃないんだけど」
「はは。まあそのくらいで。打ち合わせが始まるので行きましょう」
ドレレンツに促され、冒険者同士のミーティングに参加するのだった。
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