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婚約成立

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夕方、屋敷に戻ったライトたちは、ヒラガ公爵と食事を共にする。

夕食の席で、公爵は爆弾発言をした。


「ライト殿。実はお願いがあるのだが、エレキテルと婚約して欲しい」

「ふぇ?」

「ぶほっ!」

「……カチリ(ナイフを取る音)」


ライトは驚き、エレキテルは噴き出し、そしてホリーは静かにナイフを握った。


「最大の敵がこんな身近にいた」


ホリーは、危ない目をしてエレキテルを睨みつける。


「ち、ちょっと待ってホリーちゃん。目が怖いよ。お父様、いったいどうして?今まで婚約話があっても、すぐに断っていたのに」

「……いろいろ事情があるのだ」


公爵はため息をつくと、側に控えていた執事に合図する。

一度部屋を出た執事は、分厚い書類の束を抱えて持ってきた。


「これは?」

「ライト殿に結婚を申し込んできた貴族の令嬢だ」


書類の束は100枚以上あった。


「陛下も乗り気でな。できるだけ多くの貴族の娘を娶るようにおっしゃっておる。この国に勇者の一族を根付かせるためにな」


それを聞いて、ライトは恐怖した。


「兄上、すぐこの国を出よう」


ホリーが袖を引っ張ってくるので、公爵とエレキテルは慌てた。


「ま、待ちなさい。一度目の追放はグローリー王国のほうに非があったのだと思う国も多いだろう。しかし、亡命して男爵位まで与えられたのにすぐ逃げ出したとなると、君たちのほうに問題があったとみられるぞ。最悪、他国に逃げ出したところで、捕まえられてセントバーナード王国に対する交渉材料にされてしまうかもしれぬ」

「……うわぁ。面倒くさい」


そういうものの、ライトにもその理屈は分かる。所属する国をホイホイ変えるような亡命者が信用されるわけなかった。


「エレキテルにしても、二人がいなくなるのは研究が進まなくて困るだろう」

「そうだけど……」


エレキテルはホリーをちらちら見ている。


「だから、形だけ婚約者になってくれればよい。ヒラガ家の婿となると、他家も遠慮するだろう。そのうち状況が整い、その気がなければ婚約解消してもよい」

「わかりました」


しぶしぶライトは納得する。その隣で、エレキテルは頭を抱えていた。


「え?なんで勇者が私の婚約者になるの?王子とじゃなかったっけ?これからどうなるんだろう」

「……本気にならないように、監視しておかないと」


ホリーは不機嫌そうに、ワインをグビグビと飲みながらエレキテルをじっと見つめていた。





グローリー王国は薪と食糧不足により治安が悪化した上に、風邪の横行により人手不足に拍車がかかる。


治安維持に関わる騎士たちには激務が続いていた


「第七地区にて暴動発生」

「第一地区で火災!」


通報が入るたびに騎士たちが駆けつける。彼らの処置はしだいに過激になっていった。


「ええい!全員逮捕だ!」


暴動を起こした者たちを問答無用で収容するが、当然牢が足りなくなる。


「隊長!もうこれ以上暴徒どもを収容できません」


部下からそう報告を受けた警備隊長パーシバルは、癇癪を起こした。


「だからといって、どうしろというのだ!」

「その……王宮の地下牢を使うとか?」

「馬鹿か貴様は!神聖なる王城に下賎な民を入れられるか!」


荒い息をついたパーシバルは、非情な命令を下す。


「殺せ」

「え?」

「牢にいるものを皆殺しにしろ!」


こうして暴徒たちは引きだされ、王都の中央広場で虐殺されるのだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] グローリー王国の落ちぶれっぷりは当然の結果ですね。 例えるならマンションでぬくぬく生活してた奴が電気代払わなくなった上でガードマンや管理人を追い出した様なものでしょうか。 そりゃあ電気止めら…
[一言] 何かの存在有無であっさりこうなったという事は 今の状況こそがグローリー王国の真の姿なんでしょう。 しかしこれはチャンスでもあります。 むしろここから特定の誰かや下手なアイテムに縋る事なく 住…
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