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平穏な暮らし

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晴れてヒラガ家の婿になったライトだったが、その効果は絶大だった。

ライトに言い寄る令嬢たちもいなくなり、彼を英雄視する市民たちも公爵家の屋敷まで入ってはこれない。


「そのうち落ち着くであろう。魔法学園に入学するまで、当家に滞在するのがよかろう」


公爵の言葉に従って、ライトとホリーは居候を続けていた。


「やることが無くて暇だなぁ」

「そう?私は結構今の暮らしが気に入っている」


夢のニート生活を満喫する二人だったが、そこにエレキテルが乱入してくる。


「やっとあたらしい電化製品ができたよ。ホリーちゃん。協力して」

「やーん」


ホリーは無理やりエレキテルの部屋に引っ張られていった。


「あの二人、ずいぶん仲良くなったな。さて、やることないから二度寝するか」


ベッドに横になろうとした時、ムキムキのドワーフが入ってきた。


「ライト殿。暇をもてあましているご様子。我らと共に訓練されては?」

「え?別に俺は強くなろうとは思わないんだけど」


渋るライトに、入ってきたドワーフ騎士団長ドレレンツは首を振る。


「金や地位だけでは大切な人は守れませんぞ。最後にモノを言うのは体力です」


ムキムキの筋肉を見せつけながらそう諭してきた。


「た、確かに」

「不肖このドレレンツ、勇者殿の師匠となるべくお館さまから申し付かっております。では、師匠として最初の一言。さっさと着替えて練兵場にこんかぁ!この新兵がぁ!」

「は、はいっ!」


ライトはベットから飛び起きるのだった。


「なっておらん!腕立て伏せ100回!」

「ひっ!」

「それがすんたら練兵場10周!」

「ふぇっ!」


ライトは体育会系のノリでしごかれていた。


「お、俺はか弱い貴族のお坊ちゃんなんです。もう無理……」

「はぁ?ムシケラの声など聞こえんな!スクワット100回」

「……」


もはや言い返す気力もなく、従う。


「魔法学園に入っても舐められぬよう、徹底的に鍛えてやるからな。覚悟するがいい!返事!」

「は、はいっ!」


ライトの訓練は延々と続くのだった。


そのころ、エレキテルの部屋では、二人と一匹が同じ布団に入って寛いでいた。


「やっぱり、一番に完成させるべき電化製品はこれだったねぇ。冬の必需品」

「ぬくぬく」

「きゅい」


テーブルに布団をかぶせたようなものに、エレキテルとホリーは足を突っ込んでいる。その隣では、イズナが潜り込んでいて顔だけ出していた。


「これって何なの?」

「日本が生んだ偉大な発明。『コタツ』。中央に赤外線を発生させる魔石を仕込んでいるの」


エレキテルはお茶をズズーとすすりながら説明する。そしてテーブルの上にあるお菓子を差し出した。


「よかったら食べる?ボクが作った『せんべい』ってお菓子だよ」

「食べてみる」


ホリーは茶色のお菓子を受け取り、一口かじってみた。


「しょっぱくておいしい」

「そうでしょ。これは結構売れたんだよ」


エレキテルは嬉しそうに自慢するのだった。


「エレキテルはすごい。公爵家のお嬢様でSランク冒険者。そのうえ頭がいい」

「そ、そうかな」


褒められて、エレキテルは照れる。


「……やっぱり、兄上のことが好きなの?」

「ぶほっ!」


いきなり聞かれて、エレキテルは飲んでいたお茶を噴き出す。


「な、なぜ?」

「だって婚約者になれって公爵様に言われて、断らなかった」


ホリーは暗い目で、エレキテルを見つめた。


「そ、それは形だけだよ。クーデル王子と婚約するよりマシかなって思っただけで……」

「本当?」

「ホントホント、君からお兄ちゃんを取ろうなんておもってないから、安心してよ」


手をぶんぶん振り回して否定する。


「…ならいい」


ホリーはやっと信用し、矛を収めた。


「君は本当にお義兄ちゃんのことが好きなんだね」


エリキテルはホリーを生暖かい目で見つめる。


「私たちはたった二人だけ残った勇者の血族。その血を紡いでいく義務がある。なくなったお義父様の遺言」


ホリーは迷いのない口調で告げる。


「ふーん。もしもの話だけど、魔法学園で王子とか伯爵家の子息とかに迫られたらどうする?」

「興味ない。他の男なんてチ〇カス同然」


小さな口ですごいことを言うホリーだった。


そんな彼女を見て、エレキテルは安心する。


(あー、これは完全に勇者ルートに入っているね。でもよかったよ。これで穏便に婚約破棄すれば、ボクは安泰だ)


やっと安心するエレキテルだった。


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[気になる点] 下から6行目 ホリーのセリフ「他の男なんてチ〇カス同然」 〇は多分「リ」が入り「チリカス同然」なのでしょうが、下から5行目に『小さな口ですごいこと言うホリーだった』のせいで〇が「ン」の…
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