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勇者の盾

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「よし。これにて新兵訓練は終了とする」

「ほ、本当に?つらかったぁ」


ライトはその場に崩れ落ちる。彼の面倒を見ていたドレレンツは、口調を鬼軍曹から忠実な騎士のものに戻して、彼をいたわった。


「よく頑張りましたな。これで他の貴族から舐められることはないでしょう」

「そ、そうかな?」


ライトはほめられて、ちょっと照れた。


その時、ヒラガ公爵がやってくる。


「どうだ?婿殿の仕上がりは?」

「戦士としての基礎体力はついたと思います。これなら従軍しても問題ないでしょう」

「うむ」


満足そうな顔をする公爵に、ライトは慌てて首を振った。


「ま、待ってください。私は軍隊に入る気はないのですが」

「残念ながら、この国の貴族には従軍義務が課せられておるのでな」

「そんなぁ」


がっくりと崩れ落ちるライトを。公爵は慌てて慰める。


「まあ、卿の将来は未定のままだ。冒険者になるもよし、軍人になるのもよし、あるいは商人や官僚の道もあろう。だが、いざという時にはこの国の為に働いてもらわねばならん。体力だけはつけておくのだな」


公爵はムキムキの筋肉をひけらかしながらそういった。


「では、次に実践的な戦闘訓練に移らせていただきますが、どんな武器にしますかな?」

「武器かぁ。そういえば勇者の剣と鎧は取られてしまったんだよな。何か残ってないかな」


ライトは『勇者の袋』をあさってみる。すると、キラキラと輝く盾が出てきた。表面が鏡のようになっている。


「『鏡の盾』かぁ。魔法を反射できる盾だけど、武器には使えないな」

「いや、そうとは限りませんぞ。装備してみてください」


ドレレンツに言われて、盾を装備してみる。すると、小さなバックラーから大きなラウンドシールドにまで自在に形を変えた。


「戦闘法の中には、敵を倒す術ではなく、敵から身を守る方法をメインとするものがあり、「盾闘流」という流派を確立させております。遠距離射撃ができるライト殿には剣術などの近接戦闘など無用。それを学びましょう」


そういうと、ドレレンツは赤色のトゲトゲがついている巨大な棍棒を取り出す。そしてそれをブンブンと振り回した。


「あ、あの、一体?」

「それでは、訓練を始める。盾を構えよ!」


再び鬼軍曹の口調になって命令する。


「は、はいっ!」


慌てて盾を構えるライトだった。



数日後


公爵によばれて、ライトたちは応接室に招かれた。


「ライト殿。陛下からの冒険者として依頼がある」


公爵は羊皮紙を取り出し、読み上げた。


「シャイン男爵。ホリー男爵公女、エレキテル公爵公女を伴い、オラムス金鉱に赴任すべし。そこに出没するゴーストたちを退治し、『電球』を設置して闇を払え」


国王からの命令書にはそう書かれていた。


「電球の設置?」

「うむ。あそこの鉱山の石は、ランプやたいまつなどが発するオレンジ色の光を吸収する性質があるので、あまり深くまでいけなかったのだ。だが、白い光を放つ電球を設置すれば、より広範囲で採掘できる」


公爵はそう説明する。


「ふふ。これこそメカマンの本来の仕事だよね。ボクの腕が認められたんだ」

「金山ってどんなものなんだろう。見てみたい」


エレキテルとホリーは満面の笑みを浮かべていた。


「決まりですな。あまり大人数でいっても統制がとれないので、ドワーフ騎士隊からは私が同行しましょう」


ドレレンツもそう申し出てくる。


「え?師匠って冒険者だったの?」

「うん。僕にドワーフ流撲棍術を教えてくれたのも彼。昔はすごかったんたよ。「赤髭の撲殺王」なんて二つ名もつけられていたんだってさ」

「ほっほ。懐かしいですなぁ」


ドレレンツは赤色に光る棍棒を振り回しながら笑う。


「なにその二つ名。怖い!」

「楽しみだね!久々の冒険だよ」


こうして、新たな冒険者パーティ『勇者と愉快な仲間たち」が結成されるのだった


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